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【映画】【感想】今更だけど全集中して『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を観てきたよ

ブームに便乗していくスタイル…

 あけましておめでとうございます。昨年12月の子育てエンジニアAdvent Calendarに上げた【生活】コロナ下での子育てエンジニアの日常 は、はてブに加えはてなブログポータルに載ったこともあり多数のアクセスありがとうございました。
エンジニアリング以外の記事を書くと受けやすいという現象を確認したので(おい)、新年2発めのエントリは趣向を変え、話題のアニメ映画を見に行った感想や考察を適当に書き殴ってみようと思います。2020/12/28付で興行収入324億、『千と千尋の神隠し』を抜いて歴代興行収入1位に立ったことが発表されましたね。

www3.nhk.or.jp

 公開直後に観に行った猛者に聞いたら鬼滅ファンの熱気が結集して会場はかなり密だったそうですが、12月半ばの平日11時台に観たので客足1/3ぐらいでだいぶ空いていました。新宿のIMAXシアターで快適に楽しむことができました。
僕は鬼滅は地上波アニメ放送時に全部観ていたのですが、Netflixで最後のあたりを復習、原典の漫画は全23巻の無限城編のラストバトル序盤の17-18巻あたりまで読了、Youtubeの予告編などなどもしっかり観て、万全の態勢で全集中して観ることができました。
(注:以下ネタバレありです)

kimetsu.com

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

映像化に向いたストーリーを見事に劇場アニメ化

 原作では7−8巻に当たるこの無限列車編を読んだ時に思ったのは、あー映像にするのに丁度いい話を構成上もうまいこと持ってきたなーということでした。大正ロマンな感じに大地をひた走る蒸気機関車、閉鎖空間でのドラマ性、時間と空間を超越して描写できる夢の中、数々の名作映画でも描かれてきた疾走する電車の中での対決、登場人物の数も少なめで単体で理解しやすく、主役陣には全員に行き渡るようにアクションの見せ場あり、夜から夜明けまでの緊迫した一夜の物語…
 原作は最初は孤独だった炭治郎の旅に仲間が増えて話も明るくなり、鬼殺隊の柱が登場して人気急上昇、蝶屋敷組の女の子たちも揃って二次創作のイラスト界隈も盛り上がり、アニメ版ではアクションの後の負傷からの回復と話の広がりの場面を最後に尺をとりつつ、最後に次の任務で列車に乗り込んで劇場版をチラ見せして終わりという、ニクいところで終わっていました。

 流石に定評のあるufotable、アニメ版もそうでしたが漫画のコマに書かれていないようなところをうまく補完しつつ、ファンサービスもふんだんに盛り込みながら見事に映画化しています。ずいぶんリソースを投入してお金かけたんだろうなあと思います。


劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編第1弾 2020年10月16日(金)公開

夢の話

 前半の山場である、計略に陥って夢の中の心象世界で自分の過去と向き合うシーン。どこかの映画評でも拝見したのですがノーラン監督の傑作『インセプション』ぽくもあって面白いですね。

インセプション [Blu-ray]

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  • 発売日: 2011/07/20
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 原作では炭治郎くんは最初から昔の炭売りの頃の格好をしているのですが、映画だと最初は鬼殺隊の制服+帯剣+背中にいつもの箱、から始まって死んだはずの妹弟を見つけて抱きつくあたりでいつの間にか服装が変わっており、視聴者にこれが現実でないことをより早く示しているんですね。
平和な故郷の雪の風景になぜか現れる異常な箱、水汲みに行くと水面に写った自分が違う行動を取る…などの一連の流れも映像で見るとより見ごたえがあります。「起きろ!攻撃されている!」「夢だ!これは夢だ!目覚めろ!起きて戦え!」は予告編でもお馴染みになりました。帰りたいけど偽りである家族の情景に背を向け、炭治郎くんが決別して歩き出すところはエモ度が高く、前半の泣きポイントでもあります。

小物類とか

★鬼殺隊の隊士、特に柱が持っている日輪刀はそれぞれ鍔周りのデザインや刀身の色合いが微妙に違うのですがカラーの映像で見ると差がはっきりわかりますね。劇場版の後でも受け継がれ、何気に重要な役割を果たす煉獄杏寿郎の刀の炎をかたどった鍔も白系ではっきりと出てきます。

★予告編でも重要感マシマシで車掌さんが切っていく無限列車の切符。原作では手書きで辛うじて読めるぐらいに書かれているだけですが、劇場版だと大正モダン風味に、はっきり大きな文字で『東京夢限』と書かれています。「無限」でも「夢幻」でもなく「夢の限り」というのが意味深にも見えます。これは公式グッズで売られてますね。

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キャラクター話

主人公 →炭治郎[たんじろう]

★緑と黒の市松模様→炭治郎の鬼滅グッズ! というぐらい街を歩けば鬼滅に当たる効果を生み出してしまった炭治郎くん。主人公の服装の配色が緑というのも珍しい気がします。心優しくて努力家、心の中の心象世界もモブの人が感動するぐらい澄み切っていて、もう少年漫画のお手本のような少年です。
 その一方でヒロインを箱の中に背負って戦う主人公というのもなかなか珍しく、というかヒロイン役が妹というのも今どき珍しいし、作者さんの独自の持ち味の中に王道ジャンプ文法を取り入れていろいろ苦心して造形したんだろうなあと思います。

