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【映画】『竜とそばかすの姫』を観てきたよ【感想】

珍しい週2更新...(夏なので)

 なんだか感染者数が大変なことになってますが皆様いかがお過ごしでしょうか。夏休みに久々に都心に出たので、映画館で映画を堪能してきました。

『竜とそばかすの姫』

2021/7/16公開、メディアでも大きく取り上げられている細田守監督作品の最新作です。 ryu-to-sobakasu-no-hime.jp

感想:考えるな、感じよ!圧倒的な映像美と音楽を!

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竜とそばかすの姫

★『サマーウォーズ』のときと何が違うのと言われるとまあ大体同じなんですが(笑)、仮想空間『<U>』の中の描写がすごい。予告編でも度々出てきますが、あの中をビューンと自由に飛び回る感じがもうね...SF作品で多数語られてきたサイバースペースってやっぱりこうだよね...と感動します。


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★『<U>』のアプリアイコンのデザインはシンプルに白地に黒のU。現実世界の既存のアプリと被らないようにしたのでしょうか。Udemyアプリの新しいアイコンとちょっと似てますw

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★回想シーンで周りから勧められたすずちゃんが『<U>』を始めるシーンがありますが、ITエンジニア目線から見てもこのシーケンスが面白い。最初にハンドルを入れて、写真の中の顔を自動判定して、AIがランダム演算してアバターの<As>のデザインを自動生成して...の流れがいかにもそれっぽく、あ〜もう少し技術が進んだらこういうアプリ実現できそうだな...という感覚に満ちています。
ワイヤレスイヤホン的なデバイスも耳につけるスタイルなんですね。耳から生体情報の何が得られるのってあたりは嘘テクノロジーですが、このへんもそれっぽさに満ちています。生体情報で認証するから一人複数垢は無理という理屈もそれっぽい。
ソードアート・オンラインみたいなフルダイブRPGもきっともうすぐ実現するんや...

★『<U>』の中は架空っぽさに満ちた未来のテクノロジーですが、作中の現実シーンではiPhoneが完全に複眼カメラまでそのまま出てきたり、パソコンの画面やアプリのメニュー類、即座にスマホググる動作など、『サマーウォーズ』の頃に比べてもだいぶ現実に合わせてきたなという印象。
また『<U>』の中で多数のテキストメッセージが流れるシーンがけっこうあるのですが、これが日本語以外もかなり多数描写されていてグローバルな感じがよく出ています。さすがアカウント50億突破のサービスです。
2021年の現実世界でFacebookのユーザ数が27.4億、世界人口が78億だそうなのでそう考えるとすごいですね。これは既にGAFA四騎士を超えちゃってる! (なおどこの会社がやってるかとかの話は出てきません)

★チョイ役含めアバターの<As>が多数登場して画面の端で驚いたり応援したりいろいろアクションするのですが、これもいちいちかなり作り込まれていてすごい。人型もいれば妖怪みたいのもいて様々。仮想空間内を飛んだりベルにまとわりついたり、これだけの量を動かすのかなり手間が掛かっただろうなと思います。
そして意外に主要キャラのアバターが何なのかは明確にはあまり表現されてないですね。

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ヒロちゃんPのアバター

  • すずちゃん:ベル。綴りは途中からBelle、フランス語の「美人」や「若い女」。原典の『美女と野獣』のヒロインと同名。カンヌで受けそう。
  • 眼鏡女子ハカーのヒロちゃんP:キョンシーみたいな面白マスコット的なやつ。プロデューサーとして有能。ベルのそばでいつも騒いでいるのですぐ分かる。
  • 学園アイドルのルカちゃん:アバターでもサックスを持っている。1シーンぐらい映る。
  • 合唱隊のマダム5人:アバターが常に5人並んで映るシーンが複数あるので分かる。5人とも本体と共通点がある。
  • クリオネと竜:作品の中核に関わるので(ry
  • カヌー男子のカミシン:アバターでも漕ぐときのアレを持っている(自分は見落としました...!)
  • イケメン男子のしのぶくん:実は描写なし。

実はイケメン氏は不明! 真にデキるイケメンは女子の争いを避けるためにSNSをしないのか ...?
ネットの考察を見ていたらベルのステージを盛り上げている謎の音響付きクジラがしのぶくんのアバターではという説があって、そういう解釈もあるのねと思いました。
まあ大きく出てくる『バケモノの子』『サマーウォーズ』はじめ細田作品にはクジラのモチーフが必ず出てくるので、まずはこっちでしょうね。

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謎のKUJIRA SOUND SYSTEM

またジャスティスの人のアバターの正体がムニャムニャではという説もあって、なるほどねえと。(でもこれは整合性が取れないのであくまで考察レベルかと思います)

★作中でとある動画の中の音情報と視覚情報から、作中の登場人物たちが自分たちのスキルで撮影場所の特定に成功するシーンがあります。ここも説明がつくし、如何にも今っぽい展開なあと思います。

