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実シナリオにおけるチューン手法実践:『こんなにも青い空の下で』


 さてシナリオ供給の環境が整ってきた昨今、ルールブック付属やシナリオ集、ネット上のコンテンツや同人誌、既存のシナリオをGM/RLするシーンも増えてきました。そんな時にシナリオを読み込み、若干の改造を行うこともあるでしょう。アレンジやチューンと呼ばれるものです。
 主にこれからGM/RLのスキルを上げたいと思っている方向けに、そのチューンのポイントを述べていこうと思います。
手法を論ずるならば実践が一番。ということで題材は……システムは『トーキョーN◎VA The Detonation』、2009年5月の連休に僕がRLを行い、十分な成功を収めた、同人誌『ZZZ vol.3』(2008年08月16日発行)収録作品『こんなにも青い空の下で』(略称“こん青”)を実例に取りたいと思います。
 元シナリオは原案はライドさん、作成はSONEさん、イラストは鶉衣さん。同人誌総括はジニアさんとなっております。
 以下にいろいろ述べていますが、製作陣の名誉の為に言っておくと別に元のシナリオがダメだと言っているわけではないのであしからずでございます。

 ちなみに2009年夏コミケで沢山シナリオ集が出るのを目前に控えた今になって何故執筆したかというと……実は前から書こう書こうと思って自分用ToDoには上がっていたのですが、僕が別のシナリオを創っていたために遅くなってしまいました。てへ。


公開シナリオの宿命:そこには、文字数制限がある

 これはオフィシャル、そして同人誌掲載シナリオでよく見られるシーンです。ボリューム上の制限は必ずあり、そのせいで泣く泣く削っていることはよくあります。FEAR系システムのオフィシャルシナリオでも、内容が溢れて左右のハシラにも注釈があり、むしろハシラに書いてあることの方が本体だったり大事なことだったりする……なんてことはよくあります。
 そうして削られたりしてボリュームが淡白になっているところを如何に膨らませていくかについて、如何に述べていきます。


まず、ちゃんと読む

 当たり前ですがシナリオは事前にきちんと読みましょう。ランダムイベントしかないシナリオならともかく、さっきコミーケで買ってきたシナリオを今開いて……で、質の高いセッションになろうはずがありません。
 キーワードはどれとどれ、全体のプロットは、バックグラウンドは、ゲストは何人いて誰が何をしているのか、キーワードやゲストの互いの関連は、シナリオの話の流れは……。
 RL/GMがシナリオを完全に把握していれば、自信にも繋がりますし、様々な選択でも正解を見つけやすく、そして本番でもセッションのクォリティを高めることに繋がります。
 ライフスタイルで時間に余裕があり、プレイ頻度が高ければ前日に読んでおいたりすることもあるでしょうし、もっと前から少しずつ準備するスタイルもあるでしょう。

実例:
 連休連戦“こん青”チューン版は、要員確定、プレプレアクトBBS開始から当日まで約10日掛かっています。約1.5週ですね。メンバーは全員社会人です。
 筆者も並みの人間よりは忙しい部類に入りますので、遊ぶシナリオ確定→BBS開始までの間に先立って、通勤電車の中などまでも利用してシナリオを完全に読んでおきました。プレプレアクトの時点で、各導入枠にスタイル以外にどんな特徴を持ったキャストがお勧めか、逆に向かないか、膨らませた部分も含めた主要ゲストの紹介、シナリオ全体のイメージも提示しています。これらがスムーズな進行とキャスト確定に役立ちました。

シナリオ本編以外の情報があれば、把握する

 昨今はWebサイトでのPDFでのデータ提供やサポートページなど、同人誌などでもサポート環境が充実してきました。存在するならば、これらも利用しましょう。

実例:
 “こん青”は、Websサイト上にトレーラー&ハンドアウト、イラストが掲載してあります。オンライン上のBBSで準備するならばこのURLを情報のポインタとして提示しておけば済むわけです。特に、口絵のイラストが一緒についているのが大きいですね。一枚の絵は文章よりも多くのものを語ります。
 そして……なんと同サイトに、“こん青”のエラッタも付いています。これは感動しました。w プレイヤーが見てしまうと一部ネタバレになるかもしれませんが、RLサイドならばこれも事前にチェックしておきましょう。

シナリオ全体のイメージを考える

 シナリオの題材は何か、主なプロットは、訴えられているテーマはあるのか、雰囲気は。これらはトレーラー&ハンドアウトやイラストなどの事前情報からはっきり読み取れることもありますし、シナリオ本編に書いてあることもありますし、通して読んでから意を汲み取る必要がある場合もあります。GM/RLの貴方がチューン分として特に強めたくなったイメージもあるでしょう。
 いずれにせよ、これらも事前に把握しておくと役に立ちます。

実例:
 作者の特徴を知っているからできる邪推ですが、“こん青”は何をする話なのかはトレーラーにストレートに押し出されており、明確に読み取ることができます。原作者の性格からしても間違いないでしょう。
 そして何より口絵のイラスト。ガラス管の中で救いを求めるょぅt゛ょ……いやもとい少女。この1枚の絵を一目見ただけで、どんな話か大体見当がつくでしょう。うーんN◎VAの定番だ。なんという直球。そこにそこにシビれる あこがれるゥ!
 (オホン)また、シナリオ作中には明確には書いてありませんが、通して読むと、作中のシーンはずっと雨で統一、そしてエンディングでやっと晴れて青空が見える……という流れにすると絵的に非常に美しくなるのが読み取れます。これはプレプレアクトの時点でもPL陣には伝えておきました。