★原作では7巻あたり、下弦の鬼との戦いを経て本作で上弦下弦とさらに遭遇、限界を感じてまた修行して成長…と爆速成長の途中の位置づけですが、バシバシ動くアニメ効果と主人公補正もあってすでにかなり強そうに見えます。

★真のクライマックスまでは主人公なので見せ場も多数ですが、屋上での戦い→列車の前の方での伊之助との共闘のあたりはビジュアル効果もあってかなり見応えがあります。よく見る映像だと刀に水のエフェクトが掛かっていて水の呼吸の継承者のように見えつつ、実はまだその先がある訳ですが、そっちのエフェクトでアレを一刀両断するあたりもかなりアニメ効果大。原作だと数コマですが映像では大きく空中から振りかぶってかなりダイナミックです。
 このシーンは周囲もあれ蒸気機関車の先頭車両てこんなに広くてよかったっけ?となるぐらい空間の広がりも大きく、ufotableの固有結界すげえな…となります。

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額の広さが気になる炭治郎くん

竹を咥えた女の子 →禰豆子[ねずこ]

★ビジュアルでは桃色の着物の似合うヒロインとして描かれて、よく知らないお母さんやおばあちゃんでも「あら可愛い子ね〜」と思われそうな分かりやすい造形でありつつ、作品本編では寝てることの多い禰豆子。
たまに起きて強烈な蹴り技を放ったり、いつの間にか自力で習得している血を燃やす血鬼術「爆血!」でPVだと強キャラ感を出したりしています。
 この夢幻列車編はそんな禰豆子の出番が多い話でうまいところを劇場版にしたなあと思うのですが、主人公たちを夢の罠から脱出させたり、一般乗客を守るために戦ったり、何気に活躍しています。ちなみに敵も燃やせる『爆血』は自分の血が原料なので、使いすぎると力をなくして眠って回復しなければならないので乗客防衛バトルでは温存して爪で戦っている…と、原作でも作者さんから補足があります。

★しかし一番の見どころは、寝ている善逸少年の夢の中に出てくる禰豆子でしょう。本編では鬼の衝動を抑えるために咥えている竹のせいで主な台詞が「うー」とか「あー」とか「むー」なのですが、夢の中だと竹も外れていて普通に喋っており、おんぶデートでキャッキャウフフしています。
 この妄想上の…もとい現実をもとに善逸氏の視点で再構成した夢想上の禰豆子ちゃんがパーフェクトヒロインすぎてやばい。アニメ効果もあって笑顔が眩しすぎます。こんなん善逸も全力で惚れるやろ…
そのエビデンスとして、映画版の善逸くんの興奮度合いが原作漫画より高まっており、夢の中でも雷の呼吸のエフェクト付き疾走を計2回ほど披露しています。

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原作だとムー子というネタが欄外にあります

黄色い少年 →善逸[ぜんいつ]

★白と黄色の三角、鱗文様の羽織で髪も黄色くて映像で分かりやすい善逸くん。努力家の炭治郎に比べると後ろ向きで不平も多く泣き虫、でも女の子は好き、主にギャグシーンで活躍するワイたちの代表の善逸くんです。
 その一方で鬼となった妹を背負いながら孤独に運命と戦う主人公…という初期の『鬼滅の刃』の暗い雰囲気を和らげ、伊之助と共に王道ジャンプ漫画の文法の「友情」要素を取り入れて作品全体を明るくしていった功労者でもあります。

★必殺技が居合斬り系であるため、持続しない最大瞬間風速的なかっこよさを持ち味としている善逸氏。映画版でもだいたい平常運転なのですが、一番かっこいいシーンというと後半の対うねうね乗客防衛バトル、禰豆子ちゃんのピンチに駆けつけるシーンでしょう。
 原作だと数コマですが、映像だと雷の呼吸のライトニングエフェクトが数車両に渡ってビリビリ展開。一気に駆けつけてあの技、雷の呼吸・壱ノ型『霹靂一閃 六連』が炸裂。抜刀から触手を一気に斬り伏せて納刀まで綺麗に決まります。
そこで完璧に決まる台詞も原作通り「禰豆子ちゃんは俺が守る」。こんなん惚れるやろ…(※ただし起きているイケメンに限る)

★初登場時も道行く初対面の娘さんに結婚を申しこんでいたり、かなり通報案件な善逸氏ですが、作品のこのへんだとすでに禰豆子ちゃん一筋になっていますね。この恋が実るのかは漫画を最後の最後まで読まないとわかりません。がんばれワイたちの善逸、劇場版は7−8巻だからまだまだ先は長いぞ…!

