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『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を観たよ

 劇場用完全新作のSFアニメでしかもオール3DCGで制作陣も近年話題の虚渕氏始め豪華。前からひそかに注目していたこの作品、上映館が少ないですが11/13の公開後ネットの評判もかなり良いのでiTunesでレンタルしてみました。

★ティーザー映像や公式サイトの限られた情報から見ると、近未来でSFでメカもかっこよさげ。しかし主人公キャラはアニメのお約束、金髪ツインテロリ巨乳になんか露出度高杉のえっちなスーツの美少女でしかも勝利の釘宮ボイス、脚本は流行りのうろぶっちー。監督は『ガンダム00』シリーズの水島清二氏。
 あ〜なんかまたえらく直球オタ狙いの臭そうなの作っとんな〜どうせまた暗い話で途中で人がたくさんマミられて死ぬんじゃないの?と僕なんかも最初は適当に思ってました。(そう思ってた人は多いようですw)
 しかししかし意外や意外。美少女成分で釣っているのはその通りですが、話自体はもう古典からサイバーパンク、ポストヒューマンまでSF諸作品の流れを受け継いだ懐かしくも新しい正当王道の真面目に熱いSFで面白かったです。あまり知名度がなくて上映館も少なかったのもまたおトク感満載。


★舞台は近未来の地球。ナノハザードという災害が起こって地上は荒廃し、荒野と砂嵐とサンドウォームが跋扈して地上に残った人類は細々と暮らす。
 一方テクノロジーは遂に人体の完全な電脳化、ソフトウェア化に成功。人類の98%は肉体を捨て、衛星軌道のラグランジュポイントにある宇宙ステーション、楽園スディーヴァで暮らしている……というもうSF王道ド直球の世界設定です。
 映画内では明確な言及はありませんが人類の完全な不老不死、人間の意識のコピーやバックアップ、肉体のクローンが実現された世界。ハードSFのグレッグ・イーガン御大の諸作品みたいですね。
 この設定を活かしたシーン作りは冒頭から始まり、主人公アンジェラは最初の電脳上のビーチでは20代の大人の女性の姿を取っていますがその後16才の姿で地上降下が決まった後に、体の動きを確かめるため電脳上のイメージの姿でもう一人の自分自身と格闘したり、自分のクローンの肉体(マテリアルボディと作中では呼称)の急速生成を自分で命令したりするシーンがタイトルバックの背景で流れます。肉体がなくロボットに意識が宿った状態で操縦するときはキャラクターは会話していてもメカの操縦席に誰もいないようなシーンも描写されます。このへん、まさに3DCG向けのバックグラウンドですね。


★そんな人類の完全な自由を約束した理想社会の(はずの)ディ―ヴァの厳重な(はずの)セキュリティをたびたび突破してのハッキング。それは地上からのアクセス、フロンティアセッターという正体不明のハッカーからの社会擾乱のメッセージだった。
 神々の姿をしたディーヴァの3バカ……もといエライ人の指示で電脳捜査官アンジェラは自分の手柄のためにも捜査続行を決意。自分の誕生時の遺伝子情報から作った肉体に精神を移すと軌道から降下して汚れた地上に。重くて脆弱な肉体と埃っぽい空気。
そんな慣れない地上での活動をサポートするのは優秀だが扱いづらいと評判のS級現地エージェントのディンゴ、常時オンラインのディーヴァから衛星回線のバックアップ、そして真ん丸から人型に変形してぐりぐり動く強化外骨格アーハン。この超高性能メカもディーヴァと常時オンラインで繋がっていて完璧なサポートが。
 だがしかぁし。超優秀なスーパーハカーが相手なのを警戒したディンゴ兄貴が背部のアンテナ装置をあっさり撃ち抜いてアーハンはいきなりオフライン状態になって哀れ鉄くずに。(このくだりがかなり笑えます。ほとんどスマホ依存症の人が海外に行ってアンテナが立たずに途方に暮れる状態ですw)
 生身での食事や睡眠、病気すらもほとんど知らないアンジェラは地上でやっていけるのか。そんな凹凸コンビのロードムービー調の旅が続いた後、二人が突き止めた、謎の地上ハッカー、フロンティアセッターの意外な正体とその目的とは……というお話。


