読んだのはしばらく前なのですが記念に感想をば。
「普通のやつらの上を行け」……キャッチーな帯の宣伝文句がそのまま当てはまるハッカーの自伝・エッセイ集。
後にYahoo!に買収された初のASP(ASP.NETでなく、アプリケーションサービスプロバイダのほう)ベンチャー企業の創設者、天才LISPプログラマーにしてスパムメールのベイジアンフィルタの理論の生みの親、本物のハッカーのポール・グレアム氏のエッセイ集です。ネット上でも無料公開されています。
この本、プログラマ・エンジニア向けおすすめ本や成功したベンチャー企業の経営者に聞く影響を受けた本などにめちゃくちゃよく出てくるのですが、未読だったので改めて本で読みました。
かなり挑発的でもあるので人によっては向かない感もあるのですが、自分的には「何これこの本面白REEEE!!」と脳内で標準出力に出したくなるぐらいの当たりでした。おすすめ本頻出なわけです。
実に刺激的でエキサイティング。冷静になってみるとかなり極端な意見や過激な意見もあるのですが、支離滅裂ではなく主張は首尾一貫、論旨は明快、話は痛快、ソフトウェア工学のみならず西洋史や美術の豊富な知識を元に根拠や大胆な仮説、分かりやすい比喩を交えながら、ハッカーらしい軽妙な口調でスッと頭に入ってきます。この人は物凄く頭が切れるんだなあというのがよく分かる。日本語訳もかなり読みやすいです。
あとがきに原文の話があり、
ポールの文章は、3つの点で最適化されている。明快な主張、分かりやすい言葉、そして素晴らしいリズムだ。彼の文章を読んで心が浮き立つのは、その内容だけでなく、文章の完成度の高さにも依っている。そのような文章を日本語に翻訳するのは、アーキテクチャ向けにかりかりに最適化されたプログラムを別のアーキテクチャに移植するようなものだった。
とある程度コードが書ける人にだけ分かるような喩えがありますが、何となくその気持ちが分かります。おいどんなんぞはハッカーとは対極のただの職業エンジニアですが、普段は眠っている脳の奥底の野生の部分が覚醒し、ふだんとは違うことをひとりでに考え始めるような、そんな何とも言えない疾走感・トリップ感のようなものを受けます。
- 作者:ポール グレアム
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 単行本