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善逸くんがたまにかっこよくなる前兆

裸に猪の被り物の変な人 →伊之助[いのすけ]

★上半身裸で頭が猪、背中にぎざぎざの刀の二刀流、初見でコイツ敵か?と思わせる造形の伊之助氏。こんなん町中や電車の中にいたら間違いなく通報されますね…でも主人公パーティの一員です。
 ありがちな漫画だったら被り物の下も粗野で乱暴なパワー系のワイルド野蛮人キャラ…と思わせて、遊郭でも通用するぐらいの女の子と見間違えるばかりの美少年…という相反する要素を一人の中で持ってるあたりが、女性作家らしくもあり独特な造形だなと思います。

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ぱっと見は敵っぽい伊之助

★善逸と一緒に笑いを取る役が多い伊之助、劇場版でも蒸気鉄道に大興奮したり窓から身を乗り出したり、電車を初めて見た幼児とあまり変わらないレベルのおのぼりさんぶりを発揮して、だいたい平常運転。一夜の物語の雰囲気を明るくしています。
そういえばこの劇場版は初見のにわかファンやお子さんに連れてこられた親御さん向けの序盤の説明が一切ないのですが、う〜ん映像でだいたい分かるしテンポが悪くなるよりは勢いがあって良いでしょう。

★対多人数向けの技が多い獣の呼吸を活かして乗客防衛バトルでも猪突猛進して活躍、第一クライマックスでも炭治郎と共闘して勝利を導き、何気に出番は多いですね。台詞も多いです。エモ度が上がっていくクライマックスになると、興奮してだんだん何を言ってるか分からなくなったりしますw

★最後の悲しい夜明けのシーンでも、被りものから大粒の汗を流しつつ約束の泣いてない主張をしたり、仲間たちを(彼なりに)奮い立たせたり、主人公パーティの一員としての仕事はしっかりやっているといえるでしょう…。
 伊之助は猪に育てられたという大自然設定が原作でもその後語られて、これでだいたい設定の説明がつきます。と思いきや、出生にはさらにその奥の秘密があって本筋ストーリーとうまく繋がっていくのですが、原作の最後の方まで進まねばなりませぬ。猪突猛進、猪突猛進…!

★ちなみに伊之助氏の獣の呼吸の剣術は、造形から想像がつく通りの力任せに二刀流を振り回してあれやこれやするもの。 二刀で決めポーズからの「伊之助様のお通りだ!」とか「猪突猛進!猪突猛進!」とか言いながら突進するとだいたい様になるので、小さい子でも真似がしやすいという読者に優しい設定になっています。うちの子の通っている保育園でも男の子がなりきっていましたw

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作品全体では中盤から三人組でなく個別の登場も増えてきます

燃えてる強そうな人 →鬼殺隊最強の柱の一人、"炎柱"の煉獄杏寿郎[れんごく・きょうじゅろう]

★連載初期のダークな雰囲気に善逸+伊之助がパーティに加わって友情の要素が加わり王道ジャンプ文法的な方向に軌道修正した後、善の側の組織の固定の人数だけいてみんなそれぞれ技が違ったりする強キャラ…というこれまた漫画とかでお馴染みの設定で登場する鬼殺隊の柱。このへんから鬼滅ワールドが一気に広がってどんどん面白くなってきます。
 少年3人+禰豆子の主人公面々に感情移入して読んでいる10代の読者層からしてみれば、強くて美人で優しい憧れの部活の先輩とか頼りになる熱血先生とかちょいワルだけど強い兄貴分みたいのとか、そういうのが何人も出てくるわけですから人気も出るでしょう。
 そして物語序盤から登場して「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」の名言を発しながらも口数が少なさ過ぎてイマイチ人物像がよく分からなかった冨岡義勇氏も実は柱の一人で超強いのが分かり、序盤の修行シーンを親代わりのように支えてくれた鱗滝さん(お面のおじさん)も元柱で相当強いのが分かり、この2人が陰で炭治郎たちのために尽力してくれていたのが分かり、1/fゆらぎ効果も相まって本拠地での全員集合の会議シーンあたりから鬼滅ファンのテンションは高まっていきます。

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アニメのOPでも最初シルエットのみ→最後は全員集合となってます

★そんな、柱との共闘がストーリーの中核になっていく中でこの無限列車編で最初に共闘するのがビジュアルもとてもわかりやすい、この"炎柱"の煉獄杏寿郎。「煉獄」という厨二ワードが名字にも技の名前にも入っていてグッときます。
 炎使いキャラというと強い以外に粗野で乱暴とか脳筋系の属性がつくことも割とありますが、煉獄さんの場合はそのへんはなくて代わりにリーダーシップや責任感、決断力、実行力、ノブリス・オブリージュ、けっこういいお屋敷の名家の出で家名の縛り…などなどを体現しています。

★その割に劇中の初登場シーンは駅弁を大量に食べているなんか変な人ですが、この「うまい!」シーンも映像で忠実に再現されています。ちなみに公式ファンブックによるとここで食べているのは牛鍋弁当なんだそうです。