「降りしきる雨の中、そこだけ雨が弾かれていくぼやけた輪郭の不気味な影が徐々に輪を狭めていく(光学迷彩を使っていることの描写)」
「小雨が降りしきるストリートで、キャストの目の前でゆっくりと冷たくなっていく男」
「喫茶店のガラスから外を見ると雨の降りしきる通り、そしてレインコートを着てガラスの向こうに美少女のキャストが立っている」
などの描写をアクト中に強調することで、より情感を強めることができました。うーんSF映画の不朽の名作『ブレードランナー』の酸性雨のロサンゼルスみたいですね。

キーワード情報を増加させる

 比較的淡白なシナリオを味付けしたい時にお勧めなのがこちら。
プレイヤーはGMが期待するほど賢くない、覚えきれないので固有名詞を増やしすぎてはいけない……というのはマスタリング/シナリオメイキングの基本かつ鉄則。これは事実であり否定はしません。
 とはいえ、何もないのは寂しいのも事実。「なんかすごい計画」よりは名前があった方が雰囲気が出るでしょうし、「とにかく強い敵」よりは名前があった方が様になるでしょう。
 こういったネーミングの類は創るのが得意な人も苦手な人もいますしセンスにも左右されますが、場合によっては補強するのも役に立ちます。サスペンスや緊迫感、見えない強大な敵の不安感や謎めいた神秘さを出したい時に有効です。

実例:
 “こん青”のシナリオ背後では、とある巨大企業のゴニョゴニョな計画が蠢いています。チューン版では名前がついていました。
 日本本土からやってきたゴニョゴニョが統括指揮するこの超極秘計画の名は……『マルティエル計画』。マルティエルとは即ち、聖書偽典エノク書に記されし雨を司る天使の名。大気中に速やかに広がるゴニョゴニョを雨によって広範囲に拡散させ、この不吉なる滅びの天使は何をもたらすのか……!(どどどーん)
 てな感じでちょっと膨らませるだけでも、ずいぶん雰囲気が出るものです。実際の計画ロゴは作りませんでしたが、シナリオ本編を暗示する一番最初のシーン、赤い警告灯の回る研究所の大スクリーンにはこのマルティエル計画の名がどどーんと表示されていたのでしょう。くそ、なんかNERV本部みたいでみたいでカッコイイだろ!(バン バン バン

情報の形容を増やす

 こちらも比較的淡白なシナリオや短いシナリオにお勧めです。上の計画名のような重要なキーワード情報や敵ゲスト、敵部隊、新技術や強力アイテム……などを描写したり説明するのに形容詞を増やし、よりそれらしさを高めると雰囲気が出ます。
 データを強化するだけが強大な敵を表す方法ではありません。形容と描写を強め、徐々に徐々に雰囲気を盛り上げていくだけでもずいぶん効果が出るものです。データでない言葉の魔力というやつですね。

実例:
 ちょっとネタバレですが、この同人誌『ZZZ』シリーズは情報項目を調べていくと敵ゲストのブランチまで分かるという、分かりやすいストレートな作りになっています。筆者はもう少し婉曲的に遠回しに匂わせる方が好みであり、PL陣にも推理して考えて欲しいので、このへんも描写に入れ込む形を取りました。


「無骨で陰のある寡黙な男性だが、その実かなり腕の立つウィザード級職業ハッカー。企業世界の利潤の谷間を、どこにも属さずに独力で渡り歩いてきた。非合法なビズでかなりの金を稼いでいるはずだが、暮らしぶりは質素であった。
 自分のことを滅多に話さない男だったが、親しかった君は、確か……彼には死別した妻と幼い子がいたことを知っている」


「天才的なバイオテクノロジーの一人者。過去企業に招かれ、人体実験、人工的に作った生物兵器などの兵器転用の研究を何度も行っている。バイオ倫理法違反、各国での法律違反多数、そのたびにメガコーポの圧力で解放。現在(ピー)社に招かれている。
 自らの科学は芸術と同じであり、科学発展のためなら犠牲という考え自体を放棄するという危険思想の持ち主。国際警察ケルビム及び各国の警察、情報機関によって数年前からマークされている危険人物だ」


「(ピー)非合法部門のエリート指揮官。現場での状況把握と的確な指示に長けたコマンダー。部下に専属のブラックオプ・チームと単独の作戦要員を連れている。彼はこの街では手に入らない高性能IANUSを埋め込んだ、日本本土から来た純血日本人……彼がこの極秘計画の責任者だ」


「北米製の重武装強襲型アーマーギアを駆って戦場を移動、数々の高性能武装とサイバーウェアで個人能力を高めたタイプの優秀な兵士。(ピー)企業軍の通常装備陸軍兵士2個小隊分の絶大な火力を単独で有する。対機動戦車戦から奇襲、隠密作戦、監視、暗殺まで様々な任務に柔軟に対応できる優秀な作戦要員である。
 武装を全て解放した絶大火力による殲滅戦の後には、戦場には何も残らないという……」


