Rのつく財団入り口

ITエンジニア関連の様々な話題を書いているはずのブログです。

TRPGセッションでのiPadの活用

 9月末に行われたN◎VAカフェ『J◎KER』翌日会の東京遠征オフでは、僕の卓は新しいことを試行してみたので記録に残そうと思います。TRPGとしてのシステムはトーキョーN◎VA The Detonation です。

 iPadiPad2両方あるのでPLサイドとGM(RL)サイド両方に使えます。第5回目の飛行となったシナリオ『アステールの宝珠』は元からゲストキャラクターを3Dアバターで作っているので、タイトルやゲスト絵やシーンのイメージ画像はこれまでと同じく、PLサイドに向けた形で提示。
 RLの手元では、今回が初めて、iPad2を使ってシナリオ自体の読みあげもこちらから行ってみました。
 iPhoneアプリの世界ではテキストエディタ系は有名なものが幾つかあります。僕は有名な『Rainbow Note』と『Awesome Note』を入れてます。
 iPadではユニバーサルアプリ以外でiPad専用のテキストエディタ系アプリは……iPadが世に出たころはそれほどはなかったのですが、今は幾つかあります。僕は使っていませんが『Textforce』『Notepad+ for iPad』『iText Pad』『Nebulous Notes』などが有名でしょうか。
 今回は「テキストを入力する」ではなくて「テキスト情報を参照する」のが目的なので、重視すべきメイン機能は文字のフォント変更や背景色変更などなど表示系、クラウド系サービスとの親和性となります。
 という訳で初回はまずはベーシックに……iPhone/iPadの神アプリを語ると必ず名前が出てくる万能ファイルリーダー/管理アプリ、『GoodReader for iPad』を使いました。最近本屋に行ったらGoodReader入門書まで出ていましたね。
 GoodReaderに入れたのは以下の2つです。

  • シナリオ『アステールの宝珠』本体のテキスト(150KB)→クラウドサービスのGoogle Docsに文書として登録→テキストとしてGoodReader上にダウンロード→閲覧
  • 上記シナリオをA4版2段組にし、情報項目関連図なども加えたWordドキュメント→Wordの機能でPDFに変換(850KB)→クラウドサービスのDropboxにそのまま登録→PDFとしてGoodReader上にダウンロード→閲覧


 GoodReaderはバージョンアップを繰り返して、いつの間にか複数ファイルを同時に開いてタブで切り替えられるように機能が強化されていました。これはありがたいですね。

Goodな感じに開いてみよう

GoodReaderでテキストとして開いたところ。こちらをメインの参照用に使いました。上下に出ているバーは画面タッチで消せ、中央タッチで再び呼び出せます。
Google DocsからダウンロードするときはエンコーディングをUTF8にするのは今も要注意です。
 フォント選択可能、フォント色と背景色も選択式でなく赤/緑/青の三原色でスライダーから選択可能。こするように高速ドラッグでスクロール以外にも、画面上の左右に伸びたスライダーでも高速にスクロール可能……なので、ビューアーアプリの機能としてはもう十分な気がします。テキスト情報の実体が150KB程度なので、スクロールがもたつくこともないですね。
 事前にもリハーサルして、この時はフォントサイズ16でビューしていました。こうすると横方向には1列47文字ぐらいになります。
 縦書きの文庫本のライトノベルなどでも1行40数文字なので大して差はないのですが、横書きの文字を読む時には47文字前後は若干長い気もしました。下にも出てきますが、TRPGのシナリオなら2段組みがいいのかもしれません。


GoodReaderでPDFとして開いたところ。こちらも上下右にいろいろメニューが出ていますが、すぐ消せます。
 こちらはサブの参照用、N◎VAのリサーチフェイズに出てくる情報項目などのその都度の参照用に使うつもりでした。
 元のWordファイルがA4縦段組、MSP明朝9ポイントで1行は32文字です。
自分が書いた作品なのでiPadでこの状態でも大体読めますが、参照する際には二本指ピンチアウトで若干拡大する必要があります。
 この操作のひと手間があるのでPDF版の方はあくまで参照用だなと思っていたのですが、やってみると意外なことに、PDF版の方もけっこういい感じでした。まずページ全体を俯瞰してその後に拡大できるからかもしれません。元が850KB程度のPDFなのでページ遷移でもたつくこともなく、ピンチアウトの拡大でも文字が乱れるのは感覚的には一瞬、すぐにアンチエイリアスが元に戻ります。
 ここから、TRPGシナリオ類のテキスト情報の参照なら、もしかすると最適はB5版2段組なのかな?とも思います。
 最近はDTPも普及してきたのでシナリオ同人誌でも紙面の見栄えがよいものも増えてきました。(ふと入っていたトライアルシナリオを見ると、2段組みで1行が25文字。)
 これで元版がB5版2段組みだとちょうどよいのかもしれません。ただ、N◎VAの同人誌について言うとオフィシャルのシナリオ集『SSS』の書式を完全に真似たものが多く、タブレット上から閲覧すると左右のハシラ部分が邪魔ですね。あの空白をなくしてその分本文を大きくした方が見やすいです。