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好物を食べる時は「わっしょい!」と言うそうです

★その後のキーとなるヒノモト神楽のお役立ち情報もあまり炭治郎に提供できない煉獄さんですが、いざ有事となると抜刀して実力発揮。顔見せに車内に出てきた鬼もほぼ一撃です。原作ではここの鬼が1体なのですが、映画版ではもういっちょ出しとく?的なノリで2体倒しており、主人公チームからさすがだぜアニキ!とさらにリスペクトされています。

★と見せかけて実は夢で…と自身の過去設定や内面を視聴者に明かしていくのですが、覚醒して不甲斐なさを恥じた後も大変なことになった列車の中で獅子奮迅の活躍。動く映像で見るとみると強そうなのがよく分かりますね。
 呼吸による必殺技発動時の水や炎、龍や蛇や蝶や花や月の演出は本作品独特のものですが、闘気や剣技の冴えが具現化したようなもので、他の人からはそう見えているが実際に出ているわけではないというのは作者さんが本編のおまけ漫画の中で明言しています。
 なのですが劇場版ではufotableぢからもあって、煉獄さんの刀が通った後はほとんど燃えてますね。作品をよく知らない人にはそれでも問題ないし、なんかみんなもう心を燃やしちゃっていいんじゃないかな…というお気持ちになってきます。
 そして乗員乗客計200人、確か8両編成なので一両25人、全員守りきったというのがなんか無理っぽい数字だけど煉獄さんマジカッコイイのための描写だからまあいいかとなり、物語は真のクライマックスへ、全煉獄推しの展開へ進んでいくのです…

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煉獄杏寿郎

その他モブキャラ

★本編でも回想シーンに度々登場する今は亡き竈門家ファミリーの兄弟6人末っ子の六太が、内面世界の夢のシーンで原作よりも出番が増えています。兄弟の食卓に一緒に座ってじっとしていられるということは1−2歳ぐらい?

★アニメだとちょい役がより魅力的に書かれてたりするのはよくありますが、弁当を食べ過ぎな煉獄杏寿郎の空箱の片付けに困る2人組の添乗員の女性が、原作より美人になっています。

★訳あって悪の魘夢氏側に付き、炭治郎たちの夢に侵入してくる人間たちの主要二人の娘(三つ編みのおさげの子と糸目の子)も、原作より刺々しさが弱めでより美人に描かれています。
炭治郎の内面世界の清さに救われる白血病の青年含め、この人達も助かってなんとか列車から出てくる描写があります。画面の外で善逸たちもがんばったのだぜ…

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夢にダイブしてくる方たち。けっこう頑張ります。

屋根の上でポージングしてる手に口がある人 → 下弦の鬼の壱、魘夢[えんむ]

★悪の側の組織の側にもボス直下にそれぞれキャラの立った最強キャラがいて、主人公サイドが加わった善の側の組織と激戦する…という展開も少年漫画でおなじみの展開ですが、本作では上弦の月6名下弦の月6名、計12名で「十二鬼月」という、日光が弱点の吸血鬼もとい鬼らしく「月」をモチーフにした雅な和風設定となっています。
 さあどうせ下から弱い順に12体倒していくんだろう…と訓練された少年漫画ファンが思うところ、下弦の6でなく5が蜘蛛の山で討伐された累と判明。すると気まぐれな経営に定評のあるラスボス鬼舞辻無惨様は緊急会議で下弦の鬼たちを招集、叱責の後で激励して手分けして鬼殺隊の戦力を削いだりすればいいところ、下弦の鬼全員をその場で粛清という、実にアレな采配をやってしまいます。さすが悪役の鏡、ジョースター家を長年苦しめるディオ様にも引けをとりません。

 これで読者には、この漫画はこの先引き伸ばしや中だるみ展開をせず、上弦の鬼6人+無惨の討伐に向けて一直線に全力でクライマックス展開に進んでいくのが示されました。この無惨様パワハラ会議はアニメ版でも最終話の26話で忠実に再現され、ネットでも話題になりました。まさに無惨…


(鬼滅の刃)無惨様のパワハラ会議

 そのリストラ会議を唯一生き延びたのがこの下弦の1番目の魘夢。女装癖のある(嘘)経営者によって仲間(?)たちが横で粛清されていくパワハラ会議中も夢うつつでいた、ちょっとアレな人です。無惨様の濃ゆい血をボーナスで与えられてさらにアレになり、生き延びたら鬼狩りたちを殺してこいという命を受けて劇場版に出張してきます。どうやら無賃乗車のようです。

★劇場版でも夢うつつのままなので、ポーズや台詞もドリーミィにキマっています。「落ちてゆく…落ちてゆく…夢の中へ」のくだりは予告編でもおなじみ。

★人を昏睡させて醒めない夢を見させ、夢の内容も操作できる精神能力の持ち主なので直接戦闘能力はそれほどでもない設定に見えますが、劇場版効果でけっこうアクションも映えますね。
アクション映画でよくありそうな列車の屋根の上での炭治郎との戦闘シーンもひらりひらりと動いて、おっこの人だいぶ体柔らかいな!けっこう強いんじゃない?下弦の月もまだけっこうイケるんじゃ?と思わせます。