★天上世界から女の子が下りてくるというのもSFのお約束ですが、地上が荒廃していて文明は退行しつつ人々は小さな町に集まって暮らし、車や火薬式の銃はあり、ロストテクノロジーが時々見つかる……という背景も様々な作品で見た約束の設定ですね。
 SF系のTRPGの世界で言うと『シャドウラン』や『トーキョーN◎VA』の大都会ではなく、懐かしの『メタルヘッド』シリーズの北米の荒野が連想されます。(最近だと『トワイライト・ガンスモーク』が受け継いでるのかな)
荒くれ者や力のない普通の人々がいる中にどーんと美少女が中央に配置された情景もなんとなくTRPGのビジュアルを連想させます。

楽園追放 -Expelled from Paradise-

★公式サイトの1枚絵のイメージ絵に何人も人が描かれていて登場人物が多い群像劇に見えますが(これを視聴後にまた見返すとほとんど詐欺っぽくて笑うw)、ぶっちゃけ重要人物は地上に降りた電脳捜査官のアンジェラと格好は西部劇調のディンゴ、モニョモニョのフロンティアセッターだけ。この3人に焦点を当てた物語です。
 CGに手間が掛かるので人物数を抑えているからというのもありますが、これは逆に物語のフォーカスがしっかりしてコンパクトにまとまっていて理解しやすくてよかったですね。電脳空間のシーンもいくらかありますがほとんどは実際の地上、ストーリーも変にこじれたところはなく王道を進んでいて好感を持てました。
 風呂敷を広げ過ぎて終盤大変なことになるアニメシリーズなどはよくありがちですが、最後も変に話は広がらずにシンプルに1本の映画として完結するようになっています。1作完結基本、続編もあったら作りたいぐらいのオリジナルの劇場用映画作品なら、これぐらいの方がすっきりしていい終わり方だと思います。


★作中の特に前半中盤、台詞量は多いしキャラクターも公式サイトに説明されてるような専門用語を説明なしでけっこう使います。しかし世界観の説明を兼ねた序盤のさわりから自然な流れで出てくるので、完全には分からなくても何となく理解できるようになっていますね。
僕も1回の視聴で話はほぼ完全に理解できました。ふだんからSF系の作品を嗜んでいる人やいろんなアニメを見慣れている人なら問題ないと思います。


★肉体を捨てた未来人類の楽園ディーヴァの人々の一般生活のシーンがまったくないので(これももしかしたら意図的かも)不明ですが、肉体もないし寿命もないし時間も関係ないしあらゆる快楽を体験できるディーヴァは天国なのか……というとどうもそうでもないようですね。作中でも語られていますが競争社会で優秀な人間にはより多くのメモリが与えられ、社会に不要な人間は最悪アーカイブされてしまう世界のようです。SFでよく語られるディストピア、ダメ人間は全員ZIP圧縮ですw
 パーソナルなPCでも容量はテラ単位、クラウドに幾らでもデータが置けるようになった現代よりさらに未来なのにメモリ拡張とはなんやねんという気もしますが、抑圧された管理社会を表しているのでしょう。(小説版だともう少し説明があるようです。軌道にあるディーヴァの物理施設を拡張する物資を地上から打ち上げる手段がもうないとかどうとか。)

 まあとにかくこうした「行き過ぎた社会からの解放」とか「人にとっての正義や幸福とは何か」「楽園とは本当に楽園なのか?」といったテーマもSF王道の「人類と機械との違いは何か」などのテーマと一緒に語られるのですが、脚本の虚渕氏はやっぱりこういう話が好きですね。2期で遂に後輩ちゃん大ピンチ中の『PSYCHO-PASS』シリーズのシビュラによる管理社会や、好評だった『翠星のガルガンティア』のレド少尉の故郷の人類銀河同盟の話が連想されます。
 筆者は未読なのですがハヤカワ文庫から出ている公式ノベライズ版、ラノベガガガ文庫から出ている前日譚の話によると、どうもやっぱりディーヴァ世界は実際は崩壊が近くて危うい状態にあるようですね。(このへんもガルガンティアの人類銀河同盟っぽい。)