「抹殺部隊エリミネイターズとは……(ピーー)精鋭の抹殺チーム。光学迷彩を活用した隠密行動に優れ、目標の存在を確実に抹消する。メンバーと指揮官の密な連携でターゲットを狩り立てる。接近戦/射撃戦双方に通じた彼らの作戦遂行能力は……N◎VA軍の精鋭特殊部隊にも匹敵するという!」


 上は主にミリタリーっぽさで敵が悪で強いことを強調していますが、こうした描写を積み重ねることでも、それっぽさはずいぶん増してきます。

ゲスト/NPCの描写を増やし、印象を強める

 多くのシナリオでは登場人物勢揃いのイラストを再利用して、顔イラスト付きでゲスト紹介が付いています。付属している情報は様々ですが、大まかにしか書いていない場合もあります。あなたの好みで描写を加えましょう。大まかな年齢、人種、髪や瞳の色、服装、雰囲気……。あなたが特に「この人かっこいい!」と思ったらその人の描写を増やしたり出番を増やしたりしてもよいのです。
 また、ゲストデータを事前に把握しているなら、見た目で分かる装備も一緒に紹介するとPLの印象に残ります。「今教えちゃっていいの?」と思うかもしれませんが、どうせアクトがもう少し進めば分かることです。情報は早めに、出し惜しみせず渡すのもテクニックです。

 また、こうして描写を増やすことで、印象を強めましょう。何が善で何が悪か簡単には分からない、灰色の未来世界を象徴するようなシナリオ、人間関係の機微を味わうようなシナリオも存在しますし、筆者もそういう作品は好きです。
 その一方で、短めの作品や淡白な作品には敵味方がはっきりしている作品も多く存在します。筆者が今まで手を加えて実行した他作シナリオにはその系統のものが多かったので、そんな場合は悪はより悪らしく強調するようにしています。さあ、美しき悪の華を咲かせてキャスト共を蹴散らしてやりましょう。
 ルールブックの一節にも「敵は強くて悪いヤツがよい」という極めて分かりやすい一文があります。

実例:
 “こん青”チューン版では以下のような描写を付け加えて紹介/アクト中の描写をしていました。


「国籍不明、小学生ぐらい、大きな瞳と色素の薄い長い髪をした無垢な少女。言葉もたどたどしく通常の社会生活を行っていないのが分かる」


「40ぐらいの無精髭の日系人男性。無骨で陰のある無口な男だが、その実優しい男であったことをあなたは覚えている。カウボーイは常にガジェットを使い、二重三重のバックアップを備えておくもの。彼の連れているクマはハードボイルド口調で喋るのだ……」


「30代の北米人。乱れたシャツに垂れた前髪、ずりおちた眼鏡、身の回りを気にしない典型的な研究者タイプ。良識のたがが外れたいかにもなマッドサイエンティスト


「仕立てのいいスーツに身を包んだ純血日本人のエリート指揮官。自分にも他人にもプロフェッショナルな仕事ぶりを求める、細い目で微笑を絶やさぬ慇懃無礼な男」


 また、紹介時にはイラストを交えて行いました。
RLサイド「彼は高性能IANUSを埋め込んだ日本本国から来た男なのだよ……ほら、この絵の首筋にちゃんと書いてありますよ」
PLサイド「ほんとだ」「高性能IANUSかー」「ふーん」
 こうするとPLサイドは印象を受けます。実際アクト中に、この首筋のゴニョゴニョを狙ったゴニョゴニョ攻撃の描写などが何度も起こりました。


 同様に、
RLサイド「奴は数々のサイバーウェアと高性能義体で能力を高めたタイプのサイバー兵士なんですよ。ほら顔が隠れてるけど目のここ。これは義体装備の“ヘイムダル”で知覚を増強して監視任務とかも全部1人でやっちゃうんですよ」
PLサイド「おお、ほんとだ」「強そうだー」
 と印象を強めることができます。実際にはそんな装備は巻末のゴニョゴニョには載っていなくてもです。GM/RLの仕事はプレイヤーを騙すことです。

ゲストの台詞を増やす

 一人称、二人称を確定する、口調を統一する、同一シーンに登場するゲストは互いに台詞を区別しやすくする、などは定番テクニック。
 シナリオには当然ゲストの台詞も書いてありますが、ボリュームに制限がある場合は、それほどは書いていない場合もあります。ここはあなたの腕の見せ所です。シナリオから得られる情報や類推した情報、あるいはあなたが補強/増強した要素から、その人物らしい台詞を言わせましょう。
 PLが全員初心者で萎縮しがちだったり黙りがちだったりする場合以外は、ゲストがよく喋っても特に問題は感じられないように思います。
命を吹き込まれ、生き生きと動く人物たちの前では、PLもキャストも得てして頑張るものです。

実例:
 “こん青”には、慇懃無礼な丁寧口調で話すゆかいな人物が出てきます。オフィシャルゲストだとかつてのメルトダウン=千早雅之とも似た系譜ですね。ジツは1〜2箇所だけ丁寧口調で喋っていない台詞があるのですが……これは恐らく部下が相手だからなのだろう、と推測し、チューン版ではそのシーンも丁寧口調で統一しました。
 また、このゆかいな人は自分にも他人にもプロフェッショナルな仕事ぶりを求める特徴とハンドルを持っています。そこでこの特徴をさらに強調することにしました。


