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ITエンジニア関連の様々な話題を書いているはずのブログです。

星の彼方に A.V.A.L. の語源を求めて


 この記事はネーミング関連の話です。

 それは暑い夏のこと。合計PL8人キャスト20人ぐらいを同時に把握して2卓分の同時並行プレアクトを仕事の合間を縫ってこなし、諸々が落ち着いていよいよ記念すべき『アストライアの涙』第1陣が本番を待つばかりとなっていた日。
 当初の計画では西方から来るほりの皇子はアクト前日から東京入りの予定だったので、アクトの準備は前々日には既に全て終えていました。PDFに書き込んで印刷済みのレコードシートもアクトシートも参考資料もフルカラーの情報カードも、iPodに格納済みのBGMリストも何もかも。
 準備は万端、前日は悠々と映画デイと決めていたので『サマーウォーズ』『G.I.ジョー』を2本立てで堪能していたのですが、夕方にふと携帯を見たら……直前の前の日になってなんかカキコとサキコたんの最新データと設定がキター!(゚∀゚)


 RLのみ公開の姉妹記事で依頼されたのは、このシナリオの重要ゲストであるジョナサン・アーチャー教授との交流シーンでの言いたい台詞やイメージ、現在イワサキ重工多足歩行技術試験所に属しているサキコが学生時代から研究していたウォーカー制御技術のきっかけが教授と関連していたこと、技術の名前について教授の本&シナリオの背景情報の『アヴァロン計画』から名前をとってaval (アヴァル)としてよいか、ということでした。
 やれやれ危なかった危なかった。大急ぎで情報を把握し、アクト当日のシーン演出に活かすことができました。 (-人-)
 同時に、本シナリオのタタラ枠はそういうアプローチができるように元からしてありますが、キャストのコンセプトに関わる重要な過去設定をこうしてシナリオと関係させるというのはRLとしても光栄なことです。速攻でOKにし、説明のつく関係を考えました。


 このシナリオに出てくる『アヴァロン計画(AVALON Program)』は宇宙の実験コロニーで行われた先端科学研究計画ですが、語源はもちろん押井映画でもDSのゲームでもなくて、かの永遠の王アーサーの眠ると言われるおおもとのアヴァロン島です。語源のケルト語やウェールズ語や諸々ではアヴァルがリンゴを表すそうですね。
 未知への探求の雰囲気を出すため、計画の名前に加えて8つある実験コロニーの名前も、全て伝説の土地や理想郷の名前を採用しています。アトランティス、エリュシオン、ザナドゥ、シャングリラ、ティルナノーグ、アルフヘイム、ホウライ、アルカディア

 まずシナリオのゲストのアーチャー教授の書いた本は、子供時代のサキコが登場することを考えて、子供でも分かる科学の入門書『アヴァロンへ至る道』としました。アヴァロンといえばリンゴ、リンゴといえばニュートン万有引力の法則と結びつくので本のタイトルとしてはありえるでしょう。
 英語にすると The Road To Avalon。調べたらこういう本は実際にありました。しかも女流作家の書いたロマンスな小説。うーん事実は小説よりも奇なりです。w


 次に考えたのはよりそれらしい名前の提案。シナリオと関係するキャンベラAXYZ、オーストラリアは現実でも英語が公用語であり、ニューロエイジでも同じと考えられます。本シナリオの関係コンテンツはロゴ類やFLASHトレーラーも英語を使っています。何より、アルファベットからなる科学技術関係の言葉はふつう英語を使います。
 当たり前ですが英語では固有名詞は最初が大文字です。例外はあって狙いがあって製品名などで2文字目以降を大文字にすることもあります。

 例:iPod, iPhone

 aval よりは Aval がそれらしいでしょう。

 そして、複数の単語からなる頭文字を繋げた語(正式には「頭字語」と呼ぶそうですね)は通常は大文字を使います。
 この大文字化にも例外があって、単語でなく文章を略す時は必ずは大文字にしないときもあります。

例:
「可能な限り早く」
as soon as possible→A.S.A.P.,ASAP の他に a.s.a.p., asap とも書く
「〜としても知られている」
as known as→AKA, A.K.A. の他にも aka, a.k.a. とも書く

たとえば“テロねむ”がchihayaフィルムでハリウッドで映画化されたら、美人女優が演じる千早冴子課長は

「彼の名はユーリ・マカロフ……“亡霊”とも呼ばれているわ」
↓
「His name is Yuri Makarov, a.k.a. Ghost.」

と言うわけですよ。w


 脱線しましたが、技術の名前なら AVAL や A.V.A.L. と綴るとよりそれっぽくなります。厳密に英語読みすると「エイヴァル」になっちゃいますが、まあこれは気にしなくて大丈夫。
 さあ、飛び級でミトラスのエスポワール工科大を卒業した天才級のサキコたんの研究テーマ……「ウォーカーの駆動装置を制御する分子モーターと有機系人工筋肉の組み合わせ」「稼働時間が長く、維持管理の簡単な次世代の姿勢制御装置」「先進」「制御」「有機」「機構」と関連したモヤモヤしたすごい謎技術(笑)に名前がつきました。
 さあ。ならば A.V.A.L. が意味のある略語であることを設定として理由付けるしかありますまい。