★ていうかゴニョゴニョの遠征写真の背景なんか既視感があるなあと思ったらあれやっぱり多◯川だったのね‥.◯杉のタワマン周辺は大人気やな...w

★虚構が入り交じるきらびやかな『<U>』に比べると意図的に地味めに現実的に描かれている現実世界サイドですが、こちらもかなり綺麗ですね。四国の自然とか学校とか細田監督おなじみの夏空とか、あーやっぱり夏の映画だよね〜となります。
 駅の構内で想いを伝えちゃうシーンとか、道路で車道を挟んで思いを伝えあっちゃうシーンとか、青春していて良きですね。もう眩しすぎて死にますw


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★インターネットを舞台に『美女と野獣』をやろうというアイデアが中心にあったのは細田監督がインタビューで仰ってますしポスター諸々からすぐ分かると思いますが、ライブシーンと並んでここも見どころです。映像の美しさはあーまさに映画だ...ってなります。ご丁寧に召使い(?)っぽい小さいアバターたちも何人かいてかなり作り込まれてますね。

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美女と野獣なシーン

★アナ雪を始めディズニー映画っぽいしベルが日本のアニメのキャラっぽくないのはそれもそのはず、ベルのデザインを手掛けたのはディズニー・スタジオでアナ雪やベイマックスラプンツェルのキャラデザを手掛けたJin Kimさんという方だそうですね。花の衣装デザインも専門の方を呼んだり、ライブシーン周りは気合が入りまくっています。このへんのディズニー作品群が好きな方にもかなりおすすめです。というか興行収入的にはそのへんの一般ピープル層がメインターゲットなのでしょうねえ。

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ベル

★新進気鋭の謎の歌姫ベル登場にポジションを奪われて嫉妬する人気YouTuberみたいな立ち位置でペギースーという歌姫が脇役で出てくるんですが、後半になるとこの人も全力でベルを応援するいい人にチェンジするのがベタだけと良い。そうや‥.こういうのはもうベタでいいんや...!

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ポジションを奪われておこな人

★歌姫ベルのフォロワー数の増え方が異常! あとヒロちゃんPのアカウント特定速度も異常!w

つい気になってしまったところ (ちょっちネタバレです)

さて一般メディアでは絶賛されて実際に大ヒットしている本作ですが、ネットで感想を探すと賛否両論いろいろ出ています。このへんもメジャーになってからの細田守監督の過去作群と同じ流れで、うーん平常運転だなあと思います。

★声に声優以外の人を当てるスタイルは、これは観る人によって感じ方が違うだろうなあと。自分はアニメーション作品をたくさん見慣れてるので、やっぱり違和感を感じました。主人公のすずは未熟な感じがキャラクターに合っていたと思いますが、脇役だとジャスティスの人なんか声の演技が上手くてアニメ側の人なのがはっきり分かるしなあ。
すずのお父さん役はキャラデザに比べてちょっと声が年取ってるなあと思ったら、役所広司さんだったんですね。『バケモノの子』の熊徹と役柄が全然違ってわからんかった...

★川で知らない子を助けるためにすずのお母さんは命を落としてしまい、この過去の出来事が主人公すずの心の大きな欠損や、作品内で描かれるインターネットの悪しき部分への批判に繋がっています。
この回想シーン、救命胴衣の他にロープを体につけて岸側で持ってもらってから川に入るとか何とかならなかったのかと思ったり。現実には川に居合わせた周りの人も、さすがに何もしないってことはないような...

★そういえば主人公のすずの主なコンプレックスは人前で歌えないことなので、「そばかす」はタイトルに入っている割にあまり気にしていなかったですね。真の力解放後のすずちゃんにはぜひ『るろ剣』の名曲「そばかす」も歌ってホシイ!(関係ナシ

★眼鏡女子スーパーハカーで何かと助けてくれるヒロちゃんはすずを思いやっている良い友達で、彼女は彼女で異性の好みがディープとかいろいろあって面白いキャラなのが途中からわかりますが、もう少し早いタイミングでどういう人か分かっても良いのかなと思いました。(初登場時の毒舌キャラの印象が強いw)

★『<U>』の中でジャスティスの人が手につけている砲を撃つとそのアバターの素顔がアンヴェイルされてしまう仕組み、映像的にも面白いです。でもこの人なんでこんな装備持ってるのかが謎でした。
『<U>』の運営サイドから正式権限を与えられているのか、それともただの自治厨なのか...作品的には自分の考えただけの正義を振りかざすことへの警鐘を表現してる役どころですから、自治厨のはずだよなあ...

