新海誠監督最高傑作!(キャッチコピーより)
師走の今日この頃ですが、都内に外出した機会にたまには映画をと観てきました。まだ基本オタク向けの作品を作っていた頃から新海作品はほぼ全部観ているので今回も観ねば...ということで、感想や考察を雑多に書き連ねてみます。(以下一部だけネタバレありです)
- 新海誠監督最高傑作!(キャッチコピーより)
- アニメーション作品として
- デジタルガジェット
- キャラクター雑感
- 出てくる食べ物
- 出てくる風景
- 過去作との繋がり
- 考察とか
- 本作に対する批判とか
- わからなかったところ
- まとめ:今回も新海イズム溢れる作品!
アニメーション作品として
★他の作品ではあまり見ないモノとしては、椅子が所狭しとスクリーン上を動きまくるので楽しいです。三本足で不安定だからこそ余計に動きが面白いです。新しいチャレンジだったそうですが作る方も楽しそうですね。確かに道路をいきなり椅子が走っていく非現実的な光景を見たら...写真撮ってSNSに上げたくなる人もいるでしょうねえ。
美しい風景の作画の中を走りまくったりジェットコースターを走ったり、アニメならではの非現実的な光景を全編に渡って楽しめます。
★インタビュー諸々を拝見するに、少女×イケメンはフツウ、少女×怪物もしっくりこず、意外性のある無機物の線でいろいろ考えて今の形になったそうです。
別案では牛乳パックという線もあったそうで...映画本編を観るとよくわかるのですが、牛乳パックだと強度が圧倒的に足りないんですね...弱そう...30分アニメ1話分ぐらいしか保たなさそう...(笑
★そして非現実な要素も加えた生き物としては今回は猫も大活躍します。なぜ猫のチョイスだったのかはネットでもいろいろ考察されており、監督が猫好きだからとかいろんな説があります。
まあ現実に近い世界で画面に出てきて違和感がない生き物といったら人類に親しい動物、犬や猫になるのは妥当なんじゃないでしょうか。物販用のグッズ作ったりぬいぐるみを作ったりもあるので...
デジタルガジェット
★さすがに2022年のネット時代の作品ということで、作中でもスマホはかなり活用、TwitterやLINEやInstagramは実名でふつうに出てきます。(一瞬ミクシィの画面も見えたような...) ネットでバスやフェリーの時刻表を検索したり、かなり活用していますね。
★協賛にSpotifyもあったので、ナイスなクルージングで流れる曲はSpotifyから流しているのかな?
★主人公のすずめが使っているのはカメラレンズが2つ縦並び、iPhone11か12のようです。
キャラクター雑感
★主人公の岩戸鈴芽と書いてすずめ、新学期も学校を休んでロードムービーを始めちゃう行動力のある女の子。初対面でもイケメンだと家に招いてしまう思い切りの良さと傷の手当てが得意な女子力の高さを持っています。
動きのある映画の主人公なので当然といえば当然なのですが、身体能力めちゃ高!と思いました。学校のシーンは意外と少ないので、部活など何かやってるのかはあまり言及されてないんですよね。九州人はこれぐらい余裕なのか...!?
服装は緑の夏服制服→貸してもらった動きやすい服→ラストはまた制服! と変わるのですが靴を途中でなくして借りています。男物のごついブーツで紐をきつく縛るだけで大丈夫なんでしょうか。サイズが違うと靴擦れとかしそう...と余計な心配をしてしまいました。
★対応するイケメンの宗像草太は大学生という設定。本作だと互いにずっと「さん」付けで若干距離があります。
どうせまたイケメンとJKが恋に落ちる話なんじゃろ?(適当)と思っていると途中からビジュアルの変更を余儀なくされてしまい、声だけの雰囲気イケメンと化して終盤まで頑張るしかないという苦労人です。この手の映画の中で一番苦労しているイケメンではないでしょうか。AI内蔵おもちゃ「SOTA」、どこかのベンチャー企業で製品化してホスィ...!
★すずめのお母さん役の声が何気にはなざーこと花澤香菜さんなんですね。ほかは声優でなく実写の俳優さんが多いですが、映画全体のトーンと相まって違和感はない感じです。
★すずめを育ててくれた叔母の環さんはバリバリのキャリアウーマンという感じで年の割に若々しいですね。そしてLINEが長い(笑) 思春期の子には重そうです。でもキャラ弁作って高校生までしっかり育ててきてくれた所に愛を感じる...
そんな叔母さんを救うのは職場でチラ見して車を回して手を貸してくれるあの人しかない! ぜひ映画の物語が片付いた後に頑張ってホスィ!
