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ITエンジニア関連の様々な話題を書いているはずのブログです。

【感想】『エンジニアの成長を応援する本2』@ #技術書典 9

エンジニアの成長を応援する本の続編!

 技術書典9の戦利品の感想シリーズです。エンジニアコミュニティ「エンジニアの登壇を応援する会」(ハッシュタグ#engineers_lt )による無料本。挑戦、失敗、決断をテーマにそれぞれを様々な寄稿者陣が語っています。

booth.pm portal.engineers-lt.info

第I部

第1章 官公庁DevOpsへの道

 なんと海洋生物学研究者として国立研究機関で働いている @Rindrics さんの章。R言語を仕事で使っている方の話を初めて見ました。
 神ExcelをいじったりR言語スクリプトをやみくもに実行するだけの手戻りの多い仕事の状態から気づきを経て、現場を改善、仲間の登場、チームの結成、正しい認識、継続的な成長……と状態が少しづつ良くなっていく様が描かれています。コラムでしっかり自分を見つめているのがよいですね。

 きっかけがR言語のいつもと違う本を読んだこと、その後の登援会のLT大会参加での刺激などで、なるほどこれがこの方なりのコンフォートゾーンの先へ進んだきっかけなのだなあと思います。
 DevOpsというとなんとなく継続的に成長中のサービス開発とかクラウド系とかを連想しがちですが、研究所での仕事でも実行できる訳ですね。目指すビジョン「DevOps in Government」がかっこいいです。

rindrics.com

第2章 挑戦する体験を通じて学ぶ「経験学習型」研修でお伝えしていること

 企画会社で各種研修やチームビルディングの講師をされている、てつのすけさん(@tetsunosuke)の章。
 知は互いに繋がっている既存の価値観を一度アンラーニングして考える……など本格的な教育本顔負けの内容です。
 ロールプレイをしようという話があって、元TRPGで鳴らした自分はギュピーン!となってしまうのですが、作業の種類によって自分は別の作業をしていた時の自分とは別人格だと思ってリセットする話は、エンジニアリングの現場でも応用が利きそうだなあと思いました。

 巻末の参考図書にも何やらすごそうな本が並んでいます。うーんこの辺の本は全然押さえられてないなあと思いました。以下の本になります。

マンガでやさしくわかるNLPコミュニケーション

マンガでやさしくわかるNLPコミュニケーション

 ご本人のツイートによると「本当に参考という感じなので、興味があったらちょろっと見ていただくぐらいでよい」とのことでした!

第3章 エンジニアとしての証を残すための「挑戦」

 コーヒーでお馴染みのアマレロさん(@amarelo)が登場だ!
Podcastでも過去の話は拝聴したのですが、エンジニア一直線という訳でもないキャリアで悩み色々あったとのことで、なるほど人それぞれ様々なジャーニーがあるのだなあと思います。
 外に出ていくきっかけがよく各所で聞く「インフラ勉強会」というが良いですね。そこからはブログに挑戦、登壇、資格取得への挑戦とどんどん前進していきます。

wp.infra-workshop.tech

 自分へのコミットメントの為にも書かれているのだと思いますが、今後挑戦予定の資格がずらっと並んでいます。AWS認定のアソシエイト級のSAAは取得済み、DVASOAもあって、僕はまだとってないセキュリティ-専門知識もありました。やばい……そのうちワイ抜かされるぞ!と読んでいて焦りました。(笑)
自分ごととして捉えて自分で経験値を積み、会社に依存しないマインドでエンジニアとして活動していくぞという宣言は良いですね。
今後も「コーヒー焙煎人」として深めていくとのことですが、こういう方向でキャラ立てしている人はエンジニア界隈であまり見ないので、差別化できて目立ちやすいと思います。

 ちなみにアマレロさんは技術系Podcastにも出演されており、そのジャーニーを知ることができます。

  • aozora.fm『65. amareloさんとキャリアやコーヒーの話』
  • 成し遂げたいam『ep.29【#成し遂げたいam】【ゲスト : @amarelo_n24 】amareloさんとコーヒーの話で盛り上がりました!コーヒー焙煎人兼ITエンジニアの成し遂げたいことは、コーヒー好きを増やすこと!』

fortegp05.github.io

open.spotify.com

はてなブログは『amareloのブログ(仮)』です。

amarelo24.hatenablog.com

第4章 苦手なアウトプットに挑戦できたワケ

他業種からエンジニアに転職活動中との、まいあ めあさん(@maiamea)の寄稿デビューの章。
アウトプットやコミュニケーションに非常に苦手意識のあった中からいかに前向きになれたか、初心者目線で非常に率直に綴ってあります。
参加の決断自体も大変だった勉強会は数をこなして何とか慣れ、ゲームのスコアのつぶやきでTwitter発信のハードルを越え、まずは勉強会の感想ツイートから開始。懇親会も数をこなして会話ができるようになり、noteに初投稿……と続いていきます。(ここでRuby界隈ではおなじみのMatz大先生登場!)