★そんな訳で重要人物感マソマソの特別出演ドレッド兄ちゃんをあっさり追い返す序盤のおねいさんバディのアンジェラの仕事の電脳捜査官も激しい競争社会、手柄争いで必死のようです。ディーヴァの人々は新生児は人間として生まれてから1500時間は肉体ありだそうで、その後は遺伝子情報を保存して意識を電脳化。地上に行く際は肉体が必要なので、培養35時間ぐらいで新規に完成するクローンの肉体のマテリアルバディを新たに作ってそこに意識を移すという作内設定のようです。
 しかし他の捜査官を出し抜いて早く事件に着手してて手柄を独り占めしたいアンジェラ。タイトルバックをよく見ていると分かりますが19時間分ぐらいでこの培養を途中でストップ、説明セリフと一緒にまだ未完成(らしい)10代の肉体に意識を移してさっさと任務開始です。
 この流れが、作中で地上に降り立つ肉体が釘宮ボイスの16才ぼでぃの美少女である理由付けになっている、というのがもうこじつけ過ぎで笑う……w (ノ∀`)
それに背は縮まってもムネのサイズは減らないあたりにディーヴァの超技術の業の深さを感じまする。(ノ∀`)


★3DについてはCG専門誌などでも公開前から取り上げられていましたが、人物はすごく自然です。まあ人によって感じ方の違いはあると思いますが、アップでの人間らしいしぐさや動作も違和感がないし、輪郭線や主線が穏やかで背景と違和感がほとんどありません。2013年のアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』もかなりのものでしたが、方向性としてはあの作品と同じ、人物の表情等には手書きを加えてできるだけセル2Dに近づける表現ですね。そういえばアルペジオも2015年年明けに劇場版ですね。

★よく3Dで難しいのは人物だと髪の毛の表現だと言われますが(しばらく前だとディズニーの『塔の上のラプンツェル』が凄かったらしい)、本作でも主人公アンジェラが動くたびにツインテールが綺麗に揺れてかなり自然 格アーハンの中のいろんなギミックに絡まったりしないのか、観てる方が心配になりますw


★人物の表情もかなりパーツを用意したそうで、台詞や仕草に合わせてかなり自然に見えます。作中には手書きのデフォルメ顔もあって顔文字の><みたいなシーンもあります。ディンゴは最初から最後まで渋い系ニヒルで孤独なアウトローの大人男性だし、作中でフロンティアセッターきゅんと音楽の話で意気投合するくだりではかなり嬉しそうな顔をしていますね。
 アンジェラも表情豊かで、地上に降りて最初の方は任務がうまくいかずイライラして声優ファンくぎゅうファン御待望&御褒美の「あんたバカなの?」系のシーンもたっぷりありますが、作中だんだん表情が和らいでいきます。食事のシーンがめっさ美味しそうですね。やはりうどんには七味です。
 そしていろいろあって、真に晴れやかな笑顔を浮かべるのが後半からなのがよく作ってあるなあと思いました。

★主人公アンジェラの3Dモデリングは公開1年前の雑誌にMMD(MikuMikuDance)のデータが付録で配布されてニコニコ動画で動画が幾つか投稿されたり雑誌で特集されたり、映画発表でも等身大のフィギュアが用意されたり、そういうCGモデリング系の盛り上がりを経て映画に至っています。そういう意味ではあのあざとい衣装もいかにもフィギュアとかダンス動画とかPVとかコスプレ向けだし、3DCG映画ならではの造形という面もありますね。
 でも衣装はともかくキャラクターとしての作り込みも細かいですね。くぎゅうボイスあってこそというか本当に声と役が合っているというか。映画の成功を担うメインどころとして可愛く見えるように作ってあります。
 『ガンダム』シリーズや海外にも知られている『アップルシード』のようにネームバリューもない完全オリジナルの劇場新作、3Dの実験作ということで上映館も少ないし、メカ+美少女+SFものといったらメインターゲットは一般人ではなく主に首都圏のおたくな層。CGに大金を掛けて創った上でこれで主役の女の子に魅力がなかったら誰も観に来なくて爆死してしまいますからね。クリエイトした側の方々も相当造形に気を使って創ったんじゃないかなあ、と苦労がしのばれるところです。
 ディーヴァ人として生きている方の彼女の実年齢の謎についてはネットの感想でもいろいろ推理されています。まあ意識がソフトウェア化されて時間が関係なくなった人類に年も関係ないでしょうが、ディーヴァ内のシーンだと20代の前半?後半?にも見えます。作内の冒頭ではデキる女っぽい振る舞いをしてますが、地上に降りてからどんどん残念になっていきますし作中の反応を見る限り、精神年齢はけっこう幼いのでは?とも思えます。


