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【感想】『プロダクトマネジメントのすべて』:世界水準のPMの英知を受け取ろう【後編】

世界水準のPMの英知を...!

 同書の読書記録と感想、後半のPART IV~VIまでです。

■PART Ⅳ プロダクトの置かれた状況を理解する

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プロダクトマネジメントのすべて

Chapter 12 プロダクトステージによるふるまい方の違い

  • プロダクトのライフサイクルはY軸が売り上げ、X軸が時間のグラフで導入期-成長期-成熟期-衰退期
  • これに対応したユーザ側として「カスタマーアダプテーションカーブ」の分類がある。
    • 新しいものが出たら触らずにはいられない「イノベーター」。少数。あまり収益にはならない。コミュニティ化して新機能のテストに協力してもらったりすることも。
    • 次に面白そうだから試してみようと集まってくるアーリーアダプター。多少の使い勝手の悪さは許容して使ってくれる。収益化の基盤。価値の新しさを見ている。
    • ここの間にキャズムの谷があり、超えないとビジネスにならない。
    • 次にプロダクトの価値に興味を持ち、冷静に判断して入ってくる「アーリーマジョリティ」。価値の実益を見ている。口コミやマーケティングで増える。ここでユーザー数を確保することが重要。
    • 新しいものに懐疑的で後から入ってくる「レイトマジョリティ」。リスクや価格に敏感。通常機能だけで満足することが多い。母数が大きく、売り上げの大きい比重。
    • 最後に入ってくる「ラガード」
  • ステージごとにもPdMの役割は違っていく。
    • 0→1のイノベーター系PdM:まずプロダクトを形にしていく。PMFを達成できるか迅速に判断。
    • 1→10のグロース系PdM:育てながら将来も見ていく。ここに特化した職がスタートアップで多い。
    • 10→100のタウンビルダー系PdM:世界中で使われるように。ユーザーの生活圏の制覇を目指す。プロダクトの統合・買収・似た領域への進出など、これまでと違うアプローチをとる。
    • 終焉:どんなプロダクトも終わる。終焉の手段としては 撤退/再利用/変容(ピボット)/売却 がある。

10→100への拡大の例でAndroidOSの無償化やSalesforceの台頭。
終焉の例でGoogleGearsGoogle Shoppingがその後も形を変えて別プロダクトへ使われる話、売却の例でレノボのパソコンの話なども出てきて、純粋に読み物としても面白いです。

Chapter 13 ビジネス形態によるふるまい方の違い

  • BtoC:会社が個人に提供するビジネス形態。消費者同士の場合はCtoCで特徴は同じ。
    • モバイルの場合はアプリストアで提供なので、ユーザーはそのプロダクト以外の選択肢がある。
    • ユーザからの反応を素早く知って反応。ユーザへのアクセスもしやすい。
    • 競合に真似されることもある。
    • PdMとしてはまず機敏さが重要。次に倫理観。
  • BtoB:法人同士のビジネス形態。対象の企業が存在する業界やドメインに深く根差したプロダクトになる。
    • 企業側のビジネスプロセスやステークスホルダーへの配慮が必要。
    • 営業の言うことだけを聞いたり偉い人の鶴の一声に従うだけではよいものは作れない。
    • リリースしてからのフィードバックには時間がかかる。また競合との比較が難しい場合もある。
    • PdMとしては業界の商習慣に対する深い関心、ユーザーと周囲のステークスホルダーに対する想像力、優先度付のバランス感覚が必要。機能改善要求トップ10は営業、カスタマーサポート別々で出してもらうとよい。

