Rのつく財団入り口

ITエンジニア界隈で本やイベント、技術系の話などを書いています。

イノセンス

 Follow me〜♪ ということで映画【イノセンス】を観てきました。


 刑事ものになってエンターテイメント色が強まった【攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX】(以下SAC)を初めて見た時は少佐たちが感情を持った人物に描かれていて意外に思ったのですが、SACに慣れてから映画版の完全な続編の設定で描かれた本作を見ると、逆にこちらの方が意外に見えます。


 ネットの海に消えた草薙素子の影をまだ求めているバトーはSACではかつて米軍レンジャー所属で肉弾戦のイメージが強いですが電子戦/諜報戦にもかなり長けている設定であり、右腕にもサイバーガンが仕込んであります。トグサはSACに初登場した頃の経験がまだ足りない頃の雰囲気で家の子供は赤ん坊ではなく既に少女、住んでる家も一軒家。イシカワも口数が多くてベテランの印象が強まっています。(あと乗ってる車が高そう)
 チョイ役の荒巻課長含め、映画になった途端にみんな聖書や孔子やミルトンの引用台詞をぺらぺら喋り出すのでちょっとびっくりです。


 ストーリー自体は暴走した女性型ドロイドの謎を追って捜査につくバトーとトグサから始まり、そんなに驚くところもなく普通なのですが、サイバーパンクや近未来系RPGの燃料になるイメージソースは控えめながら随所に満ちています。時折現れるバトー視点のサイバーアイ画像やハラウェイ博士のラボ、サイボーグ同士の戦闘や短いながら美しい電脳戦の映像、銃撃戦などなど‥‥。連絡してきた相手の情報やらが車のフロントガラスや視界の中に浮かび上がる場面がSACと同じようにあるのですが、オレンジ一色で見難いのが両者の作品の方向性の違いを見せていますね。


 昔のTRPGだとサイバーウェアも人間性やエッセンスが減ったりしたものですが、最近のゲームだと簡便性のためからもほとんどアイテムと変わらないアクセサリー扱いが多くなりました。N◎VAでも完全義体を使う際に単にアクションランクが増えるからなどデータの強さのみばかりつい考えてしまいますが、こういう細部まで描かれた作品を見ると、TRPGでは再現できないような部分でもサイボーグは強いし、どんなに高性能でも人間とはやはり違う部分、失ってしまう部分があるし、「人間と機械との境目は一体なんぞや?」という命題についても改めて認識させられます。

 劇中で人形の群れが襲ってくる場面があるのですが、これもかなり怖いです。人間対人間でないものの戦いはこんなにハンデがあるんですねー。


 もうひとつの見所は細部まで拘った映像美。公開前からかなり評判でしたが、これは背筋がぞっとするぐらいヤバイです。特に人物でなく背景。偵察ヘリの曲面やロクス・ソルス社の遠景や屋敷全体がオルゴールになったハッカーのキムの家、チャイニーズゴシックな街並み、作中一番華やかな祭りのシーンなどなど、時々本当にアニメなのか疑いたくなるぐらい凄い時があります。意外に古めかしいバトーの部屋やゴシック調の建造物などは、古典的名作の『ブレードランナー』を彷彿とさせるところもありますね。


 ぶっちゃけ草薙素子は声だけ最後の方に出てくるだけですし、意図的に表情を薄くしているキャラクターの顔も正直怖いし、作中で可愛いといえるキャラはバトーの飼ってる犬だけ(マジ/笑)だし、エンターテイメントを求めるならSACの方が遥かに面白いですが、商業的にはともかく前作同様世界でいつまでも語られる映画になるでしょう。

 押井映画の常として衒学的で引用台詞が多くて難解なので、何も知らずに観に行くと1回では理解できず(あるいは理解したつもりになれず)に終わってしまうかもしれません。公式サイトなどで予習してから観に行くことをオススメします。(僕は『イノセンス&攻殻機動隊コンプリートブック』を全部読んでから観ました。ヽ(´ー`;)ノ )


 ほかCOMING SOONな映画の予告編も多数流れたのですが。【アップルシード】はイノセンスよりはSAC寄りな感じで映像も綺麗でかなり期待大です。【スチームボーイ】もギア・アンティークが好きな人が狂喜しそうな予告編でした。