note.com

 人がいる前での発表が苦手だという話は割と聞きますが、まいあさんの場合もまずはハードルが低い、人数の少ない集まりで好きなテーマで、小さな成功を得るところから始まります。成功体験が新たな挑戦意欲に繋がるという話は、これはほんと教育の分野でも大事なことだよなあと改めて思います。

 そしてLT登壇を決意できた話で、『エンジニアの成長を応援する本』1冊目のhekitterさんの言葉が引用されているのが激アツです。そうだ、こうやって想いは受け継がれていくのだな……とエモくなりました。

booth.pm

 そしてLT成功後にnoteに記録を書き、するとボスのariakiさん(@ariaki)からスッとお誘いが来てみごとに執筆沼へ……じゃなかった、こうして寄稿しているとのこと。
今アウトプットを始めようか迷っている方には、こういう数歩先を行く方の言葉こそがもっとも助けになると思います。

 実は僕はまいあ めあさんを一方的に知ってまして、noteの勉強会参加記事をTwitterで見かけて拝見したのがきっかけでした。本章に出てくるMatzさんの講演感想記事を確認したらスキを付けていましたが、最初に見たのはそれよりもうちょっと先の別のイベント記事だったような気がします。
 積極的にアウトプットしてて前向きで偉いな、輝いてるな……とかその時は外野から思っていたのですが、いやはや、その裏にはここまで至るまでのこんなジャーニーがあったとは。人に歴史あり、人に物語ありです。

noteへのアウトプットも、もう25記事ほどまで貯まったものを見ることができます。 note.com

第II部 失敗

第5章 より良い人生だったと満足するための失敗の楽しみ方

 あちこちの勉強会などでもご活躍中の、あきの/D-En(@DddEndow)さんの章。
 かつては失敗を必要以上に恐れたり、大学時代の失敗からメンタルに不調をきたしたこともあった...という振り返りから、なんかもう挑戦の塊みたいな人でもこんなことがあるのだなあと思います。

そこであきのさんが編み出した答えは失敗を楽しむこと、失敗の中から選んで自分にプラスになるものについてはバシバシ挑戦していくこと。
 選択の助けとして失敗にランク付けをしていく話が出てくるのですが、例に挙げられているダブルブッキング時の思考など、確かに言われてみるとこれは誰しも気づかないうちにやっていそうですね。
 そして選択の助けとしてもうひとつ、未来のランク付けの話が出てきます。人生における大きな失敗ならそれは失敗ランク付けの上位として挑戦によって回避していくというもの。ご自身の最上位失敗ランクとしては無職になる、チャレンジできなくなる、後悔しながら老衰で死ぬなどとても現実的な事項が挙げられており、ここまで考えて行動しているのだなあと感心します。

 そして挑戦の話ではこの手の話でよく出てくる心理的安全性の他に「心理的障壁」、自らの内面の壁の話も論じており、失敗の基準を下げて心理的障壁を下げていくことが大事だと述べています。
 最後の、失敗した回数は挑戦した回数なのだからどんどん数をやっていこうという話は、ソフトウェア開発でいうとDevOpsやCI/CDの考え方と繋がりそうでこの辺面白いですね。

 私的にはあきのさんと接近遭遇したのは2020年2月のデブサミの、AWSの『開発に集中するためのJava on Serverless』のセッションででした。
かなり技術寄りのセッションでこの部屋では実況している人が少ない中で互いを認知して、おっくわはらさんのゆめみ勢の方じゃん!と気づいたのでポチッとフォローしたのでした。
 その後も認定試験をバンバン突破したり登壇したり、圧倒的成長と挑戦が続いていてやっぱり最近の若手エンジニアはみんな化け物や…と勝手に思っているのですが(笑)、その根底にはこんな、自分の人生を後悔したくないという考え方があるのだなあと知れた章でした。

 noteでも本書についての記事を見ることができます。

note.com

第III部 決断

第6章 「思いつきを実行する」という「決断」

 かつて(?)は「同人誌を書こうお兄さん」、最近は「妖怪本書いてけ」として名を馳せているおやかたさん(@oyakata2438)の章!
 その来歴はPodcastなどでも聞けるのですが、元は普通のサークル主だったとのことでそんな時代もあったのだなあと思います。
 きっかけはイベント後の打ち上げ、そして作った同人誌のノウハウ本『技術同人誌を書こう! アウトプットのススメ』がニーズにマッチして多くの人に知られ、ワンストップシリーズと関連した人々に繋がり、今に至ったとのこと。知り合った人がまた人を呼んだり、それぞれの活動や成長が影響しあっていたり、人と人との繋がりが相互に影響しあっているというのが良いですね。
その本はその後商業本にまでなっています。

