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アマーリアの日記:『セレスタイトの杯』第4次星杯戦争

 この記事は、キャラクター視点の日記の形を取った、セッションのプレイ記録です。未プレイでも見て大丈夫です。



西暦2XXX年5月5日

 わたしの名はアマーリア。アマーリア・ガブリエリといいます。斑鳩にあるこの魔法のお店を、使い魔のダンテと一緒に営んでいます。
 今日はこの日記に、星の杯を巡る旅の顛末を書き記しておきましょう。

 わたしの魔術のマエストロ、お師匠様の行方を探していたわたしとダンテは、予言に記されし探索者の方々と一緒に、夜の聖杯“セレスタイトの杯”を探す旅路を共にすることになるのでした。


 聞けば、サプリさんがやってきたロケット屋さんからは、事前にどのキャストが相応しいかの熱烈な問い合わせまであったとのこと。他の方々も、非常に貴重な出会いでした。きっとあの星々が、綿密に考えてわたしたちがこの旅で出会うことを定めてくれたのでしょう。


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 バベルくんは前からわたしたちの店によく来ていた子でした。わたしもあまり背は高くないですが、バベルくんはもっと小さい、まだ14歳の男の子です。
 彼の暗い青い目は“不和なる瞳”と呼ばれ、今の世界では珍しい、強力な邪眼の力を有しています。間違えて眼を覗き込んでしまうと、ダンテでも空中から落っこちてしまったりするんです。今はあの青の魔道師さまの元で、力の制御を学んでいるということ。わたしと同じ乙女座の生まれで、生を受けた日は9/11……この日、何が起こったのかはわたしも知っています。災厄前の旧世界、今の北米連合の元になった国で、痛ましいテロ事件が起こった日ですね。バベルくんの持つ呪われた力とも、関係しているのかもしれません。
 そんな不吉な力を持っているせいか、バベルくんは人見知りしがちで、臆病な子でした。うちのダンテのような小動物系というか、なんというか‥‥ちょっと、可愛いですね。


【横から使い魔が割り込んで曰く:】
ダンテ「騙されちゃいけないでやんすよ〜! あれでフラッシュフォワード3つに御霊II搭載、新造といいつつ経験点は既に400点。読者の女性層の人気を小動物マニュゥバァで引き寄せつつその奥にはいつものようなヴォーパルバニーの如き鋭い爪! これが“はたこずむ”でやんす! 小動物系の座は渡さないでやんす!(ぐっ)」

 ……ダンテ? 何をむきになっているの?


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 フレデリカさまは、ふわふわの巻き毛に穏やかな青い目をしたお嬢様です。年はそれほどわたしと変わらないように見えますが、その称号は“断罪の咎人”。ST☆Rの魔会では、席次第二位にも認められた屍人の中の魔王に相応しき姫君です。わたしたちの旅路は争いとは無縁でしたが、聖母殿の奥底の牢に封印されていたときの甲冑姿で現れるときは、フリードリヒを名乗り、地獄の辺境から響く声を震わせて戦うともいいます。
 そう、フレデリカさまは、わたしも名も知らないような、旧世界の古い欧州の小国の姫君でした。本当に大好きだったお兄様をお慕いした挙句に大きな罪を犯してしまい、一万二千年の間仕えることで罪の贖いと転生を唯一なる神に約束され、現世に魂を留められたというのです。
 お兄様との思い出をいつまでも胸に、何百年も不死の生を過ごすというのはどんな気持ちなのでしょうか。そのお気持ちはわたしにも少しは分かります。今回の旅路では欧州にも赴き、故郷の風と土を味わったフレデリカさまも懐かしそうにしておられました。星杯探索を通して時の重みを知ったわたしたちの中では、まこと“夜の民”の座に相応しい方でしょう。
 そういえば、フレデリカさまはケーキがお好きで、カフェで美味しそうにショートケーキを食べていました。いつかまた、探索者の皆さんで全員揃って、お茶でも飲みに行きたいですね。