★そんな魘夢氏は周到な計画により、すでに鉄道と一体化していたのだぁ! ということで無限列車は謎の鬼空間に。一般乗客を人質に触手っぽいモブ敵が多数登場、炭治郎&伊之助vs本体との戦闘以外に善逸/禰豆子/煉獄さんにも均等に戦闘の見せ場を与え、煉獄さんの優秀さをさらに知らしめる手助けをしてくれる、よい悪役であります。
Fate』シリーズなどでも定評のあるufotable、このへんのぶよぶよした肉塊とか触手みたいのとかの映像的なエフェクトは上手いですね。Fateと違って全年齢向けなので触手はあまり仕事をしないのですが、漫画よりもさらにこの敵ヤバい感がマシマシになっています。この鉄道全体がもう魘夢の本体扱いだとすると、アニメ効果もあって物理的な体の体積としては十二鬼月のなかで一位を獲得しているのでは?

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屋根の上で夢うつつにキマっている魘夢氏

★この作品でこの先登場してくる鬼たちも、本体が分裂したり血鬼術扱いでかなりの大技を出してきたり、脳や心臓を多重化して障害発生に備えていたり、日輪刀で首を刎ねれば死ぬという単一障害点を乗り越えて障害発生に備えていたり、まあみんなほとんど反則のことをしてきます。
 上弦の鬼たちのインパクトが強すぎて、作品全体からするとこの魘夢氏は「あ〜なんか最初の方にそんなやついたな」ぐらいの扱いなのですが、劇場版でかなり強そうな印象が強まってるし、2020年の紅白歌合戦の映像にもチラっと出演。この劇場版出張でよい花道を飾ってもらったといえませう…

★そんな魘夢氏も周到な計画が潰えて敗れてしまうのですが、最後は独白で主人公たち全員+煉獄さんの想定外ぶりを悔しがりながら朽ちていきます。最後の最後も主役陣の有能さを讃えながら散る、まさに悪役の鏡であります。
原作だと道連れを考えるだけですが、映画だとなんとか手を生やして炭治郎か伊之助に一矢報いようとするも力尽きて塵に…と、最後の抵抗がワンステップ多くなっています。

★ちなみにこのシーンでも悲しい音楽が流れていて、哀れみのエモーションを誘う場面となっています。原作でも上弦の鬼の異次元の強さと狩られる底辺の鬼の悲哀の対照を示す独白がありますが、エッここ泣くシーンなの?魘夢さんは別に悲しい過去設定とかないしただの悪設定の鬼じゃん…と内心ちょっと笑ってしまいました。

魘夢氏の敗因を考える

★無限列車内の人間200人を眠らせて一気に人質にとった魘夢氏ですが、最後の最後で一気に全員一度に喰って強くならないといけないという謎ルールがあったようです。物語開始前の行方不明40人も喰ったはずですがこのへんが謎です。
 この謎ルールのため手間のかかる本番リリースを待たずに途中の邪魔が入って成果ゼロ人、煉獄さんの優秀さをより際立たせて読者の煉獄推しファンを喜ばせる結果に終わってしまっています。これはいけません。途中の変更に弱い作戦設計になっています。開発手法でいえば極めてウォーターフォール的なアプローチであります。
 少数精鋭の鬼舞辻ベンチャーの一員なのですからもっとアジャイル的なアプローチを、序盤から一人づつでも喰ってその都度インクリメンタルに強くなって新しい自分を継続的にデリバリーすることはできなかったのでしょうか。こうするとPG12が変わって小さいお子さんが観られない映画になってしまう可能性はありますが…

★魘夢の夢の中から脱出できたのは煉獄杏寿郎の生存本能や炭治郎の気付き、意志力の強さもありますが、現実世界で気付いた禰豆子が血鬼術で縄を燃やして回って術を解いたのが大きいでしょう。
 すべての鬼の生みの親であるラスボス鬼舞辻無惨様は範囲:視界で配下の鬼の思考を読み、範囲:東京から首都圏をカバーするぐらいの広さで配下の鬼の現在位置も大まかに知ることができます。この支配を逃れた鬼は作中では人間側の協力者の珠世さんと禰豆子だけという設定になっています。
 といっても「やばい鬼狩りがいて鬼を連れている」という情報は作中の時系列でそろそろ十二鬼月側も知っているはずです。大リストラ会議では魘夢氏には、耳に花札の飾りをつけた鬼狩りを殺せという指示しかしていないですね。禰豆子については情報共有されていなかったようです。さすが、部下への指示があいまいな無惨様であります。
 一方主人公の炭治郎くんも敵に不意打ちができないぐらい正直で真面目で石頭な性格ですが、無限列車に搭乗する時に皆で見せ合っている買った切符は3人分。さすがに背中の箱の中身はごまかして荷物扱いで乗ってきたと思われます。


劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 特報第二弾

 とすると怪しまれずに箱と中身に気づけたのは切符を切ってくるあの車掌さん。あそこで手荷物を検めて無賃乗車の禰豆子を発見して、彼女の分も切符を買わせてカチーンと切っていれば術が発動して5人全員が醒めない眠りについて、勝てたかもしれません。
 舞台は架空の大正時代なので荷物の中の爆発物の警戒などはまだしていないのでしょうか。もっとテロ警戒の意識が高い現代だったらワンチャン……