捕らえられているキャストに向かって:
「不様ですね、◎◎君。実に“プロフェッショナル”に欠けている。
 そんなエフェクト付きのプログラムで我が社の防壁が破れるとでも思ったのですか? そういうのを“アマチュア”の仕事と言うのですよ」


ゲスト同士が電話で会話するシーンで:
「おいおい◎雲君、それじゃあ俺のナイスな研究が台無しじゃないか! で、そのカブトってのは一体どんなヤツなんだい」
「まあまあ。既に私の部隊もN◎VAに展開しています。お互いに“プロフェッショナル”な仕事をしましょう、Dr.レ◎ニー」


キャストに一矢報いられてしまったシーンで:
「くっ……この私としたことが、“アマチュア”な仕事をしてしまったようだ――ここは一旦退きましょう」


無線連絡が入るシーンで:
「(低い男ヴォイスで)コマンダー、こちらサイ◎ント。“フラスコ”を発見した。準備に移る」
「素晴らしい! ミスター・◎ャック。あなたの仕事ぶりはまさに“プロフェッショナル”です。まだ時は来ていない。そのまま監視を続行してください」


部下から連絡が入るシーンで:
「こちら情報部。反日テロ組織からの偽の犯行声明を出します。通常の手順に乗っ取って……真教浄化派にしますか?」
「ああ……いつもいつも浄化派では、面白くありませんね。それは、“プロフェッショナル”な仕事ではない。何か適当に、新しい名前をでっちあげてください」


駒が並べられて戦闘開始のシーンで:
PLサイド「なんだこの陣容は! ヽ(゚∀。)ノ」「おのれジ◎ア!」「おのれS*N*!」「おのれラ◎ド!」
PLサイド「RL! このトループは全員別エンゲージですよね?」
RLサイド「勿論です。――彼らは“プロフェッショナル”ですから(ニヤリッ)」
一同「ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ」


 てなカンジで簡単に笑いを取れます。TRPG『ガンメタル・ブレイズ』が出た後の「スタイリッシュ」のようなものですね。特定の台詞や演出を繰り返して笑いを取るタイプはトーキョーN◎VAのキャストにも見られますが、これは簡単に実践できる例です。他にもキャストにハンドルや設定、特徴があったらそれらもどんどん拾って活かしていきましょう。

シーンの描写を増やす

 これもボリュームが大きくない作品にはお勧めです。シナリオには文字数制限があるので、シーンの描写が少ない場合も、中には単純に読み上げたらもう本当にすぐ終わってしまうような場合もあります。
 チューンと言うよりGMテクニックの部類に入るかもしれませんが、物足りないと思ったら補強しましょう。周囲の情景を描写するもよし、何が起こっているかを身振り手振りを交えて語るもよし、周囲でエキストラが逃げる様を描写するもよし。ゲストの台詞や行動を増やすのも、キャストの行動に反応するのもよし。命を吹き込まれた登場人物たちは、舞台があってこそ踊れるものです。
 咄嗟に出てこないなら、事前にシナリオを読んで考えておくことです。シナリオに書き込むなり、別紙に書いておくなり、頭の中に保存しておくなりして本番で使いましょう。

実例:
 例えば“こん青”チューン版では、以下のような描写が追加されています。


 警告灯の鳴り響く某研究所。慌てふためくスタッフたち。
「おい、ア◎の部屋だぞ!」「馬鹿な。プロテクトは5重に掛かっているはずだ」
「まさか……まさか、ブ◎ーベ◎が裏切ったのか?」
 背後の喧騒をよそに、中央の大きな研究室ではガラス張りの試験管が開いた。音を立てて中の空気が放出される。色素の薄い髪をした少女が、自分を助けてくれた男性を見上げる。
「ブ◎ーベ◎のおじさん……お出かけするの? また、おしごとなの?」
 傷ついた体を堪えて立つ寡黙な男は無言だった。代わりに、胸のクマのぬいぐるみが言葉を発する。
「いや、仕事ではない。ア◎、お前に本当の空を見せてやる。ついて来るんだ」
 大きな瞳の少女とは別のところに視線を彷徨わせ、最後に男は……ぬいぐるみでなく、男は最後に呟いた。
「――愛香。父さんは自分が正しいと思ったことをやる。最後ぐらい、お前に誇れるような仕事をしよう」


 雨の降りやまぬ東京新星市、サンライトロードに集った男たち。
「さあ、ショーを始めよう! いよいよ雨の天使が解放され、滅びは世界へと拡大する。素晴らしい! これこそ芸術だよ。科学と芸術は究極的には同じものなんだ。さあ、オレの大事な芸術品をそろそろ解放しようか」
 恍惚に満ちた表情でうっとりと語る眼鏡のドクターの横で、糸目の指揮官は頷いた。
「各員、こちらコマンダー。マルティエル計画の最終段階に入ります。“サイ◎ント”、聞こえますか」
 柱の上に可変型アーマーギアの金属のボディが姿を現し、眼下に頷く。
「こちら“サイ◎ント”、スタンバイ」
 日本本土から来た男は微笑んだ。
「作戦開始です。“フラスコ”を、割ってください」