★そして3Dの華といえばメカ。イメージイラストでも大写しになってる丸いのが強化外骨格アーハン。保存時はガンダムのボールもびっくりのダサめの完全球体ですが、そこからシャキーンと展開変形して人型ロボになるとかっこいい。3Dならではのメカ造形ですね。地上であれば自在に飛行できるし各種兵装完備、クライマックスは廃墟のビル街で超絶立体アクションがたっぷり堪能できます。
 全天周囲モニター式、操縦席はパイロットのヒップラインを写すためなのかバイクのように跨るタイプになっている辺りにもディーヴァのあざとい技術の謎が……w (ノ∀`)
 ちなみに公開前のイベントの談話によると、このアーハンの変形は体積や内部機構を厳密に考えると物理的に絶対無理だそうで、CGで騙している嘘変形らしいです。トランスフォーマーもびっくりです。だがそこがいい。 (*´∀`)
 そしてそんな超技術素敵メカなのに、アンテナをやられてオフラインになるとSIMカードを抜かれたスマホみたいにしょんぼりしてしまうのも謎仕様でたまりません。未来なのに凄いのか脆いのかどっちやねんとw
 他、最初に装備一式を内蔵して地球に落ちてくるポッド的な何かはは子宮をイメージしてるそうですし、予備の装備を内蔵してはなびらのように開く支援ポッドや宇宙シーンに出てくるミサイルなど、アーハン以外にも曲線を使ったデザインがけっこう多いんだなと思いました。



★3人目の重要人物、フロンティアセッターきゅんの秘密を巡ってここでもSFの普遍的なテーマがいい感じで語られた後、物語の後半は台詞ではなくとにかく映像で魅せる感じでぐんぐん加速していきます。アクションシーンは全編というほど多くないですが、見どころは以下。

●序盤、地上での肩慣らしにとアーハンに搭乗したアンジェラがサンドワームの群れと一機で無双するシーン。メイキング画像にも出てきますが、ここが既にもう凄くてテンションが上がる。
●電脳空間でのハッキング的なシーンが数回。光の中を人型のイメージが飛んでいくようなお馴染みの情景ですが、有名な『攻殻機動隊』シリーズなんかとの差別化か、色合いなどあちこち独自色を出していますね。
 途中、パケット(現実同様、通信データのひとかたまりの意味)を擬態するという理屈でアンジェラがローポリゴン的な姿に変わるシーンがありますが、これがペーパークラフトグラフィグみたいでかわいいw
●終盤に向けて猛加速、軌道施設をハッキングして軍事用の新型Nアーハン+バックアップ装備を奪取して大気圏降下⇒落ちながら追手と戦う⇒明言されてないけど描写が明らかにレールガンな大型兵器も登場⇒地上世界に降下。この一連の流れがかっこよすぎてヤバイ。 (*゚Д゚)
●ビル街の廃墟で新型Nアーハン1機+装備群+仕掛けておいたトラップとサポートで、追手のアーハン隊と戦う。予告編にも出てきますがここも凄い。興奮必死。

 空間の広がりを意識したカメラワークがぎゅんぎゅん動く中で3Dのメカが動きまくるアクションが堪能できます。2004年に3DCGアニメになった『APPLESEED』もメカのランドメイトによる市街戦はあったし最近だと好評完結した『機動戦士ガンダムUC』シリーズなんかもかなりのものでしたが、アニメを見慣れている人でもこれはかなりクると思います。パソコンの画面で見てても鳥肌が立ちそうなぐらいでした。劇場の大スクリーンで見るとさぞ素晴らしいと思います。
 ちなみにラストの戦闘は同形機同士の戦闘になりますが、アンジェラの乗っているNアーハンだけは新型の軍事用で性能が少し上という設定らしいです。追手のマシンは最初に出てくるのと同じ白、Nアーハンはよく見ると薄青のカラーリングで違いがあります。(けっこう分かりづらいです) あと、追手の電脳捜査官のチョイ役女性3人組が声優が無駄に豪華で笑いますw
 このへんのアクションシーンだけでも観る価値はあるので是非に。個人的にはアクションシーンの音楽がエレクトロニカ系メインだったのも合ってて非常にツボでした。 (*´ω`*)