ダンテ「ってことは、兄君と、き、禁断の恋でやんすか!(ぶるぶるぶる)」


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 エセルバート・ダウニングさんは、訳あって聖母殿を追われた剣士です。称号の“BlakkSheep”、黒い羊は、厄介者を表すともいいます。エセルバートは男性名ですが、エセルといえば女性名。エセルさんは戦いの時は甲冑に身を包み剣を佩いて男装しますが、金髪に緑の瞳の、私と同じぐらいの年の凛とした女の子です。過去と未来の王の子孫、ブリテン連合王国の出ですね。そういえば、エセルさんもバベルくんと同じく、背が小さいですね。
 エセルさんは弟君と共に禁忌を犯してしまい、弟君はアヤカシとなったと聞きます。弟君は百人の味方を守る盾となるギアス、姉君は百人の敵を滅ぼす剣となれとのギアスを受け、聖母殿を放逐されたそうです。
 いざ戦いとなれば、エセルさんは魔術で自らを強化し、光の技で見えない刀身を持った剣を持って果敢に戦う誇り高い剣士です。それでもあの方とは、「あなたとは戦えない」と剣を抜きませんでした。今にして思えば、まことの敵を見分ける力、これも“剣の持ち手”の座に求められた資質だったのでしょう。
 わたしたちの探索には星座が大きな意味を持ちました。エセルさんは7月24日生まれ、獅子座の運命にありました。なるほど、勇ましいライオンなら、あの方に似合うでしょう。


ダンテ「アマーリア様、こんど贈り物を贈るなら、ライオンのぬいぐるみを贈ればきっとお喜びになるでやんすよ。ブラックセイバーさん的には萌えポイントなのでやんす!」


 ……そ、そうなの?


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 サプリさんは、可愛いメイド服を着た、小柄なメイドさんの……ええと、ドロイドです。正式には100式ニューロエイジ観測サプリメントという、有栖川重工製のベストセラー家庭用ドロイドですね。
 ドロイドといっても、AIのサプリさんには知性も心もあり、人間と何も変わらぬ、魂をもった存在です。ロボットや人形を軽んじる人は考えを改めた方がいいですね。あのロボット三原則にもきちんと従う設計になっていると聞きます。
 サプリさんの同形機はN◎VAのあちこちにいて、おじいさんやおばあさんの話し相手をしたり、お子様の遊び相手をしたり、料理に失敗しているそうですが、わたしたちの所に来てくれたのは古書店“泉友堂”で働いている古いサプリさんでした。本を読んだり、本を書くこともできるのだそうです。
 サプリさんがわたしの店に来た時は、身の回りのもの一式を大きな風呂敷に入れて、重い荷物を背負って来ました。荷物を降ろしてくださればよかったのに、そのまま入ろうとして立ち往生してしまった時は、ええと、リアクションに困りましたね。
 うちのダンテに聞いたら、あれも“ドジっ娘”の仕様なのだそうです。確かに、バベルくんの瞳を見るまでもなく、サプリさんはいろいろ失敗をなさっていましたね。あれも仕様なのでしょうか。でも、人が備えている真心や魂というのは、仕様とかプログラムとか性能とか、そういうものでは言い表せないような気がします。あの大きい人狼のお兄さんが、サプリさんと友達になったのも、きっと予期されていた家電性能ではなくて、星々の導きとサプリさんの心の力なのでしょう。


ダンテ「(有栖川重工の企業サイトを調べている) ををっ! この100式サプリメントってのは、モデルは災厄前の作品にまで遡るんでやんすね。いやー、サプリさんは由緒正しいメイドロボなんでやんすね〜」