Chapter 14 未知のビジネスドメインに挑む

  • その業界のビジネスドメイン知識がないと、プロダクトがユーザーの現場にそぐわなかったり、開発チーム内でも用語が混乱したり不都合がある。
  • グローバル意識が必要。
    • サプライチェーン」(ツールや基盤、開発リソース)をグローバル調達が可能になった。海外の有用ツールの活用、AWSのリージョンが北米のみだと速度が下がったり。
    • 国内だとユーザ数が頭打ちでも海外展開すると広がったりする。JIRAConfluenceが成功例。
    • 海外企業が日本進出してきて競合になることも。オンライン旅行エージェントなど。
    • 発展途上国はネットワーク通信が遅い→プロキシブラウザを利用。
      身近な人へのアプリの紹介が多い→ピアツーピア共有機能。
      中古の割れたスマホでも使われる→UIの視認性をより高く...など特有の状況あり。
    • 送金の需要や速さと信頼性のどちらが重要かなど、国によってニーズの差もある。海外展開は何度も失敗を繰り返す覚悟が必要。
  • 新しく学ぶ際のプロダクトランドスケープとして、People&Network, Technology&Trend, Activities&Touch point, Places&Organizationの4象限でとらえるとよい。
  • プロダクトを使うユーザのモチベーション分析にも手法あり。
  • プロダクトチームでドメイン知識を学んでいく方法で以下のような場がある。
    • ランチ・アンド・ラーン(Lunch and Learn):昼休みの30-45分程度の軽いカジュアルな勉強会。
    • クラッシュコース(Crash cource):特定領域の知識がない人に、基礎的な仕事ができるレベルに引き上げるための1-2時間のコース。
    • テックトーク、エキスパートトーク(Tech Talk, Expoert Talk):社内の詳しい人やその分野の詳しい人に話してもらう。30-60分。
    • ファイヤーサイドチャット(Fireside chat):特定の話題で、檀上のソファーでくつろいでカジュアルに話。暖炉のそばやキャンプファイヤーのイメージ。
    • ファイブ・イン・ファイブ(5 in 5):特定領域のハイレベル知識を5つの質問に1分づつ答えてもらうのを聞く。

そういえば「クラッシュコース」という言い方はUdemyの教育コースなどで時々見かけていました。雰囲気で理解していたのですがこういう定義だったのですね。

Chapter 15 技術要素の違いによるふるまい方の違い

  • ハードウェアでもプロダクトマネジメントは有効。変更コストがかかったり、リリースまで時間がかかる、調達に依存、中を分解されても困らないセキュリティ対策などの特質あり。
  • 今後はIoTの傾向。何もかもがインターネットにつながる:データを発信、受信、送受信の3つの意味。スマートウォッチ経由で水筒がインターネットに繋がって水分補給の時間を伝えるなど、新しい形が生まれている。
  • ソフトウェアのためのハードウェアという位置づけが主流。テスラも車はソフトウェアの実行環境として位置付けて成功している。小松製作所も建設機械を管理できるソフトを提供、山奥にある実物の点検コスト減少など。
  • AIを使う場合は、主題はユーザーの課題解決でAIは手段であることに注意。
  • AIは倫理性も注意。ロボットの不気味の谷問題など。

Software is eating the world. という言葉がありますが、テスラや小松製作所の事例も面白い。

sora.rainbowapps.com

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プロダクトマネジメントのすべて

■PART Ⅴ プロダクトマネージャーと組織の成長

Chapter 16 プロダクトマネジメントと組織

  • プロダクトの成功にコミットしている人の不在が出てきたら、それを機に組織にPdMの必要性を組織に啓蒙していくとよい。
  • プロダクト志向組織へ徐々に変えていくステップとして、「ABCDEフレームワークの5段階がある。小さなプロジェクトの単位から始めていく。
  • ジョブディスクリプション(職務経歴書)は日本では募集に使われるだけだが、欧米では職務内容と賃金に関する契約書である。ここにPdMに期待している役割も書いてあるのが正しい。
  • PdMの期待される役割も企業で違ったりする。技術的なスキルの高さを求めるFacebookや、事業責任者に近い役割のAmazonなど。

Chapter 17 プロダクトマネージャーのスキルの伸ばし方

  • テクノロジー/ビジネス/UXの3領域から、自分の自身のある領域をもとにまず立ち位置を決める。
  • 社内や業界内などを見て自分なりのPdM像を組み立てるとよい。身近に実例がいればその人のそばで働いてみる。いなければ自分でプロダクトを作ってみて、PdMの立場で考えてみるなど。
  • 興味のある分野を土俵として選ぶ。
  • スキルを伸ばしていくための好奇心の3軸:好奇心の強さ×好奇心の広さ×好奇心の深さ
  • I型、T型、π型の人材モデルが言われているが、PdMは「W型」。様々な知識やスキルを幅広く知っているのが上の横線が広がっている部分。さらに担当領域や隣接領域も下方向斜めに深堀りしていき、交点から新たな洞察を生むのがT型やπ型にないポイント。
  • PdMは特定分野の専門家ではなく、知的総合格闘家である。
  • 知識の深さをチェックするには、関係する人と話をするときに以下をチェック。
    • ①話の内容がわかる
    • ②質問ができる
    • ③コメントから視点を広げられる
  • 知識やスキルのアップデート方法としては、SNSで業界関係者をフォローしたり検索したり、業界情報を読む、他の業界も学ぶ...などがある。
  • W型人材モデルにPdMの6スキル、発想力/計画力/実行力/仮説検証力/チーム構築力/リスク管理力をあてはめ、下方向斜めに伸ばして交点を作っていけるようにする。

