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【感想】SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

 エンジニア向けの仕事・生き方・ライフスタイルの啓蒙の書では最近話題になったジョン・ソンメズさんの本。エンジニア向けの啓蒙というよりエンジニア向けの総合ビジネス書、サバイバル本的なになっています。内容は多岐に渡り、スキルアップなどお馴染みの内容からから転職時の自分の売り込み方や謎の不動産推し、恋愛や筋肉のつけ方までに渡っています。1行1行のコーディングテクニックのような話はなくもっと粒度が大きめ、章の中の話が1ブログエントリぐらいの長さなので気軽に読めます。作者さんの技術的なメイン領域が最初は.NET系というのも珍しい気がします。

 前書きや日本語版あとがきにあるように、こうした啓蒙本は読む人にマッチするところもマッチしないところもあるし、国による文化の違いもあるんですね。そこを含めて読者が色々と考えるところにも意味があるのだと思います。

 僕個人も「第3部 学ぶことを学ぼう」の学習方法やスキルアップの心構えとか「第4部 生産性を高めよう」の集中の仕方とかは非常に参考になったのですが、がらりと内容が変わってくる「第5部 お金に強くなろう」の不動産推しなどはマンション経営はアヤしい勧誘電話ぐらいしか縁がないし、肥満も縁がないから無理して走り込むこともないよな……とフィットしない話もありました。日米では法律なども違うし、日本人の読者にはそぐわない話もあると思います。(いかにもアメリカっぽくて読み物として読むには面白い話もあるのですが。)

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

 後半で自伝が語られる作者のソンメズさんの経歴も面白いですね。なんと一時期モデルをやっていたいう写真はキリっとしたイケメーンだし、有名大企業で働いてた時期もあれば目標を定めて確実に実行し、ソフトウェア開発で成功して30台前半で早期リタイア、自分の為に自由に働くライフスタイルをゲットしています。

 自分の考え方までプログラミングして望む方向に寄せ、ロボットのごとく目標を達成するめちゃストイックな人ですが、じゃあこつこつ堅実に地道に生きるタイプなのか……というとさにあらず、収入は投資に回してハイリスクを冒して不動産で何回も失敗した先に成功して家賃収入だけで生きていける暮らしを得たり、大胆です。アメリカには色んな人がいるものです。

 この、収入の目処が立った途端に会社を辞めちゃうあたり、仕事も単に金を得る手段と考えてるのかなーと意外でした。企業の中で上を目指すとか先鋭化するとかの道もあると思うのですが、この人の価値観だと違うんですね。(この辺の話は、僕自身はどちらか言うと『情熱プログラマー』に書いてある事の方が共感度が高かったです。)

 途中、作業の集中や時間の使い方の話でテレビはきっぱり否定していますが、集中を妨げる源に電話やメールチェックと並んで、FacebookTwitterの話が時々出てきます。アメリカでも(というか世界中でも)、やっぱり同じなんだなあと思いました。作者さんもこれらに心をよく奪われることを率直に書いており、こういう、自分も読者と同じなんだよと共感の姿勢をもって書いてあるところはよいですね。

 あと控えるべきターゲットにゲームが挙げられてるのですが、その割にゲームの話が時々出てきたり、若い頃にマジック:ザ・ギャザリングをやってた話が出てきたり、ソンメズさん実はけっこうゲーム好きなのでは?と思ったりしました。w

 株や筋肉はともかくとしてキャリアの見つめ直しや仕事の仕方やプロの姿勢、学習方法など、一般的な話は日本のエンジニアにも興味深く役立つと思います。『ITエンジニア本大賞2017』のベスト10入り、読む価値は十分あるでしょう。

転職サイトの@typeに作者さんのインタビューが載っていますね。 type.jp