数々の伝説を持つかのスティーブ・ジョブス。Amazonでランキング1位になった公式伝記、しばらく前に上下巻を読み終わりました。
いやー面白かった。、養子から始まる出生と60年代のヒッピー文化の洗礼を受けインドまで導師を探しに行った激動の人生、あのヒューレットパッカードでバイトした若き日やアップル生誕の日、マッキントッシュがビッグ・ブルーに挑戦した80年代、90年代の追放とそこからの復活、2000年代に未来を予言したデジタルハブを実現する数々のヒット、ガンで余命いくばくもないことを知り、最後の炎を燃やそうとさらに走る晩年と世界中が悔やんだ最期。
公式伝記なので歴史に残るであろうカリスマを持ち上げる美談ばかりと思いきやそんなことはなく、悪い面もきちんと書いてあります。感情的には落ち着きがなく矛盾したところもあり人格的にはかなり難あり、日本の企業社会の現実から言ったら正直こんな人が周りにいたら迷惑でしょう。w
卓越したプレゼンや説得でで発揮するかの「現実歪曲フィールド」が自分に都合の悪いことを無視する力にも働き、結婚前に生まれた娘のことも無視に近かったり気に入らない様々な人をクビにしたり攻撃したり、マイナス面もいろいろ書いてあります。
確かなビジョンを元に次々と未来を現実にし、世界を変えていく一方でMSのビル・ゲイツとは違い慈善には興味がなく、障害者専用の駐車スペースにも平気で自分の車を止めてしまうジョブス。禅の考えに傾倒し、シンプルさを極めた素晴らしいApple製品の数々を送り出す一方で自身は嘘臭い菜食主義を貫き、手術も拒んでそれが死期を早めてしまうジョブス。
その行動や考えは感嘆する一方で矛盾や謎に満ちており、謎めいた東洋思想的な何かも感じます。決して聖人君子ではなく清濁併せ持つ、乱世の英雄だったら織田信長や三国志の曹操みたいな悪役っぽい人ですが、そこがまた面白い。
MSのゲイツとの最初の出会いやその後の再会、競争を見ると、死後にゲイツがどんな気持ちで旧友を悔やんであのコメントを発表したのかが分かります。2000年代のiTunesとiPodを通した音楽業界激変の時代、歴史がもう少し違えばソニーには同じことをする能力があったというのも面白い。
ジョブスの一生と共に、コンピュータの世界の歴史が変わった日の数々を追体験するもよし。それぞれの時代で自分が何をしていたかを思い出すもよし。(僕はMacintosh発表の頃はまだ子供で記憶なし、iMac登場の頃がインターネットを始めた頃でした...笑)
諸々含めて、実に味わい深い本です。
- 作者: ウォルター・アイザックソン,井口耕二
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