★四国で友達になる同い年の子(千果)がショートボブにつやつやの唇でめっさオシャレしてそうで女子力高そう!と思ったらそういう設定でした。でもジャージ姿でカブを流す、それが四国女子スタイル...!w
★神戸で知り合うママさんが仕事オン/オフのイメージ切り替えがすごい。そしてパワフルです。あと元気な双子キッズがフィクション特有の大人しい良い子になってなくてリアルで良い。w
★そして脇役でひときわ存在感を放つのは、ソータさんの悪友ポジションで金を貸したままだからと理由をつけてなんだかんだ手助けをしてくれる男ツンデレ、芹澤でしょう。めっさチャラそうな外見、真っ赤なスポーツカー、さすがオサレな東京民だぜ!
学生なのにえらくゴキゲンな車乗ってんな~と思ったらサンルーフが独特な動作をするスペシャルなオープンカーでした。うむ。
そして彼は運転席にフィックスしたスマホを華麗に操作、同乗者に合わせたセレクションをして懐メロを流してくれる、おもてなしの精神にあふれたナイスガイでもあります。冊子によるとこのセレクションが同乗者と年代が微妙に合ってない設定で、同乗者には受けが悪く、イイ車に乗ってるのに選曲がダサいお兄さんという印象を与えつつ、かつ『魔女の宅急便』オマージュシーンを実現するという高度なテクを成し遂げています。
「ルージュの伝言」だけでなく井上陽水の曲とかおニャン子クラブの曲まで流れておじさん/おばさんホイホイ必死、おじいさん/おばあさんホイホイも必死です。後半のゴキゲンなクルージングの影の立役者は彼、さすがだぜ芹澤さん!
出てくる食べ物
他の作品群でもおいしいご飯が結構出てきますが、今回も映画館で高度な飯テロ攻撃を受けることができます。
★四国でおない年の子(千果)に世話になって民宿に泊めてもらう時に出てきた夕食がお膳つきの御馳走! とてもおいしそうに食べています。海の幸も満載できっとこれでも東京で食べるよりリーズナブルなのでしょうねえ。冊子を読むとちゃんとデザートにみかんゼリーがついているそうで、確かにお膳の端になんかすごいのがついてました。
★神戸でスナックのママ(ルミ)に世話になって営業終了後の店で作る深夜の焼うどんがこれまた美味そう! 一日の仕事が終わって炭水化物をガッツリ...という感じです。(時間的に太りそうですが笑) ここでなぜポテトサラダなのか、特典の冊子にネタが書いてあります。
★ゴキゲンなスポーツカーで北へのツーリングでドライブスルー?的な場所で運転の人(芹澤)だけご飯を食べていますが、ここで1カットしか出てきませんがラーメンをがっつり食べてて美味そう! 若者らしくライスもつけて炭水化物祭りになっています。
ちなみにこの人は食後にソフトクリームも食べようしていて、なんだかんだで旅を満喫しています。
★神戸でルミさんファミリーの子供たちがままごとでカレーを作る設定で野菜のおもちゃを包丁のおもちゃで切っているのですが、まったく同じと思われるおもちゃが我が家にもあってシンクロニシティを感じました。w
★協賛にマクドナルドも出てくるので、この双子キッズは車中でちょうどよい椅子を台にしてマックのハッピーセットも食べていますね。ちゃんとお豆とコーンも注文されています。
マクドナルドのハッピーセットといえば、おまけでもらえるおもちゃで本作とのコラボのミニ絵本「すずめといす」とシールが選べます。TVCMもやってました。これでキッズたちに関心を向けさせ、一緒に食べる保護者にも認知させて映画館に向かわせる。う~ん商売がうまいです。
実物を買ったのですが、主人公のすずめが小すずめでお母さんがまだ生きている頃、在宅ワークで病院とのビデオ会議などに疲れて居眠りしてしまったお母さんを元気にしようと、小すずめ+まだ脚が4本ある椅子がいろんなごちそうを作ろうと(夢の中で)奮闘するというほっこりストーリー。映画の中の回想シーンと同じ服をちゃんと着ていて、当たり前なんですが映画の後で見ると感動します。この本でもすずめは小鳥のように元気な女の子と描写されています。
ちなみにこのハッピーセットを食べた子供が本作を観たいと言い出したら...うーんどうでしょうね。「さみしくて悪い子になっちゃった猫さんを追いかけて、お姉さんと動くいすが追いかけっこするおはなしだよ~」とでも説明すれば、未就学児でも途中までは楽しめる...かな?