PdMの1日のタイムラインの例があるのですが、9~19時の10時間で中に休憩が昼1H+夕方30分で労働8.5Hか、夕食後の海外の人との1on1でさらに+30分で9Hぐらいとなってます。
そして0時~8時で睡眠を8H確保しているのがすごい。海外の一流PdMはたくさん寝るのか...?笑

この話題はPodcast「fukabori.fm」でも語られていましたが、著者陣の中の方の例が入っているようです。

47. プロダクトマネジメントのすべて w/ takoratta | fukabori.fm

Chapter 18 プロダクトマネージャーのキャリア

  • アソシエイトプロダクトマネージャー(APM):入門して指導を受けながら業務遂行。サブコンポーネントの中のさらに1機能を担当。
  • ふつうのプロダクトマネージャー:プロダクト規模が大きいとその中のサブコンポーネントを受け持ったり。
  • シニアプロダクトマネージャー、リードプロダクトマネージャー:事業戦略の立案と実施への貢献も求められたり、配下のプロダクトマネージャーに指導をしたり。
  • プロダクトマネジメントディレクター、プロダクトディレクター:プロダクトマネジメント組織を率いるピープルマネージャーとして。大きいプロダクトだと全体を担当したり。
  • プリンシパルプロダクトマネージャー:プリンシパル~の場合は人の管理面でなく卓越したPdM能力への特化など。
  • プロダクト担当VP、CPO(Chief Product Officer):経営陣へ。全社のプロダクト戦略とプロダクトマネジメント組織への責任。

務めた後のキャリアは起業してCEOや別サービス、ベンチャーキャピタル、技術部門のトップ(CTOなど)、コンサルティングへ転身、プロダクトマネジメント教育、テクノロジージャーナリストなど様々な職業が示されています。スキルの幅が広いので、その後もいろんなことができるのですね。

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プロダクトマネジメントのすべて

■PART Ⅵ プロダクトマネージャーに必要な基礎知識

Chapter 19 ビジネスの基礎知識

利益 = 収益 - コスト が基本ということで、収益モデルも一式解説されています。

  • 買い切りモデル:プロダクト利用時に買ってその後ずっと使う。
  • サブスクリプション:毎週/毎月/毎年などごとに払う。広く浸透。少額なのでユーザも払いやすい、収益の見通しがつきやすい、ユーザーが使い続けやすい、追加収益を狙いやすいという利点。
    ユーザーが長期にわたって支払う金額に対する見通し(LTV: Life Time Value)、ユーザー継続率、ユーザー獲得コストも考える必要あり。投資回収に時間が掛かる。
  • ダイナミックプライジン:飛行機のチケットがオン/オフシーズンや平日/休日、朝/夜で値段が違うように値段を変えること。オフシーズンは値段を控えて買ってもらいやすくしたり、オンシーズンは高くても買ってもらえたりするので収益性が高くなる。
  • オークションGoogleは検索市場で検索結果に広告を載せることで圧倒的な優位性を確立した。
  • 従量課金 (Pay as yo go):水道やガスのように使った分だけかかる。ゼネラル・エレクトリック社が飛行機エンジンの稼働時間や回転数で課金するモデルで成功した。
  • 段階的プライジン (Tiered Pricing):ベーシック/プロ/ビジネスのように段階的に課金。より上位のプランにしてもらう「アップセル」にうまく誘導。
  • フリーミアム (Freemium):フリー+プレミアム。基本機能を無料提供、気に入ったら有料へ。使い始める心理的障壁が低い。シリコンバレーの経験則では有料ユーザーに転換するのは10%以下とのこと。
  • ペネトレーションプライジン (Penetration Pricing):既に競合がいる状況にあえて安くして攻めこむ。2つめ無料、最初の1年は安くなども入る。
  • キャプティブプライシング (Capitive Pricing):本体を安く、周辺を高めに。プリンターは本体は安いが消耗品のインクを高くして儲けている。
  • レベニューシェア (Revenue Share)サードパーティやパートナーシップの相手と儲けを分ける。オンライン広告、音楽配信など。音楽配信はアーティストにも儲けが入る。消費動向やユーザーの動きに正確なトラッキングが必要。

