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ITエンジニア界隈で本やイベント、技術系の話などを書いています。

【雑記】 週刊ダイアモンドにIT人材話掲載& #しがないラジオ sp.53 B面も感謝!

週刊ダイアモンドに特集『【高騰!枯渇!】 IT人材の採り方・育て方』

 子供を病院に連れて行ったらコンビニでふと面白そうな特集が目に入ったので、2/23日号を買って読んでみました。

dw.diamond.ne.jp

 まあ週刊誌なのでだいぶ煽っているのですが、最近ネットでも何かと話題のITエンジニア人材獲得情報の話で面白かったです。内容はだいたい以下のような話。

  • ソフトバンクが物流に参入! Amazonに対抗して人材獲得競争が激化している。
  • アメリカに比べると日本企業はSIベンダーに丸投げしてきたが、それが限界に。高度IT人材の質的不足が深刻。
  • 黙示録の四騎士GAFAに負け、BAT(中国ネット業界巨人三社のBaidu, Aribaba, Tencent)に負け、日本もゲーム・チェンジに気づき始めている。
  • カリカチュアな絵入りのITエンジニア大図鑑で7分類。
  • 人材争奪戦の制し方として高給与でエンジニアを集めている震源地、Cyber AgentDeNA、メルカリが写真入りで。メルカリ経営陣のドリームチームの図。
  • 新しい採用の形としてイベントや勉強会で活躍しているスタープレイヤーやカリスマのある教祖をヘッドハンティングする、社員がみなリクルーターリファラル採用する、上位大学の優秀な学生にすばやくアクセス、ZOZOテクノロジーズのように会社をまるごと買収などなど。旧来の新卒一括採用ではもう限界。

www.cyberagent.co.jp dena.com about.mercari.com tech.zozo.com

  • 求人サイトでWantedlyやGreenも登場。求人数ランキング1位は「SE(ウェブ・オープン系)」で2位が「ウェブプロデューサー、ディレクター」、3位がプロジェクトマネージャー。
  • 稼げる新進言語の筆頭はGo言語で、続くのがScalaPython、Kotlin、TypeScrpt。
  • 天才プログラマー獲得の例としてSONYのやり方。
  • 万事休す「SIベンダーの闇」 顧客企業の外注頼りが少なくなり、クラウドの普及もあって減収。2018年末に話題になった一連の退職エントリの影響で、NTTデータが高度AI人材に高報酬を出す制度を作った話も登場。
  • 非エンジニアのためのテック習得術として、スクールの例としてジーズアカデミー。デジタルハリウッドの学長さんのインタビューあり。
  • プログラミング未経験の本誌編集長がプログラミングやってみましたという体験記事でテックアカデミー受講。集中4日間。HTML/CSSで画面を作り、サーバサイドはPHPPHPの標準関数を使ってバックのMySQLに繋ぎ、オーソドックスな読書管理サイトのWebありケーション開発。なんとか完成できたという話。

gsacademy.tokyo techacademy.jp

 以下所感。

  • 中国のBaidu(検索エンジン百度), Aribaba(電子商取引の阿里巴巴), Tencent(インターネットサービスの騰訊)をまとめてBATと呼ぶのは恥ずかしながらよく知りませんでした。蝙蝠のバットだとかっこいいけどなんかWindowsの.batファイルみたいですね。フロントエンド関連だとAribabaはVue.jsを積極導入してることで知られてますね。
  • ITエンジニア大図鑑はだいぶ戯画化されてますが、ここでだけ呼び方で「SIer」。他では「ITベンダー」「SIベンダー」という表現が使われています。エンジニア以外の一般世界ではまだ「~ベンダー」の方が使われるのでしょうか。
  • この大図鑑の分類で"大手SIer旧エリート"が「かつてITのエンジニアといえばこの人たちを指した」なんて書かれていて時代を感じます。
  • しかしこの大図鑑は絵が男性ばっかりですね。確かITエンジニアの女性割合が全体で15%前後だと聞きましたが、もうちょっと性差に関係ないイラストにならんかなあ。
  • 求人ランキングの1位は「SE(ウェブ・オープン系)」と表現されていました。ここでのSEは「SIer所属のSE」でなく「IT技術者の総称」のSEですが、「Webエンジニア」「ソフトウェアエンジニア」という言葉は一般世界だとまだ浸透していないのでしょうか。
  • あと「オープン系」という言葉が使われていて意外でした。僕が転職した約20年前は汎用機系の対比としてオープン系という言葉はよく使われたのですが、業界内だと今はあまり使わないような?
  • SIベンダーの闇の話が2ページで載っているのですが、例の多重請負ピラミッドの図とか主要4社の利益が今じゃこんなに低迷!とか「座して死を待つだけなのか?」とかだいぶ煽っていて、フヒヒヒ!という感じで楽しく読んでしまいました。
  • CAやDeNAやメルカリで実際に働いているエンジニアの皆さんは、こういう煽った週刊誌記事を見てどう思うのかなあとも思ってみたり。

 なかなか面白いので、本屋やコンビニで見つけたら手に取ってみるとよいかもしれません。

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しがないラジオ sp.53b 【ゲスト: iwasiman】SIer v.s. Web系の対立軸について本気で考えた、楽しい「SIer批判」批判 聴取に感謝!

 前の記事の続きです。B面配信後にも多数の反応を頂きました。ありがとうございます!