「何をするの!放して!」
 薬物を注入され、必死にもがく(ピーー)を、機械の左手が無造作に掴んだ。アーマーギアはその腕を上げ、中空に突き出す。操縦者の機械の瞳には、何も映っていなかった。
 電子合成された男性の声が、静かに告げる。
「こちら“サイ◎ント”。“フラスコ”を、割る」
 機械の左手が動いた。まるで眼下の舞台に花束を放るように、ゆっくりと手を開く。少女の悲鳴が響き、何もかもがスローモーションの中で、“フラスコ”は遥かな眼下へ、ゆっくりと落ちていき……


 筆者は映画ファンなのでドラマチックなシーン、シネマティックなシーンは大好きです。要所要所でこうした描写を補強すると、ぐっと雰囲気が出ます。
 実際のアクトではこの後……カブト役を荷台に乗せた某ケルビム捜査官の車(しかも新車)が真下に突っ込んできて、車と引き換えに(ピーー)を無事救ってがむばってくれました。

ゲストデータを把握する

 近年では多くのシナリオで、戦闘用のゲストデータは巻末に別途整理されて記述してあります。ここも大事なポイント。事前に読んで把握しておきましょう。セッション本番の最中、強大なる敵がいよいよ動く……!というところでRLの読み込み時間がずっと続くと、テンションがかなり下がります。
 一方、すらすらと呪文のように紡ぎ出されるコンボや滑らかな行動は、「こいつらは強い!」という印象を確実にPLに与えることができます。それまでの描写や演出での強化と重ねれば完璧です。
 神業をイベントで使うのか戦闘中に使うのかメモしておく。効果を忘れた特技やブランチがあったら脇に書いておく。アクションの達成値上昇の最終値やダメージ上昇の最終値が書いていなかったら付記して丸で囲っておく。逆に最終値が書いてあったら、どの特技とアウトフィッツの合計でそうなっているか一度計算してみる。優先プロット札の記述を目立つように囲っておく。一番高い能力値に印をつけておく……などなど。
 アンダーラインを引いたり丸をつけたり蛍光ペンで書いたり、方法は人それぞれでしょう。これらの準備は自信や安心にも繋がります。
 もうひとつ、アウトフィッツのデータ上の効果以外にも、そのアウトフィッツが何か、どんな外見かを忘れていたら事前に押さえておくと効果が出ます。特に外見から分かる武器、兵器、メカニック類に有効です。
 例えば、可変型の新型アーマーギアが地上を一瞥して放つ驚愕の射撃戦も、武器がモータルストームかベクターIIIでは描写が違ってくるでしょう。前者は対空/対地30mm機関砲、後者はエリア攻撃可能なミサイルランチャーです。

実例:
 “こん青”に限りませんが、筆者はクォリティ維持の為に大事なセッションのRLをする時には必ず、事前にデータ把握とチェックを行うようにしています。
 “こん青”を始めとするこの『ZZZ』シリーズは、アウトフィッツも常時型/起動型で分けて書いてあったり効果が書いてあったり、サプリメントの掲載ページも併記されていたり、セットアップ、最初のマイナー、メジャー、リアクション、その他と種別を分けて特技コンボが書いてあったり、かなり分かりやすく整理されて記述されている部類に入ります。ゲストの主要行動のパターン数も抑えられていますね。
 その上できちんと把握するために、上のようなポイントについて読み込みを行いました。こうすることで副次効果が出ることもあります。
「あれ、これ書いてないけどこの人は<自我>4Lvを持ってるべきじゃないか?」
「そうするとゴニョゴニョで上がってこのセットアップの(ピーーー)がさらに上がるよ……(*´д`*)ハァハァ」と暗い愉悦に浸れることもあるわけです。w
 余談ですがこういう、あるべき技能がちょっと欠けている、+の合計が間違っているなどの小さな間違いは、オフィシャルシナリオでも昔からけっこうありますね。

ゲストデータを変える

 バランスを保ったり戦闘の趨勢を見極めたりするのには場数や経験も必要なので概には言えないのですが、キャストデータに合わせてゲストサイドのデータを調整するのもよい考えです。
 多くのFEAR系システムではPC側に様々なリソースが用意されているのと同様、N◎VAシステムにも強力な神業ブレークスルーがあります。簡単に言うと、多少ゲストが強くてもだいたい何とかなるということです。

実例:
 本当のことを言っちゃいましょうか。連休連戦“こん青”チューン版、実はゲストデータの直接的な強さは掲載データからほとんど変えていないのです。筆者が強化したのは主に描写面演出面でした。
 元から十分強いデータは特にカット開始直後、PLサイドを恐怖させるのに十分でありました。さすがはSONE=ライド連合軍であります。HA-HA-HA-HA !!