★作中でギターも弾けて即席セッションもできて万能なディンゴはディーヴァ世界ではもう失われた昔の古いロックが好きという設定ですが、アニメ主題歌の『EONIAN -イオニアン-』も昔の「骨で聞く音楽」のヒット曲だったという設定で作中に出てきます。
 アライズというアーチストの曲だそうですが、アライズ(ALISE)って恐らく『EONIAN -イオニアン-』を歌っている歌手の ELISAアナグラムですね。こういうお遊びはとてもイイですね。作中とあるキャラクターが鼻歌で歌うシーンもあるのでこれは要チェックです。(ノ∀`)



★そんな感じで女の子があざとい以外は非常に良作のSFアクションだったのですが、うーむやっぱりアンジェラの衣装があそこまでけしからんとこう、観てる方がちょっと気恥ずかしくなってきますw
 登場人物が全員肌色美少女のおたく向け一直線のえろいアニメとかならともかく、他の部分は割と硬派なSF成分もあり普通に良い作品なので特に。
ネットの感想を漁ると「アンジェラタソに気を取られて話が頭に入らなかった」「アンジェラちゃんに地上のちゃんとした服を着せてあげたい」などがよくあって、なるほど皆同じかと思いました。w
 作中でディンゴとアンジェラが地上人たちが暮らす町を訪れるシーンがあるのですが、モブの人々はみな普通の格好をしてるのにアンジェラ一人だけが美少女フィギュアの世界から抜け出たような格好をしてるので、よく考えるとかなり違和感があるんですね。ここは服装がフリーダムなネトゲの中の街かよとw
 そしてチンピラが襲ってくる以外のモブの人々は視線は向けてくるものの、誰一人彼女の服装についてツッコまないのがまたおかしい。道ゆく人も物売りのおばあちゃんも全員完全スルーですw
 SF系のTRPGセッションの作内情景で、軌道人が地上世界に現れるシーンというのはある意味こんな感じなのかなあと思いました。トーキョーN◎VAでいうと重要ゲストがうっかりペルソナをハイランダー◎から変えるのを忘れたまま街を歩き回って、目立ってキャストや敵勢力に見つかっちゃうとか。

 ツッコまないと言えば相棒のディンゴ兄貴もまったくツッコみません。過去にディーヴァのエージェントと何度も仕事をして慣れてはいるという設定ですが、アンジェラと最初に出会った時に格好を見て「それでそんなにロリィなのか」と冗談めかしてひとこと言うだけ、あとは一切男として反応なしですからね。w
 サバイバル能力あり、狙撃も達者、世渡りも科学の知識もあって女の子への気遣いも完璧、ギターも弾けて紳士度がもはや仙人レベルです。もしかしてこの人は女に興味がないのかと疑うレベルですw そうかやはりホm……ではなくて、このへんは衣装の変更に手間が掛かるのでなるべく統一したい3Dキャラクターアニメならではのツッコミどころですね。 ( ´∀`)


★1時間40分あまりと短いですが、ストーリーはうまくまとまって終了。フロンティアセッターきゅんのジャーニーはあれからどうなるのか、ディーヴァの3バカトリオの人たちはやっぱりAIで保身やディーヴァ存続だけを考えてるのだろうか、小説版だともっと登場するらしい残りの電脳捜査官の人たちはあの後どうするのか、アンジェラはちゃんと地上で生きていけるのだろうか、ディンゴとアンジェラはあの後どうなるのだろうか、二人で地上を旅する話なんかは続編として全然ありだな……など色々妄想が膨らみます。
 余韻が残り想像の余地のある終わり方というのは良いですね。紳士度の高いディンゴも年齢はいってそうですが、二人の関係は父と娘というよりはぎりぎり男と女、恋愛一歩手前っぽいぐらいで終わるのが良いと思いました。

