jQueryの技を学ぶドージョー
2000年台半ばのAjax登場による衝撃と不遇の言語でもあったJavaScriptの復権、そして2006年の登場から他を圧倒して人気を博して世界中で使われるようになったJavaScriptライブラリ、jQuery。
プラグインやライブラリ系を導入してちょっとUIを工夫するにはいいけど複雑な処理を入れたり大規模開発にはそもそも向いていないのが徐々に分かり、2010年台前半〜半ばからはjQuery地獄を脱出してモダンなJavaScriptフレームワーク群に乗り換えるのがWebフロントエンドのトレンドになっています。
2018年現在からすると若干遅れてる感もありますが、相変わらず仕事ではよく出てくるので改めて読んでみました。
まだjQueryで消耗(ry
まあ僕も知らないわけじゃないし仕事のWebアプリ開発でも使ってはいるのですが、ハンバーグ定食の付け合せみたいに1画面分の実装の中で基本ちょっとしか使わないんですよね。
本書の最初にもjQueryの歴史がありますが、JavaScriptはセキュリティ的な弱さもありダサい言語であまり使わない方が安全だ…という2000年台の不遇の時代のイメージは、サーバーサイドだと割と残っている面もあります。
(僕の観測範囲でですが) 規模の大きいSI系のお客さん向けのお固い業務システムだとやはりメインはサーバサイドで信頼できるしっかりした言語(たいていJavaかC#)でしっかり仕様ロジックを作り込んでバリデーションもサーバ側、GETかPOSTで送信して処理して画面遷移してレスポンスで再描画。開発標準でJavaScriptは必要以上に使わないこと…なんてルールがあったりして必要なところだけajax通信してコードに対応する名前補完とか控えめにjQueryを使う、ぐらいの開発スタイルは、いまだ現役稼働中のでかいシステムではけっこうあります。
僕も最近の仕事でデザイナー的なところから出てきた凝りまくったデザイン画面とjQuery使いまくりネストしまくりのJSコードが難しすぎて理解できずWebアプリへの組み込みにけっこうハマったことがあったので、ちょいと改めて道場に入門することにしました。
そういえばドージョーといえば、似たようなJavaScriptライブラリで昔 Dojo Toolkit というのがあったなあ。(あんまり流行りませんでしたが…)
本の構成
電子書籍オンリーですがKindleだとなんと450円のおトクなお値段。表紙はあまりかっこよくないですが中身は詰まっており、画面の見た目を綺麗にするUIライブラリ系の話は完全に廃し、jQueryそのものをしっかりと解説しています。HTMLやCSS、JavaScriptの基本はもう分かっている人向けです。
また内容が版上げしてあり、2016年に最新のVer3.0に対応しています。こういう時内容を更新できる電子書籍は便利ですね。目次は以下のようになっています。
- 始めに
- 1章 jQueryとは?
- 2章 セレクター
- 3章 属性、CSS操作
- 4章 HTML、テキスト、フォーム値の取得&設定
- 5章 横断(Traversing)
- 6章 jQueryオブジェクト操作
- 7章 イベント
- 8章 AJAX
- 9章 エフェクト・アニメーション
- 10章 プロパティ
- 11章 .data()
- 12章 ユーティリィ(関数)
- 13章 プラグイン
- 14章 その他
- あとがき
感想
★Amazonなどの評価がよかったのでこの本にしたのですが、現役でjQueryはじめ各種Web技術で開発してる会社の作者さんだけあって理解しやすいです。
★解説で数行のサンプルコードが豊富に出てくるのですが、このサンプルが説明内容の適用例としてよく考えられていて分かりやすいですね。またコード例や表や画面表示例が(色分けルールが全体で統一されているわけではないですが)色がたくさんついていて分かりやすい。コメント、jQueryコード、HTML部分、セレクタ内の指定部分…などでカラフルになっていたりします。考えてみると紙の本だとあまりこうはならないので、電子書籍ならではの利点です。
★章、節、項のタイトルも背景がなんだかCSSデザインされた<h*>タグみたいでちょっと面白い。と思ったらオンラインで公開されている分も同じデザインだったので、そのまま本にしているようですね。電子書籍として本自体もPDFや一枚画像のような固定レイアウトでなくリフロー型なので読みやすいです。
★作者さんの説明口調はけっこうぶっちゃけていて平易な感じです。まあ仕事のリファレンスに使うならこのぐらいでいいですね。
★ネットの解説記事だと〜が〜と書いてあったりサンプルコードが〜となっていることもあるが、実際には〜なので注意、バージョン**からは〜なので注意……などの部分がけっこうあり、実践的だなと感じました。確かにjQueryは爆発的に広まったのでWebデザイン系とかマークアップ系のネット記事でもよく見かけますが、中にはやっぱり古い記述や間違いもあるんですね。なんとなくサーバサイド言語でいうとPHP系の記事と似たような匂いを受けます。
★そしてjQuery自体については、予想通りというべきか、けっこう知らないことがありました。セレクターでこんな指定できちゃうの?とかこの指定やこの関数ででこんな動きになるの?とかうぉぉチェックボックスでどハマリしたアノ時のアレはきっとこれだぁぁぁ(心のサケビ)とかそんな感じで。
JQuery自体の仕様の動きでも、繰り返し処理の数字が0始まりと1始まりと両方あったり、関数名で処理が対になってるものもあれば違うのもあったり、けっこう独特なところもありますね。
まとめ:jQueryの最新情報が一式まとまった実用的なオンライン道場
JavaScript言語自体を学んでいる方にはハードルが高めなので、たくさんある初心者向け入門書の方が良いでしょう。jQueryを利用したUI系のライブラリの話が知りたいデザイナーサイドの方も他の本やネットの資料が良いと思います。
そうでなくjQuery自体の仕様としてセレクターの指定方法諸々や関数の仕様、動きが知りたいプログラマーサイドの方には、電子書籍オンリーというのはありますがかなりコンパクトに内容も詰まっており、1冊携えておくと役立ちそうな本でした。
なお5章までの内容は、オンラインでも公開されています。 jquery-master.net