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映像だと伏線感マシマシの車掌さん

上弦の鬼たち

★魘夢氏の回想というか独白のシーンで作品設定を読者に伝える意味もあり、シルエットだけ出る1回目とより詳しく出る計2回、上弦の鬼たちが描かれています。
 漫画版ではこの頃はまだ構想中だったのかぼんやりした感じになっていますが、映画ではよりはっきりと、特に2回目はキャラ6人全員がはっきり判別できるぐらいに登場しています。(目ぢからの強い古武士、扇を持ったチャラ男、格闘技やってそうな人、角のあるキモ爺、壺に入ったキモメン、おいらん姿の女性)
 ということはキャラデザはもう確定しているんですね。原作1−6巻を全26話で忠実にアニメ化した進み方からすると、最後まで行くのにもう何クールも必要になりそうですが、アニメ2期以降の可能性はありか…?

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アニメのOPにちらっとシルエットだけ出てくるやつ

体に線が走ってる人 →上弦の参・猗窩座[あかざ]

★予告編やビジュアルでも途中から隠すことなく登場、PVでもドゥーンドゥーンと強キャラ感マシマシで登場してくる猗窩座。名前が読みにくいです。若干唐突感がありますがちょうど近くにいたので無惨様の指示で来てみたという位置づけで、主人公が悪いやつ倒してこれで無事終わりか…と思う一般ピープル勢を裏切るように、満を持して夜明け前の舞台に登場します。

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この構えもめっさ伏線です。原作の先を読むべし!

★物語全体でもこれが初めての上弦の鬼との遭遇。

  • 鬼殺隊最強の柱クラスでも一対一で戦うと互角か負ける
  • 再生速度が速すぎて斬り合いのその場で再生してくる
  • 血鬼術で様々な特殊能力を持っている
  • 対して人間側は作中設定で死者の復活や四肢の再生手段がないので、波紋法呼吸の助けはあれど鬼殺隊側が圧倒的に不利

…という、作品全体でのパワーバランスを示して上弦やべぇぇ...これから出てくる敵全員こんなか...!! と読者に強く印象づける重要な戦いでもあります。


『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開中PV

★猗窩座氏は魘夢とは対照的に完全な接近戦キャラ。武器を使わず鍛え上げた肉体を使った無手の格闘技、そして敵であっても磨いた技に敬意を払う、スポーツマンシップに則る武人タイプ。もし現代だったら毎日筋トレを欠かさず、日々の積み上げをTwitterに放流してそうな意識の高い鬼であります。

★戦いの前は無手の構えから術式展開『破壊殺・羅針』という技を使って魔法陣的なやつが地面に展開されるのですが、映像で見るとこれも一段と綺麗ですね。ちゃんと雪の結晶の形になってるんだよなあ…

★そして動けない主人公陣を制して単身立ち向かう煉獄さんも、猗窩座EYEから見ると練り上げられた闘気がメラメラ燃えて「至高の領域に近い」とのポジティブコメントあり。バッチリ好敵手認定です。

★この戦いは原作でも盛り上がる山場なのですが、映像で見ると迫力が半端ないですね。土埃の中で見えない速度で斬り合ったり鍔迫り合いしたり語り合ったり。アニメがufotable製なのでだんだんFateシリーズのサーヴァント戦みたいに見えてきて、煉獄さん強いしもうこれから英霊召喚されちゃっていいんじゃないかな…というお気持ちになってきます。

★そしてこの猗窩座氏は公式ファンブックで実は人間と話すのが好きというのが明かされていますが、戦闘中もかなり話しかけてきて強い相手には敬意を払うんですね。そして対する煉獄さんも割とそのタイプなので、互いにまったく相容れないけど相手を互いにリスペクトするという、漢二人だけのアツいエモ空間が形成されていきます。
エンジニア的に言うと『Team Geek』にあるソーシャルスキルの3本柱HRT、Humility, Respect, TrustRespectを完全に体現しているのであります。

 僕は以前テーブルトークRPGの領域で長く活動していたのですが、あー敵にこういう相手も立てるかっこいいキャラがいるとラストの戦闘が盛り上がるんだよな〜というか自分がゲームマスターの時はNPCによくこういう演出させてましたわハハハ、という感じで堪能していました。
劇場版の範囲では視聴者の煉獄ファンの悲しみの元凶としてヘイトを集める役回りですが、とてもナイスな敵役ぶりであります。

★そして予告編でも描写がありますが、出た〜鬼への誘い! 上弦の参が認めるぐらい煉獄さんは強い訳ですね。この流れでまたまた一連の名言が流れ、全国の煉獄さん推しファンがさらに喜ぶこと必死であります。
 作中世界の設定では鬼の血を傷口もしくは口から摂取、耐えられれば鬼になるという吸血鬼ものとだいたい同じ設定で、上弦の鬼だけがスカウト権限を持つことになっています。リファラル採用の実績は不明ですがスカウトの眼に定評のある猗窩座さん、原作後半でももうひとり、ファンが言ってほしいであろう人物にこの鬼ワールドへの誘いをしてきます。

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心を燃やせ!