 さてここからは、事前のシナリオチューンではなくアクト自体に工夫したポイントについて、一緒に述べてみます。


ハンドアウトは印刷しておく

 一夜の思いつきで書き上げてmixiに載せたトレーラー&ハンドアウトにどんなにレスが付いたとしても……人間の記憶力は大したことはありません。携帯電話、小型PC、スマートフォンiPhoneなどの高度情報端末でWebアクセスする方法もありますが、電子データはセッション中の参照には限界があります。必ず印刷しておきましょう。
 昔よく見られたのが、PC番号ごとの枠で小さく切って紙片をPLに配布する方法。これはお勧めしません。まず、TRPGセッションは必ず笑いが伴うので、息ですぐ飛んでしまったりなくなり易いこと。そしてもうひとつは、自分以外の導入も把握しておくことも重要だからです。
 自分のハンドアウトだけ見て、自分のキャラクターだけが活躍してそれで終わりの人。自分以外のキャラクター、ハンドアウト、相対するNPC/ゲスト、物語全体を俯瞰して回りに話を振ったり盛り立てたりできる人。この両者の間には決定的な差があり、GM/RLスキルの有無もかなりこの辺りから読み取れます。
 同様のことは他のシーンでも観察できます。例えば大規模なオフ会のプレプレアクトBBS。RLとしか話さず、RLとしかコミュニケーションの線が繋がっていない人。一方、卓の全員とコミュニケーションの線を張り、希望を出す時に他の人の希望を見たり、他の人に話を振ったり、場全体を盛り上げようとする人。両者にはだいぶ差があります。

実例:
 “こん青”やZZZ諸作品は、トレーラーとハンドアウト、PL向け特記事項がB5版1ページにまとめられ、このページだけコピーするとPL向け情報がまとまる形になっています。便利で非常によいことですね。近年はこうしたシナリオが多くなってきました。

イラストは印刷しておく

 分厚いシナリオ集の該当ページを開き、手と下敷きで大事な情報を隠しながらイラストを指して「ゲストはこんなカンジね」と数秒間だけちらっと見せても、人間の強い記憶としては残りません。まあ可愛い女の子のメインヒロインでしかもイラストが綺麗だったらしっかり覚えてくれるかもしれませんが、不確実です。
 人間は手元にあり自由に触れたり動かしたりできるものを認識し、意識を向けるものです。ゲストが集合したイラストがPL陣の目の届くところに4時間置いてあったら、与える印象がまったく違います。
 コピーした後切り取ったり拡大コピーしたりして、RLの聖域から離れたPLのエリアに置いておくと役に立ちます。
 一枚の絵は、一千の言葉よりも多くのことを語る――とは、かつて一世を風靡した海外TRPGの画集に添えられていた言葉ですが、イラストの力は大きいものです。

実例:
 “こん青”も特に中央のおんにゃのこについて破壊力抜群と思われるイラストがあるので事前にコピーし、ゲスト説明にも、アクト中の説明にも使いました。
 もう1枚、こちらも破壊力抜群と思われるイラストがあったのでこちらは終幕、ようやく雨が止むシーンで初めて取り出して出すと、一同から「おおー」と感嘆の声が上がりました。
 筆者はルールブック/シナリオ集のSSS類/同人誌シナリオ、RLする時はほぼ必ずイラストはコピーして使っています。近年はイラストも綺麗な同人誌が増えてきましたね。

おまけ:シナリオ本文も印刷しておくと便利だよ

 これは筆者がいつも個人的に使っているテクニックですが。急にマスターするなどでない限り、シナリオ本文も事前にコンビニでコピーしておいてこちらを実際のベースデータとして使うと便利です。
読み込んだりメモを書き込んだり矢印をつけたりチューン部分やデータ改造を付記したり、綺麗なオフセット本には書き込めないこともコピーなら気楽に出来ます。
 シナリオ本体が記述してある本が分厚いほど、この効果は出ます。実際のセッションでは、身振り手振りや本を持ち上げたり降ろしたり閉じたり開いたりの操作が必ず発生します。GM/RLは何かと忙しいものです。常に特定のページを開いたままマスタリングを続けるより、数枚の紙に情報がまとまっていた方が絶対に楽です。

実例:
 『トーキョーN◎VA The Detonation』ルールブックはそれなりの厚さがあるので、この付属シナリオをルールブックを開いたままマスターするのは不可能ではありませんが、きっと手が疲れますね。
『グランド×クロス』『ストレイライト』『マーダーインク』は厚さはそれほどでもないですが……実体験から言っても付属シナリオはコピーしたものを使ってRLした方が楽そうです。
 まあとにかく、身振り手振りを交えた臨場感たっぷりの本格的なマスタリングをするのであれば、シナリオはコピーしておくと便利です。

ビジュアルに分かるものを用意する

 TRPGGMとPLとが一緒に創り上げる共同幻想のストーリーだと言われます。とはいえ、GM/RLが口で喋った台詞がPLの耳から入る聴覚情報として入力され、頭脳で処理され、GM/RLが考えていたシーンや情景とまったく同じものがPLの頭脳の中で再構築されるかというと……なかなかそうはいかないのが世の中と言うもの。GM/RLの演技力や描写力にもよりますが、こちらはあるキャラクターのモデルをこの作品のこの人物にしていた、このシーンはあの作品のあのシーンへのオマージュだった……はずなのに、情報を受け取った側のPLは全然違うものを連想していた、なんてことは起こります。人間の頭なんてそんなものです。
 上でイラストについて触れましたが、同様に何か目で視覚情報として見て分かるものが目の前にあると、だいぶ雰囲気が違います。セッション中に渡される手紙や小物類、トレーラーやハンドアウトの類を使うシステムなら綺麗に印刷されたそうした紙類の資料や補足情報、イメージが湧きそうな風景画や現実世界での写真、コマやメタルフィギュアなどなど……。
 こうした、俗に言うガジェット類でのビジュアルの補強は準備に手間が掛かる点が難点ですが、テーブルトークRPGならではの+αの創意工夫が活かせる部分です。