★そしてネットの感想でよく見る、竜の正体が意外すぎる問題。これは自分も思いましたw
 序盤を観てたらふつう同級生のイケメン君かカヌーの人にも秘密があって実は...って思いますよねえ。(お父さんという線もありますが、『美女と野獣』がモチーフで主人公が女子高生だったら父娘の絆よりはまずはロマンス方面推しだなと)
 一応作中で伏線はあることにはあるのですが、主人公との関連度の線が薄すぎてこれは苦しい‥.w

★『美女と野獣』に無理やり持っていこうとしてる感があるためか、竜に徐々に惹かれていく過程やその正体を知ろうとする理由のあたりもちょっと苦しいなあと。
距離を縮めようとするベルに向かって竜が「お前に俺の何が分かる!」的に拒絶する約束のシーンがあるのですが、「作品全体からの情報が少なさ過ぎて観てるこっちにも全然分からんわ!」とつい思ってしまいましたw

★合唱隊のマダム5人はあまり深く掘り下げられてはいないのですが、作中の描写やすずちゃんと一緒に写っている写真から、母親の死後もなんだかんだ面倒を見てくれて、縁のあった味方サイドの人たちなんだなというのは推測できます。意外にスポットライトが当たって活躍しだすのはまあ理解できます。
 でもクライマックスへ向けていざモニョモニョへ...のシーン、バンで送ってくれるけど駅までで終わり、後は全部すずちゃん一人に任せられるアレは「そうはならんやろ」って普通ツッコミたくなるでしょうねえ。

  • ここは5人のうち誰かが「私、車も現役なのよ(ニッコリ)」→スピード出そうなけっこうイイ車が出てくる→口をあんぐりする一同を乗せて超絶ドライビングテクで関東に凸る! あたりの方が多少の整合性を無視してでも盛り上がると思います。
  • もしくはあまり出番のなかったすずちゃんのお父さんがここでいいところを見せる...という展開も。(しかしこれだとメッセージ経由でやっと父娘が分かりあえるラストの感動シーンが成立しない)
  • もしくはすずちゃんの近親者やメインキャラの兄姉あたりで運転が得意なお助けキャラを最初から用意しておくとか...

 大勢で押し掛けると多対1でボコリにいく感じが増すし、すずちゃんが一人でモニョモニョに立ち向かうシーンが成立しないのでこうならざるを得ないのでしょうか。でも暴力を振るってくる可能性のある成人男性のところに女子高生が一人で...というのは明らかに危険だしこの流れは違和感が強いなあと。作品中では感動のシーンなんですが、脳内ツッコミが激しくて感動できませんでした。
 ここで安易に暴力に暴力で対抗しちゃうと本作のメッセージ性が薄れてしまいますが、まあエンタメ作品的には同行した男性陣がパンチ一発叩き込んで黙らせるぐらいが入ったほうがスッキリ治まるでしょうねえ。

★また、終盤の『<U>』内での映像と音楽のエモい盛り上がりがあまりにパワフルで流されているのですが、このリアルのモニョモニョの件はその後うやむやになって描写がないんですよね。「良い家庭アピールが大嘘だったことが全世界に報じられて波紋を呼ぶ」「調査の手が入って某氏が警察に連行されるニュースの一場面が映る」あたりを1カットでいいから入れるべきだったのではと。

★また、勇気を出してゴニョゴニョをアンヴェイルしたすずちゃんは『<U>』では認められて大盛り上がりとなりますが、リアルでの彼女の生活や学校周りでその後どうなったかも描写がないですね。「すず!お前の歌すごいな!」とか「すずちゃんごめん!あなたのこと誤解してた...あんなこと言ってゴメン...」とか同級生が言ってくるようなシーンもベタでいいからあった方が自然かなあと思いました。
(でないと中盤、クラスのイケメン君が陰キャ女子の手を握った事案発生で女子たちがSNSで陰湿バトルを繰り広げてヒロちゃんが鎮火して回るゲームっぽいオモシロシーンの終着点がない。というかあのへん別になくてもよかったのでは...インターネットの悪しき面や人間の醜さの描写なら、『<U>』の中のあれこれだけでもう十分だった気がします。)

 という感じで、終盤の映像と音楽の力があまりに強力で感動する流れに引っ張られていつもの細田イズムな入道雲が爽やかに写ってエンドクレジットに行ってしまうので、あれ...?となんかモヤリズムが残ってしまうのでした。
う〜んこれは「考えるな、感じろ」(byブルース・リー)の精神で観たほうが楽しいのかもしれません。

 まあ自分は映像作品を数限りなく観てきたのでついつい細かいところまでチェックしながら観てしまうのですが、映画としては十分面白いし、細田監督作品の例に漏れず夏に相応しい作品です。自分はIMAXシアターの割と端っこの方の席で観たんですが、大スクリーンで観るのも迫力が素晴らしいです。

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竜そばIMAX

 同日には『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』も一緒に観たのですが、たまには映画館で映画を観ると良いなあと改めて思った夏の日でした。その後帰って動画配信で細田監督作品の過去作を再び観て回っちゃったりしました。(笑)