 僕はしがないラジオ出演ゲスト陣の中では経歴そのものがユニークなので、たぶんsp.53aはいろんな立場の人からしてもそれなりに面白いだろうなとは思っていました。しかしsp.53bはこのネタをやって果たしてリスナーに受けるのだろうか……という心配が若干ありました。(笑)
 それも杞憂でA面同様多数の反応をいただきました。ありがたや……ありがたや……すべて拝見してイイネをつけて個別レス爆撃ををつけて回りましてございまする。

SIerは自分をSIerと呼ばないのでは問題」は結果がばらけまして、呼んでないところもあれば呼んでるところもあるという興味深い結果が出ました。僕のところの弊社では観測範囲内ではあまり使わないのですが、会社自体が大きいのでこれも組織内の組織によってばらけそうです。
「エンジニアの呼び方がいろいろ多い問題」も共感の声があってありがたいところ。「システム」「ソフトウェア」「サービス」「アプリケーション」って文脈によっては実際は同じものを指してたりしてややこしいんですよね。Sで始まるIT関連の英単語も探すとけっこうあります。

 ネット上だとTwitterや煽る系の記事でSIerは批判の文脈で見ることも割と多いですが、実際にはその中にも様々なパターンがあり、様々なものと結びついています。

  • 特に昔から変わらない往年の金融系、官公庁系の案件で見られる仕事自体が辛い話。
  • いわゆる外注丸投げでエンジニアの本来の仕事ができていない、成長できない。
  • マネジメントや上流工程しかできていない、あるいはそれもまともにできていない。
  • 開発はできているがいわゆる多重請負構造の下の方の弱い立場におり、不快な思いをした。
  • 開発はできているがレガシー技術でモチベーションが下がった。例えば手続き型言語COBOLやマイナーだとPL/I、古いVisualBasicや.NETがつかないASPなど。開発現場ではまだ健在のJavaSIerと結びつくことが多い。面白いのはマイナーになった言語ではPerlはあまりSIerとは結びつかない。C#SIerと結びつくことが割と多いが、面白いことにゲーム系のUnityの話になると結びつかない。
  • 開発はできているが仕事のやり方が古いままでモチベーションが下がった。たとえばガチガチのウォーターフォールでドキュメント作成だらけ、アジャイルは夢のまた夢など。
  • 開発はできているが使うツールがSIerを連想させるものでモチベーションが下がった。たとえばExcelExcelスクショ、伝統のサクラエディタEclipseなど。
  • 開発はできているがバージョン管理がまともにされていなかったり技術がSIerを連想させるものでモチベーションが下がった。たとえば恐怖のファイル名日付管理、なんかマイナーなバージョン管理ツールや古いVSS、Gitこそ至高と信じていたらSubversionが出てきたなど。
  • 開発はできているが使うツールがMicrosoftと結びついていてモチベーションが下がった。ここで面白いのは、Microsoft製でもモダンでエンジニアに評判の高いVisual Studio CodeやTypeScriptは出てこない。
  • 開発はできているがクラウドと反対側にあるオンプレミス側でモチベーションが下がった。
  • 開発はできているがその会社特有の製品やミドルウェアを使わされてモチベーションが下がった、汎用性のなさを感じた。
  • スーツが窮屈だった。これもお堅い金融系の開発現場のイメージの連想と思われる。sp.53bで話しているが、SIer=スーツ は実は真ではない。
  • 夢のフルリモートができなかった。これも環境の悪い常駐系プロジェクトのイメージの連想と思われる。sp.53bで話しているが、SIer=リモートなし は実は真ではない。
  • 問題の本質が会社自体にあった。制度や文化、方向性、社長や経営者層、企業体力や財力など。
  • 問題の本質がプロジェクトにあった。マネジメントやチームビルディング不足、技術に強く決定権のあるメンバの不足、心理的安全性やHRTの原則が守られていない、仕事の進め方がまずいなど。
  • 問題の本質が職場環境にあった。上と関連するが常駐環境で安心して働けないなど。
  • 問題の本質が周囲の人にあった。古典の『人月の神話』で語られているにも関わらず、炎上プロジェクトなどでは派遣で人をかき集めてきて一緒に働くに相応しくない人と遭遇してしまったりする。
  • 新社会人で配属ガチャで外れをひいてしまった。細分化すると配属先部門のガチャ、勤務地ガチャ、プロジェクトのガチャ、上司ガチャに先輩ガチャなど。
  • なんかSIerをdisると強いエンジニアになれる気がしてTwitterでついイキッってしまった。
  • 単にその日の仕事の愚痴をツイートしただけだった。

 上では適当に並べていますが、中にはSIerと関係ないものもあります。なんとなく、「SIer=悪」としておくと話が進めやすいので都合の良い便利な悪役として使われることが多いなあとネットを概観していて思います。
 元ゲーマーとしては日本文化における鬼や妖怪、キリスト教圏の世界における魔女や悪魔や竜、西洋世界における邪悪な妖精や小鬼、ファンタジー系作品における闇や奈落や混沌の軍勢とか、なんかそういうのと似たような感じを受けています。(RPG脳乙!)
 2018年に出た本では、おなじみ「控えめに言って名著」「首もげ本」「倍バイブル」な『エンジニアリング組織論への招待』がエンジニア界隈の様々なことをスパッと明確に定義して論じていて面白いのですが、あんな雰囲気で、なんでもかんでもSIerでくくるのでなく抽象度別にもっとふさわしい言葉を定義するとか、誰かエライ人やってくれないかなあと思ったりしています。(他力本願)

 という訳で人生初めてのPodcast出演はたいへん実りあるものになりました。パーソナリティのお2人アンドお聴きいただいた皆様、またこれから聴いてくださるかもしれない皆様、ありがとうございました!