 ついでにトーキョーN◎VA The Detonationのルールブックを開いたところ。自炊は面倒なのでAmazonで買ったものを段ボールごと業者に送って金を払ってPDF化してもらったものです。
 ルールブッククラスになると正直まだまだ改良の余地ありです。Adobe Acrobat上で開いてClear Scanの処理を掛けるとファイルサイズを減らせるのですが、ファイルサイズが大きいPDFを開いた時特有のスクロール時のもたつき、高速で先のページに飛んだ時の画面真っ白→描画までのタイムラグがよく起こります。それもそのはず、上のシナリオは1MBありませんがこちらは100倍以上、127MBあります。
 タブレットPCのメモリ性能にも依存するでしょう。(iPadは256MB、iPad2は512MB、AndroidMotorola XOOMやOptimas Pad、Sony Tabletは1GB。)
 やはりTRPGルールブックを電子データで参照する際の真髄は、プレイの手順なり設定なりの上から下へ読んでいく文章ではなく、大量データの中から何かを参照する時でしょう。
 そのためには検索機能が重要になるわけですが……ここが問題。たとえば上のN◎VAのルールブックは、特技名の見出し文字が左右に離れてるのでテキスト本文と認識してくれず、検索で引っかからないことが多いことが多いんですね。一旦特技や装備類を全てテキストデータとして全部抜き出して、辞書として使うのが最強かもしれません。


 中の人たちも知ってるのでついでにやっちゃえということでもう一つ例。2011年夏コミで読み物としては評判のよかったN◎VAリプレイ同人誌『グッバイ、ヒューマニズム』のWeb公開版のPDFを開いたところ。キャストヒロイン(笑)のフィオリーナタンのイラストが写っているP24〜P25です。見開き2ページ分がPDF上の1ページになっているので、iPad横置きでもそのまま読むのはちょっと厳しいですね。ちょっと拡大してから上下左右4か所に移動が必要なので、最初から1ページづつ読んでいくタイプの文字情報には手の操作が追加で手間になります。これも1ページがPDF上の1ページだと、iPad縦置きで丁度良いぐらいになるでしょう。


 という訳でGoodReaderからのテキスト/PDF参照でのGoodなシナリオ進行を試行したのですが……以下にまとめます。

Goodな点

★かさばらない。ちゃんと書いたシナリオだとA4で20数枚になり、TRPGセッションの卓の机の上でもけっこう場所を取ります。ベストは横の予備の椅子なりの上に置いておくことですが、これも内容をシナリオ/情報項目/データなどで区分けして使っていると、だんだん混ざってきてページ順がめちゃくちゃになることもありえます。電子データではこれは起こらず、スクロールや画面遷移を行えば目的の情報には必ず辿りつけます。セッション後に急いで脱出の必要がある際、シナリオの紙はページ順がめちゃくちゃだけどとりあえずクリアフォルダに突っ込んでりだつんなう……なんてシーンもありえますが、タブレットPCなら本体をカバンにしまうだけです。


★紙媒体が受けやすいダメージを受けない。TRPGシーンでは飲食が伴うのでたまに、ジュースなりをこぼしちゃって紙がアァァ...(;゚Д゚) になることがあります。紙の束に掛かると複数枚まるごとダメージを受けてさらにショックですね。(N◎VA界隈では世界設定で過去に世界を滅ぼしかけた大災害の名に引っかけて、よくウォーターハザードと呼ぶ)
 電子データはこのウォーターハザードの被害を受けません。じゃあハードウェアとしてのタブレットPCに水が掛かったらどうするのかというと、そもそも超精密なコンピュータであるタブレットに水掛けちゃアカンのですが、これは置き場所に注意することで回避できるでしょう。


