FEAR系システムでシナリオライティングのフォーマットとなっている、いわゆるSSS形式、情報項目形式。
これもN◎VAのRevolution時代、登場当初はインターネット上でもかなり論争になったのですが、今はデファクトスタンダードとなって多くのFEARゲーで使われています。
良し悪しはさておき、シナリオのバックグラウンドやプロットに登場するキーワードを整理しておくのは、きちんとしたシナリオを作る場合は有用な作業です。
添付画像1 マインドマップ(上)&関連図(下)
実践記事には実例を上げて見ましょう。というわけでRI財団のひよこスタジオでいよいよ完成間近のしなりお『アストライアの涙』の情報項目を整理してみました。
マインドマップ
IT/コンピュータ業界でバリバリ働く知性派だったり将来目指していたり、日々の仕事をより効率化するライフハックに興味のある人なら知っている人も多いでしょう、マインドマップ。述べたい概念の中心のキーワードやイメージを図の中心に置き、枝が分かれて放射状に伸びていく形式でキーワードや絵のイメージを追加していく図解表現法です。あんまり実感が湧きませんが、学術的には人間の脳の記憶の構造に近いので理解や記憶がしやすいと言われています。
このマインドマップはビジネス書籍などで紹介されたので一時期ずいぶん流行った感がありましたが、最近そうでもないかな?
という訳で情報項目をマインドマップ形式で整理してみました。使ったのはマインドマップ作成ツールの日本での定番のひとつ、JUDE Thinkです。
細かい点が読めないように倍率を低くしていますが……うーんトピック同士の関連を矢印で繋げたらもはや自分でも読めないぐらい訳が分からなくなってしまいました。w
味方NPCの情報、敵NPCの情報、あるPC/キャストにのみ関連する事件の情報……というように情報がそれぞれの系列で完全に独立して枝分かれして終端がある単純な構造であれば、このマインドマップ形式は分かりやすいでしょう。
しかし、大抵のちゃんと作られたシナリオというのはそれぞれのPC/キャストの物語が途中で交わるよう、情報が互いに関連付く構造になっていますからね。公式サプリ『ストレイライト』のRL講座にも書いてある「キーワードリンク」というやつです。
キャスト4人にそれぞれ初期情報1つ、それらが2つに枝分岐して計12項目で終了というGM/RLからの指示通りに動けば全自動でリサーチが終わるような簡単な構造ならマインドマップ形式もいけそうですが、本格的なシナリオにはどうも不向きのようです。
やはりマインドマップは、シナリオの構想を練ったりブレインストーミングする段階で使うのがよさそうですね。
関連図
今度は情報を四角、関連を四角と四角の間の矢印で書いた関連図で同じことをしてみます。情報技術の世界で言われたとおりにプログラムを書いたりするのみならず、頭を働かせて設計工程を行ったりしている方なら御馴染み、オブジェクトモデル化的なものです。
使ったツールもこちらも日本では定番のモデリングツールのひとつ、JUDEのCommunity。UMLのクラス図を作る要領で図に描いてみました。
詳細が分からないように倍率を下げて画像の下の方に載せたものですが、おお、こちらはかなり分かりやすいですね。関連が一目で分かります。
色分けをしたり、そこから繋がるイベントシーンも一緒に書いてみました。よしよし。
材料に使った『アストライアの涙』は本文執筆前の検討・設計段階で、キーワードは既にかなり考えて整理してあり、情報項目も互いに関連付くように配置してあります。情報をこうして関連図に落として見直した後、特に見当たる要修正点はありませんでした。せっかくなので矢印の関連を多少追加してシナリオ本文にも追加したぐらいですね。
ここでモデル化とか一体なんなんじゃぁぁと思った門外漢の方も大丈夫。例えばExcelでは、[図形描画]ツールバーで図で四角形を描いた後、[オートシェイプ]-[コネクタ]を選んで線で四角形を繋げれば同じような図が描けます。四角形を動かした後も線が追随してくれます。
普段なかなかこういう発想に至らない方がいたら、それはTRPGのシナリオというのは基本的に文章から成り立つイメージが大きいからでしょう。マスターする際はテキストデータからなるシナリオを印刷して現地で使いますし、テキストデータの集合をWordなどでまとめてから印刷するとしたら、そこに図を入れるのは手間が掛かりますからね。
情報項目の関連でも、登場人物の相関でも、用意済みイベントシーンの流れでも、なんでも困ったらこうして手書きやツールによる図にしてみると、理解しやすくなります。
おまけ:画像の2 シナリオのマインドマップ
マインドマップの話が出たのでもうひとつ、以前作った図を倍率を小さくして記念に載せてみます。
実稼動16回、RI財団の謹製シナリオのひとつ『星月夜作戦』をマインドマップにしたものです。
けっこう綺麗に枝分かれしていかにもマインドマップぽくなっていますが、それもそのはず。これはシナリオ構想と共に作ったのではなくて完成後に何回もアクトで回した後、「そういえば巷でマインドマップが流行っているから試しにやってみるのだ」と後から作ったものだからです。 (´▽`) ハハハハ
タイトルから枝分かれしてトップレベルのトピックはゲスト、題材、イメージ、テーマ、ガジェット、場面、BGM、導入などに分かれています。
その後作った『セレスタイトの杯』もシナリオ構想段階で途中まで作って止まっているマインドマップがあるのですが……完成したシナリオと幾分違ってるので載せないでおきましょう。 (´▽`;) ハハハハ
マインドマップは数年前に有名になった後、ビジネスのシーンでは割と見かけるキーワードですが……最近はどうでしょうねえ。業界や業種、会社や社風によっても違うでしょう。
自分に関して言うと、会議の議事録や打ち合わせの検討結果をマインドマップ化している人は見ますが、翻って僕自身は実はあまり使ってないですね。分類や章立てごとに箇条書きするなどのテキスト早打ちで間に合ってしまっています。
脱線しましたが、TRPGの世界では、シナリオを全体から細部に向かって順に構想していくようなシーンでは、このマインドマップの記法は有用でしょう。