Rのつく財団入り口

ITエンジニア関連の様々な話題を書いているはずのブログです。

『ハーモニー』読了

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 死去した伊藤 計劃氏の2010年代国産SFの文句なしの傑作のひとつ。遅いですが『虐殺器官』に続いて最近読みました。
 舞台は虐殺器官で描かれた戦争の数十年後。戦争後の大災厄を乗り越えた先進国各国はもはや政府でなく、生符(ヴァイガメント)と呼ばれる統一勢力に。人類各自が生命を存続させることを至上とする生命主義の時代。人類はみな体内の監視/調整装置をインストールし、体に有害なものは全て取り除かれ、老い以外の病は全て根絶された時代。酒や煙草はもってのほか、プライバシーという言葉の意味も変わり、行過ぎた優しさと幸福が世界を支配する時代。
 ディストピア的な未来というと管理された未来が定番テーマですが、こういうユートピアかつディストピア、現実の医療社会の先にもしかしたらあるかもしれない薄気味悪い未来が斬新です。街には柔らかいピンク色の建物、軍の装甲車両もピンク色、皮肉なことに体に有害な前世紀の楽しみである一服を楽しむには、中東などの紛争地域に行くしかない。

続きを読む