  • ユーザーと収益モデルの相性や価格に影響するトレンド、プロダクトの現在のステージ、競合がどの収益モデルか、開発難易度を元に決める。Netflixレンタルビデオが日数ベースだったところに定額のサブスクリプションで圧勝した。

収益拡大の手法も各種述べられています。

  • ネットワーク効果:ユーザが増えると価値が増す。Facebookはハーバード学内で効果を出してから外へ広げた。AdobeAcrobat Readerをまず無償で出してユーザ拡大。宿泊手配のAirBnbは写真家を多く投入してより魅力的に。
  • フリーミアムとトライアルDropboxは2Gまでで機能を無償提供、ユーザーの心を捉えた。一定期間後に有料になるのがフリートライアル。
  • クロスセル:プロダクトの別の機能を有償で提供。
  • アップセル:ベーシック→プロ→ビジネスのように上位プランへ。
  • シートエクスパンション:機能はそのまま、利用する従業員の数によって課金額を変えたりするもの。

ビジネス環境の変化を知るのも大事とあります。

  • 歴史、地理、政治・法律、経済、民族・文化、哲学・思想がビジネスの大局に影響する。
  • オンライン広告の単価上昇でユーザ獲得のコストは上がっており、サブスクが台頭。AdobeCreative Cloud移行を敢行して大きく伸びた。
  • スマートデバイスが台頭して、ユーザは教えてもらわずに自分で使い方を学習して試すように。
  • プロダクトのUXが購買意思決定プロセスの本質になってきている。Zoomは徹底的に使いやすくしたことで、ブランド力に勝るビデオ会議の先行各社を大きく抜いた。

  • パートナーシップを構築して他社とやっていく際も、形がある。

    • ロックイン型:1社独占展開。AppleCisco
    • ライセンス型半導体のARMのように1社がライセンス支援→多数の企業。
    • ジョイントベンチャー:多数の企業スポンサーを受けつつ設立された企業がやっていく。HuluはアメリカのNBCテレビ傘下とディズニー一部門から生まれた。
    • オープンソースLinuxのようにスポンサー企業も多数、コントロールする先の企業も多数。
  • プロダクトの指標で使われる指標
    • 継続率。最初の日がDay0D0,D1,D2...。DAU: Daily Active UserMAU: Monthly Active User。継続率曲線
    • 離脱率も考え方がある。
    • 定量的な計測指標として作られた「ネットプロモータースコア」
    • サブスクリプション型でもいろんな略称の指標がある。
  • データ収集にも様々なベンダーあり。
  • グループの片方だけに新機能を試してもらうABテストも、統計的な知識から読み解く必要がある。平均値/中央値/最頻値/正規分布/累積確率分布/変化率。
  • 知的財産権も把握する必要がある。特許権意匠権、商標権、著作権

ふだんあまり目がいかないもので、このビジネスの章は読み物としても面白く読みました。事例も様々に紹介されています。やっぱりNetflixは革命だったんですね。
AdobeAdobe Creative Cloudに移行した話はネットでは高いと離脱する人が多い印象でしたが、収益が3倍まで伸びているとは...

Chapter 20 UXの基礎知識

  • デザインを学ぶときは、ユーザー、意図、メッセージの3つの切り口から。
  • デザインの6原則:可視性、フィードバック(行動に何らかの情報を返す)、アフォーダンス(説明がなくても使い方が分かる)、マッピング(番号と座席表など)、制約、統一感。
    • この中の統一感の4つの観点が、美的統一感、機能性、内部性、外部性。
  • ビジュアルの階層化:サイズと色、近接性、並び、繰り返し、コントラスト
  • デザイナーと話すときは想定ペルソナと自分を揃え、モノの見方を揃え、コンテキストも伝える。IA: Information Architectureなど。
  • どのようにマーケティングを打ち出すか:「マーケティング・ミックス」という。4P、4C。
  • メディアの種類も3つある。
    • アーンドメディア (Earned Media):ユーザ自身がマーケティングのチャネル。SNSや口コミの評価。
    • オウンドメディア (Owned Media):自社運用メディア。自社公式アカウントなど
    • ペイドメディア (Paid Media):金を払って買ったメディア。広告、インフルエンサー、タレントへのインタビューなど。昔はこれが主流だった。
    • またメディアなしで検索などから自然に入ってきたユーザーを「オーガニックユーザー」という。
  • プライバシーポリシーも重要。PdMでなく法務担当者などにやってもらうと良い。
  • あのZoomも、GDPR(EU一般データ保護規則)施行前の画面で失敗している。

