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『裏切りのサーカス』『テルマエ・ロマエ』

GWおわた

 連休中は出かけたり散歩したり寝たり水族館に行ったり映画を沢山観たり3DSで遊んだりファンタシースターオンラインのキャラクタークリエイトを試したり酒はバカルディ モヒート&キューバリブレを飲んでみたりしていました。

映画『裏切りのサーカス

 映画は『裏切りのサーカス』が良かったですね。どこまでも枯れたおぢさん祭り、スーツ男子祭り、眼鏡祭り、クラシックな英国祭り。舞台は1970年代の東西冷戦時代。空気が張り詰めた冒頭のブタペストのシーンに、斜陽のイギリス、陰鬱なロンドンの空。アクションシーンほとんどなし、銃撃もたった2回、燻し銀のような重厚なドラマが展開します。

 幾らか体重を増やして白髪に黒縁眼鏡、明晰な頭脳と記憶力を持つ引退した老スパイ ジョージ・スマイリーになりきったゲイリー・オールドマンは台詞なくてもいるだけでもうオーラがビンビンです。激シブです。身長175らしいですがスーツで決めると長身に見えますね。立っているだけのモノクロの写真が既にかっこいい。
 共演する大物英国俳優陣もみんなオーラがマソマソです。スーツは地味系が多いけどネクタイが趣味がよかったりしていちいち良い。『英国王のスピーチ』に出たコリン・ファースも重要な役どころで出てきます。

 ブランドのPaul Smithの本人がクリエイティブ面で協力したそうで、シーンの絵面が美しい場面がたくさんあります。モノクロームでどこかザラザラしたアーティスティックな映像。70'sテイストのクラシックなムード。ロフトを改造したような英国秘密情報部《サーカス》の陰鬱な本部とか、暗めのロンドンの空、古めかしい建物、原作どおりの少年が出てくる学校のそばの自然、何もない広い部屋の窓辺で話す政府の偉い人とスマイリーのシーンとか。アート系の雑誌の1枚の写真みたいな場面があちこちに出てきます。
 小物がまた趣味が良くて、机の上に置かれた黒電話とか酒のボトルとか古めかしいテープレコーダーとか情報機関風の謎の装置とか、全てが70年代らしくていちいちかっこいいいんですね。出てくる車もかっこいい。原作シリーズでも重要な意味を持つ主人公スマイリーが妻から貰った刻印入りのライターも、重要な場面で机に置かれています。

 そんな小物が置かれた密室や古めかしい倉庫室、雑然と本が置かれた英国風書斎で、スーツ男子のおぢさんたちが紫煙をくゆらせたり高い酒をちびちびやったり眉をひそめて考えたり回想に耽ったりする映画です。ひたすらおぢさん祭りです。
MI6の女性職員も出てきますが美人の下っ端です。重要級キャラでは古きよき時代を懐かしむアル中の太ったおばさんだけです。貴重な女性分としては金髪髪が美しいロシア女のイリーナさんがいますが、サーカスvsモスクワ・センターの謀略の中であっさりと(以下略)されます。(;´Д`)
あとは全員男。ひたすら男。そしてゲイが2組。スーツ男子好きの女子歓喜腐女子歓喜のおぢさん祭りです。w
 ゲイリーたま演じる主人公のスマイリーもそれほど台詞は多くなく喋り方も静かなんですが、存在感がありますね。情報部の職を追われ美人妻アンは浮気、華やかなりし黄金時代は過去に過ぎ去りあとは衰えるだけ、しかしフクロウの如く地道に真実を追いかけ、驚異的な頭脳の冴えとまったく衰えていない記憶力を持つ老スパイのオーラがビンビンです。原作のスマイリーはさらに太ってて背も低くルックスはかなりイケてない設定なのですが、映画なのでゲイリーたま効果でそこはオミットされていますね。
双発プロペラ機が背景を走る野外シーンで男が二人、「オペレーション・ウィッチクラフト」(字幕では「魔法作戦」)なんて最高機密作戦名が台詞で遂に出てくるとニヨニヨしちゃいます。 (*´ω`*)

 錯綜した陰謀の世界の一番後ろにいるソ連KGBの大物スパイ、宿敵カーラも映像にはほとんど出てきません。主人公スマイリーの口から回想で語られたりスマイリーに贈られたライターと一緒に一瞬映るだけです。原作でも同様で3部作の3作目の最後の最後でようやく二人が対峙するそうですね。登場しないのに存在感がある。原作の空気がよく出ていると思います。