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 こうして、天聖石の杯を巡るわたしたちの探索の旅は始まりました。
 霊気の乱れた夜の街で、忌まわしい“がつゴイル”が襲ってきた時は驚きました。バベルくんが塩の柱に変えてしまいましたけど。彼に「しょ、小動物系だ!(じゅるり)」と言ってきたところを見ると、ふつうのガーゴイルより知能も高いようです。わたしに向かってきたときは、おなご発見とか、ヒロインがどうのと言ってきたのですが、うーん、あれは、なんだったのでしょう。
 エセルさんは夜の教会で、弟君の無事を祈っておられた時に、あの盲目の修行僧と出会ったといいます。そして再びまみえた時、言われたそうです。自分は故あってあるマスターに仕える身、エセルバート嬢、貴公もこの秘密の聖杯戦争に身を投じられたのかと。
 夜の聖杯を求めた英雄や魔術師は災厄前から数多いといいます。みながいにしえより伝わる約定を守る一方で、杯を巡り、秘密の争いも多かったといいます。
 このお話をしていた時、エセルさんは、ぴくっとしておられました。「聖杯戦争」という言葉には、何か重大な意味があるのでしょうか。


ダンテ「にっしっしっし〜」


 さまざまな驚異も、目にしました。造りものの馬が引く馬車が月の中へゆっくりと昇っていく光景も、とても神秘的でした。そういえばこのお話をしておられた時も、エセルさんはぴくっとしておられましたね。


ダンテ「(ウェブで何か検索している) ををっ。このライダーさんてのはせくしーでやんすね〜」


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 秘密の図書館で、わたしたちはかつて星の杯を求めた先人たちの名を知ることができました。わたしのマエストロの名もあったのですが、プルートーの名が。冥王星は21世紀に惑星の座から下ろされ、西洋占星術にも微妙な変化がありました。もし星さんが姿を変え、この地球で杯を探していたとしたら、なんだか楽しいですね。
 それから、あの有名な時間管理局の名も記してありました。長い時を生きてきたアヤカシはみな、悠久の時の旅人です。同じく時の旅人であるタイムトラベラーが杯を求めるなんて、これも定めだったのでしょう。


 フレデリカさまがカフェで優雅にお茶を飲んだり、聖母領に立ち入りを禁じられた時にエセルさんがご自分の綺麗な金髪を切って覚悟を示したりしながら、旅は続きました。
 大英博物館ではサプリさんの声に応えて、展示されていた世界最初の家庭用ドロイドが手を上げ、正しき道を示してくれました。その指差す先に、ジョン・ディー博士の魔道書が見事に隠されていたのです。みながわたしたちの探索を応援してくれました。ありがとう。すべての人形に幸あらんことを。


 わたしの故郷でもある、イタリア行政圏のフィレンツェにも行くことができました。エセルさんが見上げた巨匠ミケランジェロの絵には、羊飼いが描いてあったのです。夜明け前の空の背景にいた天使さんたちが、正しき道のヒントを教えてくれました。
 フィレンツェは花の女神フローラの名を頂いており、あの百合の紋章は災厄前から続く懐かしいものです。エセルさんと中の人が驚いておりました。中の人がお好きな自転車にも、よくこの紋章が描かれているそうです。災厄前の欧州の自転車メーカーなら、考えられることですね。この探索の旅は星々が導いた運命によるものです。きっと、全ては繋がっていたのでしょう。
 そして、バベルくんがイワヤトビルの屋上で天に向かって瞳の力を解放したとき、見えない階段がわたしたちの前に現れました。こうしてわたしたちは魔法を打ち破り、真の杯の場所へと至ることになったのです。


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 あの美しい場所で、わたしたちは先人に会うことができました。エセルさんが涙していた墓に眠っていたのは、きっと本物の、ブリテンの地を守護した過去と未来の王アーサー王陛下だったのでしょう。フレデリカさまが見つけた墓はきっと、はるか昔の名も知られていない欧州の小国、生前のフレデリカさまが暮らしていた国の父君だったのでしょう。サプリさんは、魂を持った人形の墓を見つけていました。


