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「なん……だと……」×20回:ZZZ『大地の子』

「だから、その子をこちらに渡してくれないと私が困るのです!」

 状況は緊急の度合いを増していた。目の前には、読み上げ可能なカンペを手に、一方的乳幼児奪取の了承を必死に訴える可哀想な女の子。頭脳の方が少々弱いと見える。そしてその奪取対象の赤ん坊は、彼の腕の中から離れようとしない。
 そして周囲には、異形のヒルコの戦士たちがわらわらと現れ、可哀想な女の子に同調するようにゆっくりと近付いてくる。完全な敵性体。だがその戦士たちは小さく、旧世界のゲームに登場するピ◎ミンのような何ともいえない外見は……真面目に戦うには忍びない、戦意を喪失させるに十分な姿であった。
 即時行動が必要だった。赤ん坊の存在が負荷になるが、全力で敵勢力を排除すべきか。小火器のフルオート掃射か黒銀の魔剣で稲妻の如く打撃を浴びせ、戦うと見せかけて直ちに敵手及び敵地脱出行動を行い、定めた合流地点に急ぐか。それとも、真面目に戦うにはあまりに忍びないピク◎ンたちは、1、2発殴り付けるぐらいで分かってもらうか。そして、何をしても分かってもらえそうにない可哀想な女の子は……
 その時、状況に変化が生じた。ストリートの戦場にすべるように現れたのは黒い高級車だった。彼がコードネーム“フラットライン”として知る若いエグゼクティブの娘の車だ。
 防弾完備の堅牢なガラスがパワーウィンドウで開き、中から顔を覗かせた人物がいる。コードネーム“グレムリン”。ストリートで電気屋を営んでいるミュータントの少年。幸いなことに新たな敵性要員ではなく、直で会ったことは少なかったが旧知の人物であった。
 少年は、まるで欲しがっているトランペットを見つけた黒人の少年のように、顔を輝かせて周囲に聞こえる恥ずかしい大声で言った。

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