★他の情報も同時に参照できる。上のようにルールブックなどのサイズが大きいPDFについては難ありですが、慣れれば手早く他の情報も参照できます。たとえば僕は全てのセッションごとにBBSなどでの準備(N◎VA方言でプレプレアクト)での書き込み、シナリオ情報、キャラ情報などをテキストデータで保存しています。これらもGoogle Docsなどから読みこんでおけば、その場でタブ切り替えでGood Readerから参照するのもすぐです。事前提出されたキャラクターの設定テキストにはあったけどPLサイドからの自己紹介で足りなかった分をGMサイドから補足したりするのも簡単です。


★他のアプリもすぐ呼び出せる。これはOSが用意している機能が少なく、アプリの組み合わせで幾らでも機能が拡張できるタブレットの強みですね。
 試行の際は画像表示用にiPad、手元のシナリオ参照用にiPad2の2台構成でしたが、手元の端末でもさっとアプリを切り替えれば、画像を見せたり電卓で計算したりも可能です。僕のiPadWi-Fi版で外出中はネット未接続ですが、オンラインならここでSNSを見たりTwitterでセッション実況中継ツイートをしたり、さらに色々できるでしょう。というわけでシナリオのタイトルロゴ集にさっと切り替えてみました。

 飲み会などで受けやすいネタ系アプリはiPhone&iPadAndroidもいろいろあるので、休憩時間などにこれで遊ぶこともできます。TRPGクラスタ界隈で初めての人には、ダイス系アプリを見せると大抵受けますね。


Badな点

★常に手で持っていると若干重い。プレゼンテーションのコツのひとつは、相手に対してオープンな姿勢を取り、言葉だけでなくアイコンタクトやボディランゲージを交えて情報を伝えること。かの伝説的なスティーブ・ジョブス大先生も非常に見事なプレゼンを魅せてくれます。
 僕もこの原則に従ってゲームマスターするときは身振り手振りを交えます。この時、左手にiPad2を持っていると……重さを感じるiPadの1に比べるとだいぶ感覚的にはよくなりましたが、A4の紙の束に比べるとやっぱり重いですね。3G回線ありなしで違いますが、iPadWifi版はiPadが680g、iPad2が600gで厚さも66%に減少。Androidタブレットはさらに重く、600g台〜700g台。この辺は慣れと、必要に応じてテーブルに置いたり、そして今後の新商品に期待でしょうか。iPadの1はソファや人の膝を想定して背面が丸いので置くときは注意ですね。


★たためない。身振り手振りを交えて色々やっていると、情報源の大きさを変えたくなる時があります。紙だとちょっと丸めたり、新聞紙みたいにしたり、手元でPL側から隠すように上半分をGMサイドに向けて折ったり……。
 タブレットPCだとこれができません。これは仕方ないですね。ぐにゃっと曲がる不思議素材でなおかつ表面に何かが写っているステキデバイスは、SF映画などだと時々登場しますが、ある程度未来の話でしょう。
 特に、プレイ会場が狭いなどでGMの周囲に確保できる3次元空間が狭い場合に影響を受けます。周囲がうるさくてGMサイドもPLサイドも身を乗り出して頭を突き合わせて喋り合う……なんてシーンで自分の顔のそばにタブレットがあると若干邪魔です。
 試行ではこうしたシーンが発生し、後で確認したところ(汚い話ですが)セルフ唾がやはりiPad2表面に飛んでいました。まあ当然保護フィルムは貼っているし拭けばよいのですが。

 奇想天外なデバイスもあるAndroid陣営では、ぱかっと二つ折りできる面白いものもあります。このSony Tablet Pも面白いのですが……この大きさのデバイスで長文シナリオを参照するのは若干辛そうです。


★ある情報のかたまり全体を俯瞰する速度が紙に負ける。具体的に言うと、紙にぱらぱら目を通しながらシナリオ全体とセッションの現在状況を踏まえつつ、「そのキャラがこれをやるまでに調べられる情報項目はこれとこれだよ」「この段階であと控えているイベントシーンはこれとこれだよ」「じゃあ次は誰それのシーンにしよう」と、手を動かし頭脳が思考しつつさらに喋って場を繋げるようなシーン。シーン描写なり情報項目なりのテキスト本体は電子データでもすぐ参照できますが、全体を見渡す速度は紙に負けます。
 実際のTRPGセッション中を振り返っても、PLサイドが何か言ってきた時の回答のタイムラグや、シナリオ全体を俯瞰したうえでの誘導にいつもより時間が掛かったなと思います。
 これは……今回の試行で2段組のPDFもなかなか行けるのが分かったように、ページ全体俯瞰→拡大で改善できるかもしれません。
 ひとつのファイルのテキスト情報をページ分割して並行して見る、ひとつの情報を複数フォーマットで並行して見る、しおりを使う、目次を出すなど、何か全体を俯瞰できる工夫があったほうがよいなと思いました。