でもミミズが暴れたりする災害のシーンは迫力あるし、暗闇でダイジンの目がピカーンと光ったりするくだりも子供は怖がるような気がします。
出てくる風景
今回も相変わらず作画はとても綺麗です。
★夜空のような不思議な空に紫がかったあの風景、新海イズムを感じるあの色遣いはコンセプトアート的によく使われていますが、作中で数回出てくるあの場所は「常世」で統一されています。日本神話での永久に変わらない神の領域だったり黄泉の国や死後の世界とも通じますが、本作の世界観では時間が一緒になる不思議な場所だと作中でも登場人物の口から説明されています。この常世で起こる出来事は辻褄があっていますね。
★九州、四国、神戸、新幹線で一瞬フジヤーマと北の方と日本各地が出てきますが、各所の町並みや自然の風景も美しい。実際の場所を元にした架空の場所にしているところもあるそうですが、人物たちもちゃんと方言を喋っていて旅の世界にトリップできます。聖地巡礼が捗りそうですね。
★東京民としては、途中から一気に東京が出てきて御茶ノ水とか見慣れた都内が出てくるので、ここでトリップから一気に現実に戻された感がありました。このへんはどこにお住まいかによって感想が変わるのではないでしょうか。
★制作話によると作中の舞台は9月ですずめたちも半袖で動きやすい季節。そして舞台が北の方に移っていくにつれて、秋が近づいてくるので画面に秋の色の割合を少しづつ増やしたりもしているそうです。これは微細すぎて分かりませんでした...そこまで凝ってるのか...
過去作との繋がり
★今回は特にはないそうですね。まあ映画作品ではこういうのは無理に繋げなくてもいいのではと思います。
ちなみに『天気の子』にはちゃんと『君の名は』の主人公たちがチラッと出てくるそうですが、自分は観た時気付けませでした(笑)
考察とか
★主人公親子の姓が「岩戸」なあたりから分かる人にはもう分かるのですが、今回は日本神話モチーフがいろいろ入っています。
★序盤ですずめが廃墟で水浸しの場所に入るとき、一瞬だけためらうシーンがあります。単に足が濡れるからじゃないかと思ったのですが、これは過去の震災経験からくるものではないか...という考察があって、こういう見方もできるのか〜と思いました。
★椅子はすずめが子供のときは脚が4本、作品の物語が始まる際は脚が1本欠けているのは主人公が失ったものを表している...というのはインタビュー等でも語られています。脚が3本で不安定なのは途中のアニメアニメして動くシーンでも余計に動きが面白くて際立っていると思います。
★序盤ですずめが不思議な夢を見るとき、部屋の中で意味ありげに何故か蝶が飛んでいます。後半の重要シーンでも同じ描写がもう一度あるのですが、これはもう非現実の世界への入り口を象徴しているのでしょう。蝶が2羽なのはいろんな解釈ができそうです。
本作に対する批判とか
有名作品の常として公開される前からネットではいろいろ言われていたようですが...
- 震災被害者への配慮ガー云々→公式サイトの一番上に但し書きされてます
- ジブリのパクリガー云々→『魔女の宅急便』始めオマージュが幾つか入っているのはパンフやインタビュー類でも明言されていますね
- 過去作のパクリガーとか焼き直しガー云々→そんなこと言ったら同一ジャンルの映画なんてみな似てるでしょ...
ということで、相変わらず底の浅いつまんないこと言ってるなぁという所感だけでした。
本作は東日本大震災を過去に起こった事件として直接扱っており、作中スマホの緊急避難速報が鳴ってスクリーン内の人々が一斉に気付くシーンが何回か、効果的に描かれています。公式サイトにも書いてありますが本物の速報と音だけ微妙に違うんですよね。まあ映画というのはすべからく架空のお話なわけですし、気になるのであれば最初から観なければという話でしょう。
ほか、作中のメンタル削られポイントというと、何回か回想シーンを挟んで表現されてくる小すずめちゃんの真っ黒に塗り潰された絵日記のページは、子育て世代の視聴者には何気にクるかもしれません。
現実に似た設定の最近の映画で批判されたものというと...2021年の『竜とそばかすの姫』、略して"竜そば!でクライマックスの盛り上がるところ、皆が力を合わせていざ乗り込もう...と見せかけて主人公の女子高生一人旅になって大人が誰も一緒に行かないという、割と物議を醸しだした展開がありました。
僕も観ていてあそこは脳内ツッコミが沸き上がってあまりノれなかったのですが(笑)、本作『すずめの戸締り』の感想を見て回ると、この竜そばとの対比でJKの家出旅同然の一人旅(1人じゃないけど)が自然に見えるようになっている、という言及を時々見かけます。