 予言書と数々の文献に記されていたことは、ほぼ全てが現実となりました。あの門の向こうで、遂にわたしたちの探索は成就したのです。
 サプリさんの《プリーズ》からフレデリカさまの《制裁》の次シーン盗聴扱いで、大いなる力が発揮されたのは貴重な体験でした。あの部屋で、わたしたちは幻視したのです。過去に杯を求めていた英雄や魔術師の名だけでなく、探索を成就したその方たちの姿を。青の魔道師さまや湖の騎士ランスロット、大いなる魔術師“月の骨”、中世欧州の偉大な女性魔術師のその師匠……みながそれぞれの様子で、聖杯探索成就のその瞬間を迎えておられました。サプリさんは有栖川重工の衛星サポートサービスともがんばって通信していましたが、メモリがパンクしたご様子で困っておられました。


 そして、理由があって杯を追っていたあの方が気を落としたところに、フレデリカさまが優しく、声を掛けておられました。
 わたしも魔術と錬金術を学び、夜の秘密に近しいものです。あの方の気持ちは分かります。災厄が昼の世界に大きな災いだったように、夜の世界のアヤカシにも大きな苦難でした。災厄前から生きているアヤカシはみな、それぞれの事情を抱え、永遠の重みを背負い、孤独を友とし、時の超越者として、時の旅人として歴史の中を旅しているのです。
 夜の民の座を代表するフレデリカさまがあの方を励まされていたのは、この物語に相応しい結末だったのだと思います。杯を探すのだけでなく、精神の探求を含むというのは……やはり、セレスタイトの杯には、聖杯伝説と共通するものがあるような気がします。


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 最後はみな、それぞれの世界へ戻っていかれました。バベルくんは今も時々わたしたちの店に来ますし、一度車が突っ込んできそうになる事故がありましたが、瞳の力が効力を発しました。
 フレデリカさまは……聞くところによれば、またあの女大公殿下のサロンに立ちよったそうです。兄君と会えないことに嘆き、ご乱心して強いアヤカシの毒を呷って一時は危うかったと聞きますが、大丈夫でしょうか。
 エセルさんはまた、教会であの方と会ったそうです。エセルさんが持参したホーリーシンボルで、教会とはわだかまりが解けたそうです。剣の持ち手は百の敵を斬ることはありませんでしたが、一人の魂を救うことができたのでした。
 そしてサプリさんは……“泉友堂”のお店番を《チャイ》すると、次の冒険物語を書きに旅に出たそうです。その前に、今回のお話を楽しい童話にして、本にしてくださいました。旅の思い出は、永遠にこの本の文字の中に。わたしたちの店でも、今も売っているんですよ。
 重厚な表紙に、裏表紙には尻尾を噛んだウロボロスの蛇の紋章。なんだか、昔のドイツの偉大な作家が書かれたファンタージエン国の物語のようですね。表紙には階段と、それを登る少年と少女の絵。天へと向かっていくこの少年は、バベルくんのようです。そして後ろ姿だけ映っている少女の絵は……どうも、わたしらしいのですけれど。なんだかちょっと、恥ずかしいですね。


ダンテ「いい表紙じゃないでやんすか〜。考えてみれば、バベルの坊やは今までのオトコ陣の中じゃ、やっと出てきた良いPC1だったでやんす。
欲を言えば、作中のあっしの活躍をもうちょびっと増やしてほしいでやんすけど、こいつはリソースの平等な配分ってやつでやんすね。やっぱりメインのヒロインの座はアマーリア様のものでやんす!」


 ……ダンテ? おまえ、時々おかしなことを言うけど、変な本でも読んだの? まあ、宝物の金貨を出してまでお願いして童話を書いていただいたのだから、よしとしましょうか。
 そういえば、エセルさんたちが「聖杯戦争」という言葉にいつも反応していたのは、何故だったのでしょう。あら、ダンテがもう調べてくれたのね。
 ……『ふぇいと/すていないと』?……これ、前にもどこかで見たような……??


――アマーリア・ガブリエリ




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帝都星杯戦争 その3 『セレスタイトの杯』第4次星杯戦争

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