ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)
- 作者: 狩岡源,アークライト
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2006/08/10
- メディア: 単行本
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前作『ストレイ・ドッグ』は文庫サイズでしたが、ロール&ロール ブックスの新シリーズ立ち上げによって背が高くなりました。前作はどんなリプレイになるのかと思っていたら、実際のセッションの空気をメインにゲーム中の一喜一憂のやりとりも書いた、SNEスタイルに近いような感じで意外でした。マニアックなジャンルに尻込みせず、普通のユーザーも遊んで欲しいという狙いもあったのでしょう。
試行錯誤の反省を踏まえたのか、本作はスタイル一新。PCは全員新規、一人一人の予告編のようなミニストーリーあり、本文もプレイヤー台詞がほとんどなくルール上のやり取りも少ない、ストーリー性重視の極めてドラマチック&シネマティックなスタイルに変貌しています。トーキョーN◎VAのリプレイなんかに近いかもしれません。
ネット上の感想を探すと多いのが、この書き方のスタイルが、プレイ時からリプレイ執筆時にどこまで脚色してあるのかが分からず、イマイチだというもの。
確かに言えています。PC4人の予告編ミニストーリーはどれも格好いいのですが、勝手に書いたのか実際のセッションとどこまで対応しているのかも知りたいところです。調べるとR&R誌 vol22で、PC陣作成時のすりあわせのやりとりの会話の記事があるんですね。このへんをFEAR系リプレイだとプレアクトフェイズの雑談で書いているような感じで、リプレイ本体に載せてもいいかなと思いました。
本文中でも、一行のリーダー格の元ロシアSVR特殊部隊員のユーリー・コズロフ少佐が、固有名詞の出典を昔の映画だと見破ったり、ロールプレイでロシアのことわざをうまく引用する一幕があります。
経験があるので分かりますが、日本人がTRPGで外国人を演じる際、ことわざ系というのはなかなか咄嗟には出てこないんですね。この辺もPLサイドの綿密な準備から成り立っているのか、多少脚色が入っているのか、知りたいとも思いました。
クライマックスでも(ややネタバレですが)息詰まる迫力のスナイパー対決の場面があります。ここで映画『スターリングラード』の題材になっているスナイパー対決が引用されるのが激しく燃えます。TRSの判定の合間に小説的描写がいちいち入るのがたまらないのですが、これも実際のセッションに即しているのか、完全脚色なのか、知りたくもあります。
という感じなのですが、作品本体の方は冒険小説ファンとしては非常に楽しく読みました。キャラクターの平均年齢は30を越えてますしイラストも渋く、3人目のPCのジャック・ボーマンがなんかブルース・ウィリスに似ています。冒頭がロシアSVRの秘密作戦から始まるあたりでもうハァハァしっぱなしです。 (*´▽`)
「軍を辞めた後は射撃教官に甘んじている」「長年苦楽を共にした戦友が死に、責任を感じてその妻と娘の面倒を見ている」コズロフ少佐とか「行方不明の父を追って同じ道に進んだ」紅一点のオリガとか「陸軍あがりの荒んだ自分にも美人の恋人が一時いて、その妹にも徐々に惹かれる」ジャックとかは冒険小説的には正しい文法というか、実にありそうな人物設定なのですよ。冒頭でコズロフ少佐がロシア連邦高官をスナイピングする際、一撃で確実に仕留めるために脳幹を狙う辺りも実にリアルです。
(「孤児で謎の組織に拾われ、殺人技術だけを仕込まれて育った」PC4のグラップラーの日系人のタクミだけ、なんか厨設定が許される別ゲームやラノベの世界からやってきたような気がしますが!www)
銃のうんちくあり、実際にロシアやロサンゼルスに存在する地名も登場し、シナリオ中でも重要NPCが全員、物語やPCの設定と絡む形で隙なくうまく配置されていてドラマチックです。N◎VAのシナリオでいうと、PC1〜PC4のハンドアウトのシナリオコネが全員重要ゲストでビッグナンバー放置枠がなく、全員に平等に見せ場があるような感じです。(笑)
タイトルの『マリオネット・ネメシス』がいかなる意味を持つのかも、作中の台詞でちゃんと使われています。
実は最後が非常に To Be Continued な終わり方をしているので、1作目と本作のいいとこどりのスタイルでの3作目に、激しく期待したいところです。