 公開後予想以上の売り上げ、12月にはブルーレイも出ますし北米でも上映が決定したそうです。何となく海外のアニメファンにも受けそうな気もします。
 普通のアニメファンにも、哲学的な会話を楽しみたい人にも、電脳空間&メカ&ロボットアクションを堪能したい人にも、声優ファンにも二次元美少女好きにも3Dモデリング界隈の人にも、古典サイバーパンクからポストヒューマンまで各種SFを嗜んでいる層にも、最近の虚淵脚本作品が好きなファンにもお勧めできる豪華全部乗せな作品でした。(特に、『翠星のガルガンティア』のチェインバーが好きな貴官は速やかなる視聴を推奨する!) TRPGクラスタの人にもけっこうオススメです。




     ☆     ☆     ☆

 以下TRPGクラスタ向け超☆余談。2014年の夏アニメの面白いのかいまいちなのかよく分からないままスレインきゅんご乱心で終わってしまったロボットアニメ『アルドノア・ゼロ』1期でも虚淵つながりでこの『楽園追放』の初期の宣伝が時々流れていましたね。
 あの頃から注目していたのですが、この時のアンジェラのカットを見て何か既視感というか懐かしい感じがしてうーんどこか似たような作品ででも見たのかなあとずっと思っていたのですが、思い出して合点がいきました。

 まあ商業作品と個人の創作物を比べるのもあれですが、2009年だからもう5年前か懐かしい、ひよこPプロデュース+初期イラストはこちらも懐かしの西方のほりの皇子に依頼、我がRI財団より堂々発進したトーキョーN◎VA Detonation時代のSF宇宙シナリオ『アストライアの涙』のメインひろいん(?)と思われる重要ゲスト、アストライアと造形や配色がほとんど同じでした。笑
(10代半ばの少女、金色の髪にツインテール、宇宙っぽいスーツ衣装の配色が白ベースに黒のラインと明るい緑、髪飾りが星なのまで同じだった。すごい!)

 目の色とアンジェラはえっち路線な以外(笑)だいたい同じですね。うーん偶然とはいえこういうこともあるのだなあ。あのシナリオのタイトルロゴやアストライアの配色に緑が多いのは電脳やSF感のイメージを意識してのことでしたが、やっぱりSF的なキャラクターの造形というのはどこか似てくるものなのですね。ラグランジュポイントのあたりにムニャムニャというシナリオ内のネタも楽園追放と微妙に被っていて1人で笑ってしまったw


 その後ビジュアルを3D化してpixivにいろいろ関連絵を載せたり展開したあの作品、未プレイの人からリクエストも色々頂いたのですが、計8回、参加キャスト31+1人の航海を経てDetonation時代が終わってしまいました。
うーんAxeleration版にもリメイクしたいところですが劇場版の長いシナリオなので難しいなあ。夏の突発サプリ『クローム・メモリーズ』で何故か突然復活したクルードなら……ぐぬぬ




 さらにおまけですが、アップルシードの新作3DCG映画が2015年1月に『アップルシード アルファ』として公開されます。
 こちらはアメリカ発だけあってかなり実写寄り、今回のデュナンとブリアレオスもかなりアメリカナイズされた感じのビジュアルで楽園追放とはだいぶまた感じが違いますね。風景全体がもうリアル系ミリタリー物の洋ゲーのPVのようです。

 しかも今回はテーマ曲が中田ヤスタカだ!ystkだ! capsuleサウンドだ!80KIDZRAM RIDERもいるぞ。サントラほすぃ!(*´∀`)=3
 アップルシードは2004年の『APPLESEED』、2007年の『EX MACHINA -エクスマキナ-』と過去2回劇場3DCGアニメ化されましたが、あちらもテーマ曲がブンブンサテライツYMO御大(HASYMO名義だけど)と豪華でした。同時期に大コケした『ベクシル 2077日本鎖国』という3DCG映画も音楽は海外アーチストが揃って無駄に豪華だったのを思い出しますw

 3DCG系の映画は音楽もイケてることが多くておトクですね。