実例:
 今までもシナリオに登場する竜をぬいぐるみの恐竜で示すことにしたり、一人二役の演技がありえる自分のキャラクターの相棒のAI竜をぬいぐるみのドラゴンで示すことにしたり、困ったときはこの監督のせいにできる監督のひよこPをぬいぐるみで持ってきたり、悪の機械生命体をトラン◎フォーマーのスタースクリーム様のおもちゃで示したりしたことはありました。
 “こん青”には、シナリオの背景情報の中核を担う重要人物(アイテム?)として青いクマさんが出てきます。クマなら手に入りやすいので、amazonで注文して茶色い毛並みに凛々しく青いリボンを結んだテディ・アダムスJrくん(\1,000ちょっと)を買っておきました。
 テディくんは初舞台で大役を無事演じ終えました。こういう手で持てるサイズのガジェットがあると、身振り手振りを交えてゲストの演技をしたりPLサイドがキャストの演技をしたりする際に、かなりイメージが湧きます。
 N◎VA界隈で一部に人気を博するみこなぎがクマを抱くシーンなども挿入され、動画サイトではマイリス行き直行なども発生。テディくんにはその後、監督のひよこPより功労賞が授与されたのであります。

コマを用意する

 上と被りますが、特に込み入った戦闘、他にはチェイスなど互いの位置関係が重要になる要素が含まれるシナリオにおいては、コマを用意しておくと非常に役立ちます。
 これはシステムによるでしょう。例えば『アリアンロッド』は互いの距離が重要なのでオフィシャルのリプレイでも配置図はたびたび登場し、コマを使ってプレイしているのが分かります。『D&D4e』もフィギュアを使った戦闘進行はもう前提でしょう。
 一方『トーキョーN◎VA The Detonation』は概念距離を使った抽象戦闘なので、コマはなくても遊べるようにデザインされています。しかし、戦闘の登場ユニット数が多くて入り乱れる場合は、用意しておくとかなり進行がスムーズです。

実例:
 事前に完全に読み込んでいたことで、“こん青”の敵勢力陣営は頭数も揃い、範囲攻撃も可能な強力な軍事力を保有していることが分かりました。さすがはSONE=ライド連合軍です。HA-HA-HA-HA。
キャスト陣にも射撃戦闘要員がおり、これは距離の把握が必要と判断してコマ類を持って行きました。
 また、他のセッションで見かけたのでアイデアを借用したのですが、シート類のガジェットが充実している『迷宮キングダム』のバトルフィールドの用紙を下に敷くことにしました。前衛・後衛などで区切られた線を、N◎VAルールの1距離とすると丁度うまい具合なのです。
 結果、かなり込み入った状況になる戦闘もスムーズに進行でき、様々な演出を挟むことができました。

 ちなみに余裕があるなら、コマも実物を連想させるものを使うとさらに雰囲気が出ます。ファンタジー物のフィギュアは典型例でしょう。
 メカニック同士の戦闘が発生するシナリオや、オフィシャルの『アラシSSS』のRLをした際は、筆者は自分分+メンバーが持ってきた分を合わせ、食玩ガンダム系のコマを使いました。あれはかなり燃えましたね。そういえば今、食玩サイズでマクロスのヴァルキリー系のコマがないか探しているのですが、どこかにないですかね。

キャストを把握する

 マスタリングにまだ自信がない、セッションの準備を万全にしておきたい、大事なセッションのクォリティを高めたい場合、事前にキャスト/PCの情報を把握しておくのはよい考えです。
 セッションの直前、誰もが忙しく準備している中でGM/RLにキャラクターシートを出して「今日使うキャラです」と見せるのはよくあるシーンですが、それで全ての情報がGM/RLに分かってもらえる、全てに関して許可がもらえるなんて思うのはPLの贅沢な考えです。
 あのアクションは多分に儀礼的なものを含んでいます。せいぜい見ているのは1キャラクターあたり数十秒。一通り目を通して「うん、いいよ」で終わるのが普通でしょう。実際「全然ダメだから全部作り直せ」なんて付き返す人はいませんし、ダメ出しされてもセッション直前に今からキャラクターを作り直す訳にもいかないでしょう。w
今はネットの時代です。BBSで準備をしたり、Webコンテンツやblog記事、SNSの記事でキャラクターのデータや設定を掲載しておくのもよく見かけるようになりました。
 これらの情報も活用できます。特技の組み合わせやアウトフィッツを調べておけばルールの復習になりますし、アクションの最大達成値やダメージのスタート値を把握しておけばそのキャストの強さも把握でき、データ調整に役立ちます。設定を把握しておけばイベントシーンで活かしたり、ゲストにぴったりの台詞を言わせることもできるでしょう。キャラクターの名前を口に出して言ったり、ゲストがどんな風に呼ぶか思い浮かべておくのも役に立ちます。
 セッション/アクト中にアドリブですらすらと出てくれば楽ですが、できなかったら事前に考えておけばよいのです。こうしたイメージングを重ねることは、マスタリングのスキルアップに繋がります。