 まずプレプレアクトBBSの準備中に、ウォーカー好きで知られるm&m氏が1つ考えてくれました。うむアラシといえばmじゃ、mじゃといえばアラシ。食いつきが激しいでござる。w

A.V.A.L.: Active Variable Arms Loader System
機械翻訳:アクティブ変数兵器運搬者
エム先生による意味付け翻訳:「機動可変兵器積載システム」 分子モータ統合システムで、可変式のヴィークルや砲を高速かつ精密に変形制御する概念。


 うむいかにもmじゃらしい案です。『アーマードコア』などに出てきそうですね。英語として意味も通じています。
この案だと兵器のイメージがかなり強くなります。サキコたんはメカ大好きっ子ですが兵器開発者ではなくて、恐らくここはキャストの設定としてかなり大事な根幹と思われます。
 またミリタリー英語だと、どんな兵器もアタッチメントで付け替えられる汎用的武器搭載システム……という語感を受けます。
銃が好きな人はおそらく、M4カービン銃につけられてるRISのような連想をするでしょう。
(R.I.S.: Railway Interface System 銃身にダットサイトやレーザーサイトやフラッシュライトやグレネードなどいろんな会社が出したアタッチメントをみな付けられる統一規格のレールをつけること。ディティールの細かい映像作品でも、精鋭部隊や特殊部隊がよくこれ系のアサルトライフルで登場する)


 シナリオに出てくるアヴァロン計画も戦争とは程遠いアカデミックな先端計画、ゲストのジョナサン・アーチャー教授も争いを好まぬ科学の世界の冒険者、サキコも生命を脅かす危険な宇宙で人間を守ってくれる科学の甲殻を持つウォーカーを作ろうとして、このA.V.A.L. を研究しました。シナリオの最重要機密であるモニョモニョも、ミカエルの断罪の剣なき正義の女神です。
 冒険をテーマとしたせっかくのタタラシナリオですから、直接は兵器と関係ないところでも考えてみたいところ。というわけで、僕も考えてみました。
 まず、関連しそうな英単語を列挙してみます。実際に考えた当時はサキコたんとのシーン演出案のメモの余白に書いていました。

先進 Advanced
制御 Control, Govering
有機 Organic
機構 Mechanism, Organization, Structure, System
分子 Molecular
モーター Motor, Engine
関節 Joint
関節の(形容詞) Articular
姿勢 Posture
身のこなし Carriage
体型 Figure
移動 Movement, Transfer
筋肉 Muscles


「有機」や「人工筋肉」を入れると分かりやすくそれらしくなりますが、今回は入れられないので見送りです。
しばらく考え、以下の案を思いつきました。

A.V.A.L.: Articular Variableness by Advanced moLecular motor mechanism
日本語:先進型分子モーター機構による関節可動性

 I got it!! これなら完全に英語として意味も通じ、サキコたんの設定とも関連付けられます。分子の molecular の先頭の m でなく途中の l を使ったのがポイントですが、これくらいのこじつけは現実世界の頭字語でもありふれています。w
 ちなみに考えたのはアクト当日の朝、出発前の1時間弱でした。よしよし。本日も頭脳の回転は朝からぎゅんぎゅん冴えています。よしやるぜ! ということでぬいぐるみのひよこPと一緒に、無事に『アストライアの涙』第1陣は終了したのであります。


 『トーキョーN◎VA』シリーズはサイバーパンクを源流としていることもあり、昔からこの手の頭字語を使った設定は多い部類に入ります。
 代表的なものは I.A.N.U.S.に始まってDAK、N.I.K, 黒歴史化しつつある懐かしのG.C.I. などなどなど……。
 もちろんある程度のこじつけは入っていて、Intelligence Assiting...の言葉を入れる為にIANUSになっていますが、ヤヌスの語源はローマ神話の双面の神で綴りはJanusです。(英語読みでは発音は「ジェイナス」が正しいらしい)
 DAK、NIKもCで始まる単語をKで書くニューロタング綴りがなくなったDetoantion時代はDAC(DAta Communication)、NIC(NOVA Investigators Council)になるのが正しいですが、これはロゴを使い回したりしている関係で今も昔の名残りが残っていますね。

 ミリタリーやメカニック、科学や先端技術やなんかすごい計画、組織名などに、これ系のネーミングをつけると雰囲気が出ます。シナリオやキャラクターの設定に取り入れるのも一興でしょう。
 こういうネーミングは考えるのが得意な人も苦手な人も、センスのある人もない人もいます。何かを複数人で作業しているなら、できそうな人に頼むのが早いでしょうね。
 また、現実世界でも様々な分野で、実に様々な頭字語が使われています。試しにWikipediaを見るとえらく沢山載っているページがありますね。

