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【感想】プログラマが知るべき97のこと

きのこ本

「~知るべ"き"97"のこ"と」 から通称「きのこ本」とか「97きのこ」とか呼ばれる、世界のスーパープログラマたちによるエッセイ集。こちらも良著としてよくおすすめ本に名が上がりますね。

 強い論調で決めつけるのではなく、どのエッセイも柔らかい口調で書いてあるのが読みやすい。人によっては自分の過去の手痛い失敗談を元にした話などもあり、こういうスーパーハイレベルの人でも自分たちと同じようなことをやらかしてきたんだなあとちょっと安心できます。(笑)

 まえがきにも書いてありますが、97人意見も様々、コンテキストも様々で中には相反するような意見もあります。
僕も読んでいて「うんうんその通り」「いいこと書いてあるな」もあれば、コード回りなどで幸いにして既に実践していることもあれば、そして「自動化してなくてすみません」「IDEに頼ってすみません」もあり、中には「うーん2010年代にはこの考え方はもう古いのでは?」というような話も勿論ありました。
 これはその通りで、ソフトウェア開発に万能の解決武器たる銀の弾丸がないように、その中から読者一人一人が自分にあった答えを探したり、自分なりに考えていくことに意味があるのでしょう。

プログラマが知るべき97のこと

プログラマが知るべき97のこと

 全体を通して読むとエンジニア向けの啓蒙の書では『達人プログラマー』や『情熱プログラマー』、最近の『SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル』、『アジャイル・プラクティス』などアジャイル系の書籍に出てくるようなプラクティスとよく似た話も何回か登場します。
DRY原則や名づけの大事さ、読みやすいコードの書き方、テストの重要性などなど。やはり洋の東西、今も昔も問わず、先人たちが苦労の果てに辿りついた境地や哲学、真実、知恵といったものはある程度似通ってくるのだなあと思います。

日本語版の違い

 日本語版は最後に日本人によるエッセイ10個が追加されており、『プログラマが知るべき107のこと』にパワーアップしています。
 森田創さんの「命を吹き込む魔法」を読むと「あーあの時の部品やフレームワークになんか名前付ければよかったな」と思ったり、関将俊さんの「ロールプレイングゲーム」を読むと「確かに気持ちから入るってあるよね」と思ったり。
107個目の最後を飾るRubyの生みの親、まつもとゆきひろさんの「名前重要」を読むと、まことの名が意味を持つファンタジー世界でも映画や小説の創作の世界でも、プログラミングの世界でも、改めて名前って大事だなと思います。

 この本の内容はクリエイティブコモンズのライセンスで、ネット上で無料公開されてもいます。なかなか電子書籍にならないのはこのへんの事情もあるのでしょうか。

https://xn–97-273ae6a4irb6e2hsoiozc2g4b8082p.com/

プログラマが知るべき97のこと - Wikisource

ネット版と書籍版の違い

じゃあ買わなくてもネットでいいじゃんという話になりますが、本で読んだ場合の差異はというと

  • 本文だけでなくまえがきもけっこういいことが書いてあります。
  • 見開き2P(後半例外あり)でほぼすべてのエッセイが読めるので、非常に読みやすいです。
  • 各エッセイのタイトルの横に、そのエッセイ著者の写真が載っています。

 著者の名前も英語名だけでなく不思議な名前の人もいるし、この添えられた写真がまたけっこう面白い。
 キリッとしてる人もいれば穏やかに微笑んでる人も、めっさくつろいでる人も飲み物と映ってる人も、素足出してるマンもいます。ビジネスマン然とした人もいればギークっぽい人もいます。
 巻末にはそれぞれのプロフィールも載っていて、名の知れた大企業からGooglerまで、学校の先生や教授、研究所の博士や職業がハッカーの人まで、実に様々な経歴が時にユーモア交じりに語られています。いずれも世界に名だたるタツジンなプログラマー陣ですが、「この顔でこういう経歴の人がこういう意見を持ってるんだなあ」とか思いながら読むと、親しみが沸いてちょっと面白いです。日本の方々は似顔絵の人もいます。

 という訳で新人からベテランまで、それぞれの立場で得るところのある一冊です。時々読み直したくなる本ですね。