★そして死闘の果ての果て、相打ち前提の最後のやり取りも演出の盛り上げ方が上手い。作中の人物たちにも惜敗と認定され惜しまれているこの戦いですが、劇場版だと本当の本当にあと一歩、首を撥ねきって夜明けが来て煉獄さん一矢報いて勝ちだろう…と思わせるところまでいくんですよね。このへんも映像ならではです。

★相手をリスペクトし余裕で戦っていながらも、曙光の兆しが見えるや否や焦りだす猗窩座も吸血鬼ものっぽくて良い。
そして感情の高まりに達した炭治郎くんが全力で逃走する猗窩座に刀を投げつけ、心からの叫びを投げつけて最期のあの名場面に繋がります。次代の若者たちに想いを伝えて目を閉じる煉獄さんの脳裏に回想が駆け巡ったら…これはもうファンみんな泣いちゃうでしょう…。
僕が観た回でもふと周りを観たら周囲の女性がけっこう泣いていて、やばいみんな泣いてるどうしよう…となりました。

★ほか細かいところでは、伝令役のカラス(鎹鴉)まで劇場版だと涙を流して死を悼んでいます。柱面々に個別に訃報を伝えるカラスたちもみな、柱に合わせた装飾品をつけていたりして芸が細かいですね。

★そしてLISAの新曲『炎』がしっとり流れるエンディングも全煉獄推し、劇場版は完全に煉獄推しで終わるのでした。
 この煉獄杏寿郎の死は作中でも多くの人々に衝撃を与え、怒りや悲しみ、次なる行動の原動力となります。作品終盤まで回想シーンなどでも度々登場し、精神的にも影響力のあるキャラだったのが分かります。ほぼ一夜の登場でしたがこれだけ劇場版アニメで手厚く扱われ、紅白歌合戦でも映像だけでなく声も出演、花道を作ってもらって散ったなら本望でありましょう…(合掌)

www.oricon.co.jp


『劇場版「 #鬼滅の刃 」無限列車編』公開中PV第2弾

というわけで劇場版は完結したのでした。うむ、うまい! じゃなくて全集中して堪能したのだぜ…

関連書籍

鬼滅の刃』全23巻。全部通してじっくり読了したのですが、犠牲の大きい最後の戦いの後、こうやって終わるのか…ととても爽やかな気分になりました。伏線も概ね回収され、きっちり23巻で完結します。空前のブームに便乗して分かったようなことを書いてる一般メディアの情報も多いですが、まずは作品本編をしっかり読んでみることをオススメします。
 なお劇場版では背中から投剣で刺され、煉獄さんとの戦いには勝ちながらも気持ち的には敗走して日光から必死に生き延びる猗窩座はその後、部下のモチベーション維持力のなさに定評のある無惨様に冷たくあしらわれた後、作品後半のクライマックス無限城編で再登場します。この再戦もしっかり無限列車編が伏線になっているというニクい構成です。過去設定も含めかなりアツいので、これから読む人はお楽しみを!

吾峠呼世晴短編集』が作者の吾峠呼世晴さんがジャンプ漫画賞の投稿時の作品や読み切り作品4つを集めた短編集。どれも一般大衆に受けそうな媚びた作品とは対極にありそうな、未洗練の荒削りながらとても尖った独自の世界を醸し出していて、あーこちらがこの作家さんの本来のワールドなのだなあと分かります。かなり湿っぽくて大人向け、ジャンプよりもっと大人向けの漫画雑誌に向いてそうな空気です。
 1作めの『過狩り狩り』(かがりがり)が、鬼滅の原点となるエッセンスが入った作品。雰囲気はめっさダークで鬼滅と全然違います。顔が若干違いますが珠世さんと愈史郎はほぼそのまま出てきており、惑血の血鬼術もそのままです。『鬼滅の刃』本編でも最後まで何気に重要な役割を果たすこの2人、思い入れのあるキャラ造形なのかな?と邪推したりします。
ほかどことなく無惨様っぽいチンピラも出てきたり。鬼殺隊や日輪刀の設定はまだないものの、大切なものを奪われた人間が選抜を経て鬼狩りになるという流れは同じ。主人公の隻腕の剣士が持つ刀にも「惡鬼滅殺」の文字が刻まれています。

 他の作品群も通し、江戸川乱歩の小説のような怪奇色のある和風ダークファンタジー、難読漢字のネーミング、大切な存在の喪失、家族や兄弟の絆、児童虐待、生と死の捉え方や哲学、社会や世の理から外れた存在の描写、デフォルメキャラや独特のゆるいギャグや名前を間違うギャグなどなど、あちこちに『鬼滅の刃』にも受け継がれている要素が出てきます。登場キャラクターも鬼滅のあの人のここっぽい!というのがあちこちにあり、巻末で作者さんがおまけイラストで丁寧に共通点を補足してくれています。
最後の作品で主人公に助けられる着物の女の人が禰豆子の原点の一部っぽい気もするのですが、炭治郎くんのような晴れやかな少年漫画の模範的キャラなんかは影も形もありません。