デザインの話も実例があって面白いです。ナイキやAppleはやっぱりこういう所は強いですね。
統一感の中の「内部性」というのはそのプロダクトやサービス全体に感じることのできる視覚的メッセージや体験とのことで、例にディズニーが上げられています。確かにディズニーランド/シーの中はこの統一感が細かいところまですごく配慮されてるんですね。

Chapter 21 テクノロジーの基礎知識

  • プロダクトの品質の分類については有名な「狩野モデル」があるが、時代と共に変わる。例えば車のアンチロックブレーキシステムは昔は魅力品質だったが、今は当たり前品質に移動。ユーザに質問すると良い。
  • QA: Quality Assurance担当者にすべて任せるような形では信頼関係を損なうことになる。PdMは品質の認識を擦り合わせておく。
  • 技術的負債についても定期的に解消していく。ロードマップに含めると良い。
  • プロダクト開発はDevOPsが主流。
  • アジャイルなアプローチは必須になるが、要件に変更がなく効率よく開発する際はウォーターフォールのアプローチが求められることもある。
  • スクラムは初めてのアジャイルによいアプローチ。小さなプロダクトではプロダクトオーナーをPdMが兼任してもよい。
  • カンバン、CI/CD

  • セキュリティインシデントでは、セブン・ペイの事件が有名。正しい知識を持ち、専門家を組織に含め、インシデント発生時に適切な処理を迅速に行う。

  • 例えばビデオ会議のZoomもセキュリティ上の懸念で様々な国で利用を停止されていたりする。
  • 多くの問題は、プロダクトの仕様や実装の問題、オペレーションの問題、対処の問題が複合的に絡まって起こる。

この21章はソフトウェアの基礎知識、DB、ネットワーク、セキュリティのことも一通り概説されています。エンジニア畑からするとまあだいたい知ってるよねというところ。

巻末には付録と、推薦図書として様々な本が紹介されています。うーん『ノンデザイナーズ・デザインブック』と『アジャイルサムライ』ぐらいしか読んでないなあ……はっ『ソフトウェア・ファースト』もまだだった!

まとめ:プロダクトマネジメントの解像度が上がる教科書!

 著者は及川卓也さん、曽根原春樹さん、小城久美子さん。2019年12月ごろ着手、約1年に渡る議論の集大成として完成したとのこと。さすがにしっかり書いてあります。
元が英語の本特有の読みにくいところはないし、簡潔な日本語でしっかり書いてあります。全21章400ページの大ボリュームながらスッと読めました。読んでいて誤植もほんとに数か所ぐらいしかありませんでした。

 第6章のポジショニングの例で本書の立ち位置は、初めてプロダクトマネジメントに触れる初学者向けに広く取っているとあります。確かに紹介されている手法の細かなところなどはその先の専門書に譲るところもありますが、それぞれのテーマもかなり深く、多方面にわたって一式網羅され、教科書として整備されている印象です。海外中心に様々な事例や「蛇足のだそ君」も紹介されていて、読み物としても実に面白いです。

 物理本の帯にある「世界水準のPMの英知はこの1冊で完璧に得られる」は帯特有のやや盛った表現だとは思いますが(笑)、かなり深いところまで、英知のパワーや想いを受け取ることができるかと思います。

 日本の従来型のプロジェクトマネジメントとはだいぶ異なり、根っこから考え方を変えていかないとダメそうですね。自分はプロダクトの4階層で言うとHowのところに踏み込んだエンジニアだし、プロダクトマネージャーになる予定はまったくないのですが(というか会社に制度や文化がまだないので今後の変化を期待したい...w)、こういう想いを持ったPdMと一緒のチームでプロダクト開発したらさぞかし楽しそうだな~と夢想しました。

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プロダクトマネジメントのすべて

2021年3月に行われた出版記念ウェビナーの様子のレポート。 productzine.jp

productzine.jp

エンジニアtypeのインタビュー記事。

type.jp

共著者の小城久美子さんへのインタビュー記事。

careerhack.en-japan.com

本書巻末にも記述されているチェックリスト。

productmanagement-criteria.com

プロダクトマネジメントのアセスメントツールをTably社で開発した話。

note.com

技術系Podcastのfukabori.fmの『47. プロダクトマネジメントのすべて w/ takoratta』、Burning castの『21. 及川卓也さんに聞く、プロダクトマネジメントのすべて』でも本書の及川卓也さん回があります。裏話が聞けるのでこちらもおすすめです。

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