ソード・ワールド2.0リプレイ マージナル・ライダー(1) (富士見ドラゴン・ブック)
- 作者: グループSNE,田中公侍,楡
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/09/19
- メディア: 文庫
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Marginal。英語では「周辺的」「あまり重要でない」「欄外」「限界」「選挙などで僅差」などのいろんな意味がありますが、恐らくこのシリーズでは「辺境のライダー」といった意味合いなのでしょう。
というわけで“たのだん”完結の後に開幕したSW2.0リプレイ新シリーズの1巻です。
上級ルールやアルケミスト・ワークス対応ということでライダー、アルケミストをPC側に積極導入。舞台もデュボール王国と趣を変え、広大な草原や放し飼いでたくさん走ってる馬たちが目に浮かぶような舞台です。そして冒険に旅立つ冒険者未満の少年少女たち。うーんジュブナイルだ。基本だ。なんとなく、パーティ内恋愛展開が話題になった『Waltz』シリーズの序盤を思い出させますね。
主人公は未来のドラゴンライダーを夢見る遊牧民の少年ラファル。もう直球ど真ん中の少年主人公ですよ。そして両脇に初期から配置されているのがドラゴンに育てられた(らしい)幼馴染み天然少女のメルティと冷静口調で時々デレが混じるルーンフォーク少女のナハト。しかも序盤の天幕侵入イベントからフラグの予感、両人ともラファルに好意を抱いているのが読み取れる。部族のパパ様もそろそろ嫁候補を求めている。
なんともウラヤマシスな基本の初期配置ですが、このテの作品の主人公は大抵鈍感で女の子の好意になかなか気付かず仲が進展しないと相場が決まっています。女の子たちが目に入らないラファル少年が一方的に愛を向けているのはなんと馬ですよ馬。「だめだこいつ」「はやくなんとかしろ」「だがそこがいい」と読者に思わせるほど重病の馬フェチ。うーんこれは新しい。SNEリプレイにはフェチっぽいキャラが過去何人かいた気がしますが、馬フェチは新しいですねー。w
ちなみにラファルが一方的に愛して止まない愛馬ストラーダ(Strada)はよく見かける単語ですが、イタリア語で「道」という意味なんですね。現実世界では三菱のトラックやパナソニックのカーナビに使われています。馬の名前には似合う名前ですね。しかしこのストラーダはストラーダで異種族(人間にあらず)にナンパされそうになったりいろいろ災難なんですが、ラファルにあれだけ偏愛されて馬のほうはどう思ってるんでしょうね。w
小動物を連れた少女というのはいかにもヒロインぽい造形ですが、表紙/口絵イラストでもメルティが連れているのは竜のグーちゃん。これはルール上のアイテムとしてはドラゴンの幼生体なのかファンの間でも騒がれましたが、何かの相当品なのかと思っていたらただの演出アイテムでした。作中でも売られそうになって困ったりしていますが、これはきっと今後のストーリー展開の中で使われていくのでしょう。
馬が好きすぎて生きるのが辛いラファルは序盤からそれでキャラを立て、メルティもヒロインぽいキャラクターですがまだ口調から個性がそれほど目立つ訳ではなく、台詞回しが印象に残るのはナハトでしょう。しかしこの口調は『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希なんかを強く連想するんですがやっぱり狙っているんですかね。ちゃんと時々慌てて冷静口調が崩れたりデレも入ります。すごい。時代に適合しています。w
また、キャンペーン物リプレイにしては比較的珍しく、主人公3人組以外のパーティメンバーは冒険者の店で入れ替わり立ち代り同行していく……というスタイルになっています。途中で参加者の都合が悪くなったりすることもある、サークル内でのキャンペーン展開と似たものを意識しているようです。
主人公たちが少年少女なので冒険者レベルも高い先輩の立ち位置でしょうか。脇役で面白かったのはリルドラケンのルキアスですね。
ソード・ワールド2.0リプレイ 新米女神の勇者たち(6) (富士見ドラゴン・ブック)
- 作者: 秋田みやび,グループSNE,中島鯛
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/09/19
- メディア: 文庫
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そして、後書きによると「実際のプレイスタイルに近い形のリプレイ」、GM視点や実際のプレイそのままのやりとりに近い作品を意識したということで、ゲーム中の余談なプレイヤーの素の一言などもかなり収録されています。
ものによっては脚色の多いFEAR系リプレイに比べると、伝統のSNEリプレイは元からプレイヤー≒キャラクター目線のゲーム中そのままのやりとりも多く収録されています。他のSW作品と比べてそれほど差は感じませんでしたが、GMのことをみんなでドSと呼んだりと、実際のセッション中の臨場感溢れる内容になっています。
乱戦などがたびたび発生する戦闘の状況説明も低レベルの冒険だからか、なかなか丁寧で分かりやすかったですね。細かいところで着目したのはホワイトボードの使い方でした。うまく利用して戦闘時の状況を図示しているのですが、どうも敵の残りヒットポイントも書いて全員に示しているようなんですね。敵データをどこまで公開するかはマスタリングのスタイルにもよると思うのですが、SW2.0の標準(?)ではどこまでが一般的なのでしょう。
こういうリプレイでのラブコメ系展開は嫌う人もいますが、筆者は割と自然に、微笑ましい展開として受け入れることができました。アニメ絵の多い商業リプレイの中で一味違うこの絵柄もなかなか良いですね。
旅する大樹とこわれた世界―Replay:りゅうたま (integral)
- 作者: 岡田篤宏,テーブルトークカフェDaydream
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2009/06/20
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人それぞれ感想は様々ですが、全体的にほんわかした感じで好感が持てました。ラファル君たちの冒険はまだ序盤も序盤ですが、今後が楽しみなシリーズの幕開けでした。