 その後は、やらないで後悔することは意外と尾を引くので思いつきから軽い気持ちでカジュアルにやってみたほうが良いよ...ということで思いつきを育てるコツを論じています。
一緒に楽しんでくれる人がいる、自分のためになって楽しい、そして人のためにもなる...というのは、技術同人誌を書いてみたりブログを書いたりイベントで活動したりしている多くの方の原動力として共通しているのではないでしょうか。
 親方Projectでは執筆者をいつでも募集しているとのことです。

おやかたさんはPodcastにもあちこち出演されています。

  • aozora.fm『sp2. おやかたProject打ち上げ配信!』
  • 成し遂げたいam『ep.33 親方さん回:本を書いてけ妖怪登場!次は何を企んでいるのか!?【#成し遂げたいam】【ゲスト : @oyakata2438】』
  • しがないラジオ『sp.59【ゲスト: oyakata2438】技術同人誌を書き始めて13年目のサークル主が語る技術書典6と楽しい技術書コミュニティ』

fortegp05.github.io anchor.fm shiganai.org

第7章 流浪人に至る決断の軌跡

 最後は「央」と書いて「ひさし」さん、あるいはそがおう/そがさんの章。(@sogaoh)  2019年1月に屋号を取って遂に個人事業開始、2020年7月のイベント『July Tech Festa』で登壇したのを機に、フリーランスを「流浪人」と表しながらその歩みを振り返ってゆく章です。そのイベントの資料は以下になります。

techfesta.connpass.com


C3:間隙を縫って現場と自分を Extend していく流浪人スタイル - JTF2020

 なんとそのジャーニーの開始は1999年、会社5社+フリーランス後に相手先5社経験と大ベテラン。
最初はVisual Studioを使ったC++のコンソールアプリ開発から始まり、自分の手で物を作る楽しさを知り、自分でやる信念を通すために転職、東日本大震災の転機、事業と現場の距離、深刻なインシデントへのSREとしての復旧作業、立つ鳥後を濁さずという体の自分がいなくても大丈夫な体制を作ってからの退職づくり……とキャリアの概略だけでも波乱万丈。
 ああこの方も、様々な現場で自分の足で立ち、沢山の経験を経て今もこうして立っているのだなと感じます。Podcastとかにゲスト出演されたらキャリア関係でめっちゃ濃密な話が聴けそうですね。

 コラムには最強と思うコマンドとして、リモートとディレクトリを同期できるLinux系コマンドの rsync が解説されています。あ~自分もむかしなんかのプロジェクトで1回ぐらいは使ったような……

 結びでは現在のコロナ禍の中、ご自分も個人事業主として打撃を受けつつも新しい気持ちも沸き、流浪人だからこそできることを模索しながらこの先の未来を見ているとのこと。コラムの本業と副業の住み分けの話で何気にお役立ち情報が載っていますね。

 はてなブログ『sogaoh Memoris』はこちらです。

sogaoh.hatenablog.com

 個人事業主の屋号の 'ant-in-giant' は「GIANTの中にはANTがいる」というフレーズ、すなわち巨人の中には蟻がいてそのような縁の下の力持ちのPractitioner(実践者) でありたい、という気持ちから決めたとのこと。サイトで様々な情報も見ることができます。

www.ant-in-giant.work

 こっそりとLAPRAS Personのページも拝見したのですが、技術力スコアが3.65と突き抜けていました。(3.5で上位4%以内とのことです) さすが飛天御剣流...じゃなかった、これが流浪人の実力...!

まとめ:現場のエンジニアから、成長の道しるべが伝わってくる本

 最強の良心価格0円。様々なバックグラウンドを持つ様々な方の話が読める本でした。日々の仕事や成長について考えたりする時、自分と近い立場や数歩先、あるいはさらにその先を行く人の言葉は様々に役立つことでしょう。
 私的には様々な方のキャリアや辿ってきたジャーニーの話を読んだり聞いたりするのはけっこう好きなので、そのあたりも楽しかったです。

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エンジニアの成長を応援する本2

 この『エンジニアの登壇を応援する会』は僕も入っているのですが主にROMっているだけ(←この表現がすでにインターネット老人会乙であるw)なので、またSlack覗こうかなーと思ったりしました。

 本書で載っている方だと、おやかたさんの親方プロジェクトの同人誌ワンストップシリーズには、『ワンストップ勉強会』『ワンストップPodcast』に拙者もアンケート回答の形でちょこっとだけ寄稿しております。
 そういえばコロナのご時世で最近そういう活動してないな、何か協力できそうな本とかあるかな〜とふと思いを馳せつつ......おおっとこれはしたり。
柔物職人界隈でかようなことを迂闊に口に出して申せば、妖怪「あまびえ」ならぬ妖怪「本書いてけ」が何処からともなく現れるものにて候。火の用心、執筆沼にも用心、今日もお江戸は巣ごもり日。本日のえんとりはこれにて終了でございまする~。
 
  

みずりゅ画伯による妖怪本書いてけ之図 #成し遂げたいam たいむらいんより