確かにそうですね。心配してLINEで長文をぶつけながら追いかけてくる叔母さんと、叔母さんへのポイントアップも兼ねて協力してくれる大人もいるし、出会う人々も親切、外見はチャラそうな独身男性とゴキゲンな車でのクルージングは保護者同伴と、全体的にあまり違和感はなく、急ぎの旅だししょうがない...と思えるものになっています。お金も現金でなく電子マネーで払っていますね。
深く観ていくとお酒を出している深夜のスナックを女子高生が手伝うのはアウトな気がしてきますが、これも旅の中の一晩だけの出来事なので...と、勢いでなんとなく流して納得できるようになっています。このへんはさすがに、架空のお話として上手い嘘のつき方をしているな〜と思いました。
わからなかったところ
★イケメン氏の宗像草太の一族の仕事である「閉じ師」ですが、入院中のおじいさんもあまり登場シーン多くないし、あまり深くは言及されておらず謎でしたね。たぶん一族代々伝わってきた仕事で特に報酬はなく、国家に認められた組織集団というわけでもないのかなあと勝手に思っています。あの鍵も一族に伝わる世界にひとつしかないアイテムなのかそれとも複数あるのか、どうやって作るのかなども謎です。
まあこの「閉じ師」関連の事柄は本作で特にファンタジーな部分なので、気にしないのがいいのかなと思います。
★キャラクターではでっかい黒にゃんこのサダイジンが、とある人物の心情を吐き出させる重要な役目を果たすもののぽっと出でで、あまり説明もなくいまいち存在感がなかったかなと。まあ黒猫なので『魔女の宅急便』オマージュを実現できるという重要な仕事もあるのですが...!
そして黒いのですが変身すると白ベースになっちゃうんですね。これは『もののけ姫』の山犬モロに対抗して大スクリーンの中で活躍しようとした...わけじゃなくてミミズ周りは配色も黒っぽいし画面が暗いのでその辺の事情もあるのかと思います。
★そしてどうでもいいのですが「ダイジン」「サダイジン」は出てくるけど「ウダイジン」は出てこないですよね。こういう対称性の欠如が...ITエンジニアは微妙に気になっちゃうイキモノなんだYO!
まあツイッターやインスタ女子の間で話題沸騰の正体不明のkawaii☆ぬこがいつしか「ダイジン」と呼ばれるようになるのはなんとなくありそうなのですが、ここであだ名が「ウダイジン」にfixするのはかなり無理があると思うので「ダイジン」止まりで自然かと思いますニャー。
★そしてよくよく思い返すとお年頃のすずめちゃんは出会ったばかりの男性に惹かれて協力してここまで冒険の旅をしてしまうわけですが、結局これって...イケメンは正義ってことやないか....
廃墟巡りが好き系女子が全国に増えそうな予感...そしてそんな女子たちに現地で「このへんに廃墟ある?」とか声を掛けちゃうイケメンが増えそうな予感...
ちなみに最近のフィクション作品の廃墟好き系女子と言うと、この人が思い浮かびますw
まとめ:今回も新海イズム溢れる作品!
というわけで今回は恋愛色は少なめ、人が自分で自分を救おうというお話でした。舞台も一箇所に限定せずあちこちを巡るロードムービーで聖地巡礼旅行も捗りそうですね。
ちなみにノンストップ大忙しの旅の中ですずめが出会ってきた(現実的にはかなり世話になってきた) 善き人々とは、エンドロール中にそれぞれ1枚絵の中で再会の様子が描かれていて、ほっと安心で後日譚もいろいろ想像できそうなナイスな終わり方になっています。
過去を否定したり忘れたり決別するのではなく受け入れながら。人だけでなく場所についてもその出来事を受け入れ、悼みながら。そして自分の足で前に進んでいこう...というのが大きな主題でもあるのでしょう。作中でも宣伝でも何回も出てくる「行ってきます」「おかえりなさい」という基本的な日本語が本作では大きな意味を持っています。
観た後に爽やかな気分になれる、そしてとりあえず鍵を閉める時は「お頼み申す!」とか脳内で言っちゃいたくなる映画でした。
スケジュールの都合上自分は普通のスクリーンで見たのですが、IMAXシアターだともっと楽しめると思います。たまには都内に出て映画館で映画を観ると良い気分転換になりますね~。
おまけ
なお映画館で見たので他の映画の宣伝もいろいろやっていました。
映像の凄さ的にはやっぱり『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のインパクトが強い。ジェームズ・キャメロン監督によるとパート5ぐらいまで続編構想があるらしいですねえ。
そして元テーブルトークRPGゲーマーとしては、『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』というタイトルでD&Dがまた映画化されると聞いて! ギュピーンとなってしまいました。ずっと前に映画化された時もダメ映画と分かっているのにわざわざ映画館に観に行ったんですよね...今回はタイトルにちゃんと複数形の「ズ」が入っているのでこれは期待...かも?