★激しくページ移動しての参照は紙に負ける。これも上と同じような問題ですが、複数ページを頻繁にいったりきたりしての参照速度は紙に負けます。
 具体的に言うと戦闘中などです。登場するNPCやモンスターなど、複数ユニットのデータ参照がページをまたいで発生することはよくあります。
 これは元から予想できていたので、今回の試行でも戦闘中は紙に切り替えていました。


 こんな感じでした。まとめると、慣れが必要ですがiPad2なら割と行けそう、今後に期待という感じでしょうか。単体アプリとしては画面分割もしくはタブなどでの複数の情報の同時参照がキーになりそうです。
 実際のTRPGセッション(アクト)の方では紙よりも若干手間取ったものの、シナリオ電子化第1回の試行は無事終了。アステールの宝珠第5次飛行はいつも通りの大団円を迎えることができたのでした。


 ひよこPとTwitterボットのしゅうまい君と一緒に裏を写した図。アルミ切り出しのiPadの滑らかな背面の美しさは有名です。プラスチックのシェルで保護していますが、この試行の日でいくらか傷が増えた気がします。やはりセッション会場が狭い時、GM席の領域に十分な広さが確保できない時などは注意が必要ですね。
 ちなみにApple公式のオンラインストアiPadを買うと、レーザー刻印で好きな文字を入れてくれます。しゅうまい君の左側に小さく写っていますが、僕のは「Looking for the Future.」と入っています。 (*´ω`*)



今後の展望

 世界レベルでは現状、単体でiPadに太刀打ちできるAndroid端末はなく、いろんな端末が合わさってどうにか対抗しているというのが大方の見方です。SamsungGalaxy Tabが最もiPadに迫っているともいいます。
 国産日の丸企業では目の付けどころがSHARPすぎたシャープの『GALAPAGOS』は独自進化を遂げる前に絶滅という、洒落にならない終わり方で1年たたず9月末で発売中止。ソニーが2011年9月にいよいよ発表したSony Tabletも当初は海外からの評価が厳しく苦戦した模様。

 僕も店頭で触ってみたのですが、メモリ1GBだけあってなかなかサクサクと動きます。ユーザーインタフェースもVAIOシリーズが備えているような、あのソニーっぽいかっこよさが健在でけっこういけるんじゃないかなと思いました。国産メーカー勢もがんばってほしいですね。
 あれだけAndroid auを宣伝してiPhoneをdisりまくっていたauがなんとiPhoneに転向、10月にはジョブス不在のAppleがいよいよiPhone5を発表する中で、iPadの真のライバルともいえるAmazonKindle Fireがアメリカ国内ではなんと199ドルの低価格でいよいよ登場。

 タイミングが同じでソニーには不運ですが、ソニーも既に北米では展開されている電子書籍端末Readerの新モデルを発表しています。

 そして完全に出遅れたWindows Phoneにはもう未来がなさそうなMicrosoftも、2012年発進の次期Windowsは完全タッチパネル対応することが分かりました。搭載のIEFLASHプラグイン未対応ということで、ネットの世界全体がHTML5の方向に向かうことも考えられます。

 一方Appleも2011年はいよいよ10月4日〜5日(?)にiPhone5を発表し今年はこれで盛り上がるでしょうが、来年2012年にはほぼ確実にiPad3が出るでしょう。メモリは512MBから(おそらく)1GBクラスになるでしょうし、iPad/iPad2で変わらなかった画素数1024x768も(おそらく)今度こそ大幅に向上して今以上に綺麗な画像が見られることになるでしょう。

 例のキャズムの溝というムズカシイ話では、タブレットPCを現在使っているのはまだまだイノベーター&アーリーアダプター層ですが、人類全体の未来を考えると、モバイル化、タブレット化、電子書籍化の波は確実にやってきます。映像作品の中でも同じで――たとえば2011年上期で人気だったアニメの『TIGER&BUNNY』は、作中で明らかにタブレットPCやタッチパネル式のコンピュータを触る場面がでてきますね。
 SF世界のTRPGなら作中の未来世界に一足先に追いつくために、あるいはファンタジーが舞台のTRPGでもデジタル&アナログのミックスを活かすために、そろそろスマホタブレット系の電子化に手を出すのも乙なのではないでしょうか。
 それでは驚異に満ちたよいデジタルTRPGライフを!ヾ(´ー`)ノ