 今はネットで多くの情報が入手できる時代です。面白そうな名前やセンスのある名前があったら参考にしていくとよいでしょう。
 フィクションでも同じです。確かGUNDAMもSEEDの世界だとかなりこじつけっぽい略語の設定がついていましたが、ロボットアニメ系作品にもよくこの手の設定は出てきます。『フロントミッション』とか『アーマードコア』などなどそれ系のコンシューマーゲームでもよく出てきますし、ゲームの出来のよい設定資料集を見ると、本編と関係ない細かい所で面白い設定がついてたりすることもよくあります。これらを参考にするとよいでしょう。『エースコンバット』シリーズなんかも北欧神話アーサー王伝説出典のネーミングを作中の世界観にマッチした形で架空機の名前などにうまく使っています。
 最近のTRPGで例を挙げると、新作ロボットRPGフレイムギア』も、タイトルになっているロボット技術の名前「FLAME」が、割と苦しいこじつけの略語になっていますね。

 仕事の世界でも、その業界特有の言葉というのはドラマなんかでよく出てきます。商品などの企画をしてる人やデザイン関係の人は、こういう名前を考えるのは得意じゃないですかね。僕が平日の昼間活動しているIT業界も、特にアルファベットからなる略語が多い業界です。概念から実際の技術名からバズワードまで、もう20や30ぽんぽん出てきます。



 ということでした。では最後に、『アストライアの涙』の実際のアクトでサキコたんがA.V.A.L.の名前の使用許可を得た感動の回想シーン、シーンアイデアメモが活かされたシーンを思い出して終わりにしたいと思いまーす。 ヽ(´ー`)ノ

 リサーチフェイズの重要イベントシーン、シーンタイトルは『星ぼしに架ける橋』。時間は数年前、場所はムーディなBGMの流れるキャンベラAXYZの夜のBAR。
 サキコ・フォーンダインは自分がエスポワール工科大の博士課程に進むことになったことを話し、ジョナサン・アーチャー教授は38万km彼方の宇宙で行われる『アヴァロン計画』に自分が行くことを話し、互いの航海の無事を祈って乾杯していた。当時のサキコには知る由もなかったが、それが星の世界に散ることになる教授との最後の会合だった。


サキコ「では、お名前を借りてもいいんですか?」
教授「それは……僕の書いた『アヴァロンへ至る道』から名前を取ってくれるのかい? そうか。それは僕にとっても光栄なことだよ。もちろん自由に使ってくれたまえ。
 そうか、君はまだ覚えていてくれたのか。あの年であの本を読んでしまった君は、大したものだと思ったものだよ」


 2人の脳裏に思い浮かぶのは、まだ子供だったサキコがAXYZ工科大の夏の公開講義の講義に潜り込み、最前列でアーチャー教授の話を聞いていたあの遠い日のことだった。
 大事そうに抱えてきた科学の入門書のコピーの内容は子供には少々難しいものだったが、当時から才覚を表していたサキコは内容を全て読解してしまっていたのである。講壇のアーチャー教授だけでなく、周りの学生たちも驚愕したものだった。(エキストラ学生の演者:だご&ライド)


教授「ああ、タイミングが悪かったな……。もう1年後だったらエスポワール大での君の研究が続いて、アヴァロン計画でもその研究テーマの実験をやることもできたんだがね。
 そうだ。君の論文だが、軌道に持って行っても構わないかな。研究者はみんなそういうのを読むのが好きだからね。きっと、みんな喜ぶよ」(←アクトトレーラーの手紙のこと)


 師と教え子はしばらく歓談を続け、教授はふと、地上に残してくることになる一人息子のグリフィンのことを話した。キャンベラAXYZからラグランジュ点L5までは遠い。翼を持たぬ有翼獅子は星を見上げ、何を思うのだろうか。
 自分は教授だが、教育学の年頃の子との付き合い方も学んでおくべきだった……アーチャー教授は冗談めかして言うと、ふと父親の顔を見せた。

教授「あの子ももう思春期だ。あの年頃の子はいろいろ難しくてね。宇宙にいると、連絡も取り辛くなる。もしもあの子が寂しがっていたら、いつか会ってやってくれないかな。親しくしてる兄貴分のカブトがいるみたいなんだけどね。
 あの子もずっと1人っ子だったからね。もしも君みたいなお姉さんがいれば、少しは違ったかもしれないんだけどね」



舞台袖の黒子「なんかそれー、口説いてるみたーいだー (*゚▽゚)」
RLの人「もう!せっかくいいシーンなのに〜! ヽ(`▽´)ノ
えーい、mじゃに吹き矢攻撃だ! |/゚U゚|ノ ---===フッ!!」
mじゃ「ギャー ヽ(゚∀。)ノ」


この吹き矢攻撃はアクト中、覚えているだけでも3回以上ハッシャされることになる……(。´Д⊂) 【泣きながらダッシュ】



 気を取り直して。そしてアーチャー教授が謎の死を遂げてから1年後。宇宙への冒険の決意を固めたグリフィン少年がキャストたちを頼ってくるところから、シナリオ『アストライアの涙』の本編は始まるのである……!

黒子になんか負けないんだからねっ!


おわり