 こういう独特の作風から継続的な商業連載を見込んで少年漫画の文法に落とし込み、新作『鬼滅の刃』としてスタートさせるにあたっては、かなり工夫や苦労があったのだろうなあと偲ばれます。そして当初はそれほどヒットはしなかった初期の暗めの鬼滅を支えたのはこうした作者さん本来の持ち味が好きなファン層であり、途中から作者サイドの工夫もあれば編集部の指示もあったのでしょう、仲間が増えて明るめになって鬼殺隊の柱が登場して王道ジャンプ文法に方向を寄せて人気が高まり、アニメで知名度が上がってさらに人気が爆発、紅白歌合戦を経てコロナを耐え忍んで待望の2020年劇場版で大ブーム…の今があるのでしょう。

 こうした「作品が本来伝えたいことや独自の作家性」+「一般受け大衆受けする要素」→「層を超えて大ヒット」のパターンは、2016年に『君の名は。』が大ヒットした時に新海誠さんも同じようなことを言っていたのが思い出されます。

www.kiminona.com

 本エントリのために鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録 』も参考にしました。おまけ情報もたくさん載っていて楽しいです。
 この本には上記の短編集収録『過狩り狩り』をベースにした連載作品案の下書きのネーム『鬼殺の流』(きさつのながれ)が収録されており、こちらが鬼滅の第2の原点になっています。
主人公は両足が義足、顔に傷、右手も欠損した隻腕の鬼狩りの剣士・伴田流。こちらになると日輪刀や鬼殺隊や柱、育手、伝令のカラス、藤の紋の家など、だいぶ設定も現在の鬼滅に近づいています。名前が違うけど育手の鱗滝さんのベースの人がいたり、チョイ役で髪型が栗花落カナヲっぽい人がいたり、敵の鬼がなんとなく上弦の6ぽかったり、16歳の娘だけ狙う沼の鬼の話がそのままだったりします。
 顔に傷のある主人公の造形はなんとなく風柱の人+水柱の人っぽく、だいぶ絡みづらそうです。体の欠損が多い所は手塚治虫氏の『どろろ』の百鬼丸の系譜ぽくもあります。こちらもジャンプじゃなくてアフタヌーンとかに載ってそうなダークな作風です。
 この作品も連載には向かないということでさらに検討が続き、もっと明るくて普通のキャラクターを主人公に据えよう!ということで炭治郎が生まれてタイトルは『鬼殺の刃』でなく『鬼滅の刃』になった...という四方山話が載っており、なるほど一般向けに寄せるために、連載開始時からも苦労されたんだなあというのが分かります。

鬼滅の刃 外伝』が、作者さん監修で別の人が書いた漫画。作者公認のファン向けの同人誌と思えば良いでしょう。当然絵柄も違うのですが、かなり原作を読み込んで再構築している印象です。「あーこのキャラこんなこと言いそう(あるいはファンだったら言ってほしそう)」的な場面がかなり再現されています。

『冨岡義勇外伝』:
相変わらずコミュ障言葉の足りない水柱の義勇さんが蟲柱の胡蝶しのぶと共闘して雪山のマタギの娘を助ける話。隊服姿の多いしのぶ様の着物姿が見られたり、義勇さんが好物の鮭大根を食べるシーンが見られたりします。(そこかよ)
 本編でも何気に絡みの多いこの2人、しのぶは義勇にけっこう関心を抱いているのか?(あるいは早くなんとかしないと...という思いかも)とこの話でも思わせます。Pixivの二次創作でもこの2人が実は付き合っていたら…という夢設定は割と見かけました。

『煉獄杏寿郎外伝』:
時系列が本編の少し昔、炎柱になる前の煉獄と、実はその弟子だった甘露寺蜜璃が稽古して頑張って炎柱の任務につく話。意外な取り合わせに見えましたが、公式設定を見るとちゃんと炎の呼吸の派生が恋の呼吸になってるんですねえ。杏寿郎の弟や父親も登場して、メイン2人の過去設定ともうまく絡めています。
 大正モダンな帝都東京が出てきて、そして敵の鬼が銃使いというのも異色でグッド。外伝なので掘り下げられていませんが、この当時の下弦の弐の鬼の過去設定もあー歴史ものってこういうのが良いよねーとなります。

 サブキャラ同士の絡みやあの頃何をしていたのかもっと見たい!というニーズにはそれほど応えずに本編はスパッと完結しているので(妄想の余地があるともいう)、こうした外伝系のサブストーリーは今後も公式でも二次創作でも捗りそうな気がします。

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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 キービジュアルより

 そんな感じで新年は趣向を変え、おそらくエンジニア関連であろう来訪者の皆様に一寸も役に立たない情報を垂れ流してしまいました。次から平常運行に戻って2021年を始めていきたいと思います。
本年も全集中・常中…は疲れそうなので水の呼吸の如くゆるやかに、よろしくお願いいたします!