実例:
 連休連戦“こん青”はBBSで準備をしており、キャストデータはWebコンテンツ/CGI形式のDB/SNSmixi記事の形で存在していました。
 筆者にとってはもういつも通りのことですが、事前に全情報は概ね把握済みでした。ちなみに情報をまとめるにはオフィシャルのアクトシートではなく、Excel形式の自作の管理シートを使っています。アクトシートが持てる情報は名前、スタイル、余白にせいぜいブランチや性別年齢までなので、粒度が荒いのです。

 このあたりのことは筆者も昔から不思議に思っています。BBSで準備をしているのに、他のキャストの名前も把握できない人がいるのは何故でしょうか? PLのときはあんなにキャスト自慢をして自分がいっぱしのゲーマーであるかのような態度を取るのに、RLに回るとキャストの名前4人分を覚えるのもやっとの人がいるのは何故でしょうか?

最後のアドバイス:困ったらシナリオのせいにする(笑)

 これからひとつマスターをがむばってみようと思っている方への最後のアドバイスはこれにしましょう。
 自分が頑張って創ったシナリオには、誰しも思い入れや愛着があります。これは当然の感情です。筆者も丹精込めて作った作品への思い入れはひとしおです。
 この感情は、まだマスタリングに慣れていない人の場合、余計に緊張したりマイナス面に働くこともあります。
 昨今はシナリオ供給環境も充実してきました。シナリオ作成術を磨くのもよいですが、経験を積みたかったら、こうした既存シナリオをたくさんマスターして場数を踏み、感覚を養いましょう。1つのシナリオを複数回GM/RLしたり、様々な特徴を持つシナリオに幅広くチャレンジしてみるのもよいでしょう。こうした積み重ねはスキルアップに繋がります。
 他作シナリオを回すのは気分的にずいぶん楽です。あなたがうっかりセッション中に話の矛盾点を見つけてしまったりPLが見つけてしまっても、全部シナリオのせいにすれば済みます。PLの1人が愛してやまないオフィシャルゲストがそのシナリオでは死ぬことになっていて実際いたたまれない最期を遂げても、全部シナリオのせいにすれば済みます。これは明らかに無茶振りなんじゃないかという話の展開があって、実際振られたPLとキャラクターが驚いていても、シナリオに書いてあるんじゃあ仕方ありません。いやー楽ちんですねー。どうですだいぶ気分が楽になってきたでしょう。w
 ある程度経験があって分かっている周囲の賑やかし役のPLはこういうシーンにおいても、「シナリオに書いてあるんじゃあしょうがないね」「ですよね〜」と大抵話を合わせてくれるものです。

実例:
 ちょっとネタバレですが、“こん青”では、さる重大なシークレットを宿したクマさんに向かって神業のゴニョゴニョを撃つことになる重要なシーンがあります。
 心の眼でシナリオを読めば、ここはクマさんに話しかける演出を入れるべきでしょう。この意をよく汲んだ監督のひよこPのぬいぐるみが動き出して、
「《真実》を使う場合は、クマさんに話しかけないといけないとシナリオに書いてあるのだ」
と宣言。相手PLは嘘だ!無理がある!と抗議していましたが、周囲のPLは全員みなよく“分かっている”面々ばかりだったので、
「いやあ〜シナリオに書いてあるんじゃ仕方ないですね〜」「ですよね〜」
と同調。
 結果、みこなぎ(17歳♀)がクマさんに向かって話しかけるというリプレイのカラー口絵イラスト向きな1シーンがこのアクトには挿入されました。
 ぬいぐるみのテディくんにはこの功績によって、後ほど監督のひよこPから功労賞が送られたのであります。


 え、ほんとにシナリオに書いてあったのかって? フフフ貴公の問いは愚問というものぢゃよ。頒布\600のこの同人誌をなんとか入手して確かめたまえ。残部の方は不明だ。
 しなりおというものはただ読むのではなく、心の眼で読むものなのぢゃよ。精神を研ぎ澄まし、知覚を拡張させ、想像力の翼を開き、第三の目をもって読んでみたまえ。さすれば貴公の望む言葉は、かならずや行間に書いてあるだろう。
 フォースの共にあらんことを。HA-HA-HA-HA !!


 以上でチューン手法実践記事はおしまいです。それではよい冒険を!ヾ(´ー`)ノ


ZZZシリーズ新作

 今回題材とさせて頂いた同人誌ZZZシリーズは、2009年夏コミでも新作シナリオ集『サムライ マスト ダイ』が出ます。5つの枠全部がクグツのALL後方処理課のアツすぎる導入。敵が死ぬほど強いと既に噂になっています。w
 うーん後方処理課版バジリスク風な口絵イラストが熱くそねっていますねー。こちらもどぞお買い上げください。

この記事で触れた、連休連戦ライドオフ“こん青”チューン版に関するプレイ記録

 なお、このアクトを一緒に遊んだきたみちもどるさんが先日急逝したとの知らせを受けました。
 図らずも僕にとっては、この“こん青”が最後に遊んだ機会となってしまいました。再度、ご訃報に接し謹んでお悔やみ申し上げると共に、故人の思い出を残す意味でもこの記事を掲載します。