 はっきり言うと一見さんお断り系の映画ファン向け、原作に忠実なので映画で初めて観る人のための追加された人物紹介シーンなども一切ありません。登場人物の区別など分からないまま見ると、1回目はよく分からないまま終わってしまうでしょう。昨今のエンタメ映画に比べると演出がかなり淡々としているし超絶アクションの盛り上がりもないので寝てしまうかもしれません。
まあトム様の『ミッション・インポッシブル』やリアル度の低いエンタメ系スパイ映画とは根本的に系統が違いますね。マット・デイモンの『ジェイソン・ボーン』三部作や『スパイ・ゲーム』、トム・クランシー原作のジャック・ライアンシリーズの映画など、あの辺が好きそうな人や年齢層高めの人には良さが分かるでしょう。
観るなら公式サイトの人物相関図等をチェック、人の顔と名前を頭に入れてある程度気合を入れてから挑むことをお勧めします。

 ジョン・ル・カレの原作シリーズ3部作はスパイ小説の金字塔としてその世界ではとても有名で欧米でも知名度がありますが、日本では一般向けにはそれほど有名ではないかもしれませんね。かなり前から出ている有名な作品なので情報は色々あり、作中の最大の謎であるサーカス情報部の誰がソ連のモール(二重スパイ)なのかの答えも、ネットを探すと出てきます。公式パンフレットにもよく観るとヒントは書いてありますし、役者の大物度からも推測できます。エンドロールも最後まで見ると最後のタイトルのモニャモニャがヒントを表しているみたいですね。
 僕も公式サイト全て、ネットあちこち、2chの映画板の作品スレも全部読んで把握してから本番を観ましたが、1回目で大体全てのシーンが理解できました。やっぱり台詞控えめで目の動きの演技だけで互いの繋がりや伏線を示しているシーンなんかは、事前に情報がないと初見では気付けないですね。あの視線の絡み合いだけでこの2人がゲイと察するとかかなりハードル高いです。やはりゲイは英国紳士のたしなみのようでござる……w
 重要なのはモールが誰なのかのネタバレ云々ではなくて、それに向けて物語がどう積み上がっていくか、物事がどう絡み合っていくか、どう伏線が張られているかなので、基礎情報を得た上でゆったり観ることを薦めます。
 事前に頭が整理できていればそれほど混乱せずに見られます。原作どおり回想シーンと現在が入り混じっていますが、時制も見分け方があります。過去シーンはサーカスのクリスマスパーティの華やかなシーンが中心に組み立てられている。枯れたおぢさんキャラ筆頭の《サーカス》トップの“コントロール”氏がまだ生きている。そしてオープニングの一連の流れでゲイリーたまが行動で示してくれます。過去シーンでは主人公のスマイリーはえんじ色の明るい眼鏡。現在シーンが黒縁の眼鏡。これで見分けが付きます。

 現実世界の英国情報部でもしばらく働いていた原作者のジョン・ル・カレは高齢ながらまだ存命ですが撮影現場を訪れて俳優陣と一緒に写真に収まり、映画自体もかなり評価しているそうです。文章の形で世に送り出した作家の頭の中にあったイメージもこんな映像だったんでしょうね。
 批評にもありましたが、お酒に例えたら確かに熟成させたスコッチやウィスキーみたいな映画、違いの分かる大人向けの映画ですね。批評家の評価も高いし本家イギリスでは3週連続1位、これならアカデミーのどれかの賞をとるでしょう。映画を愛する方は是非に。

 新宿の映画館で観たのですが連休谷間の平日朝なのに混んでいてたまげました。さらに年齢層でたまげました。右も左も50代60代のおぢさまおばさまばかりです。今まで映画館に足を運んだ中で最も年齢層が高かった日かもしれません。あまりにたまげたのでモスクワ・センターに暗号通信で報告しようかと思ったほどです。w

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 原作のスパイ小説/ミステリのクラシック『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』はだいぶ前に読んだだけだったので、いま新訳版を読み返しています。観た日に紀伊国屋書店に行ったらなんと売り切れでした。
 この陰謀の世界で英国情報部の頂点に密かに潜む裏切り者にコントロール氏が付けたコードネームはティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン、アーンド……スマイリー自身を表すベガーマン。映像でもチェスの駒で表されていて味わい深い。この単語の出典はマザーグースだそうですが、このTTSSのタイトルが既にかっこいい。映画の邦題もこのままにしてほしかったですね。窓口で「『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』〜を大人で1枚」とか言ったらそれだけで既にかっこよさげです。原作ファンはみんな心の中で思ってるはずです。w
僕は隣の席だった老後を楽しむオールドミセス2人組が上映後に落としていったとおぼしき鍵を窓口に届けたのですが、「ご覧の作品はどれですか?」「『ティンカー』……あーいや、『裏切りのサーカス』です」とつい言ってしまいました。てへ。 (´w`)

http://uragiri.gaga.ne.jp/

映画『テルマエ・ロマエ


 『テルマエ・ロマエ』も観てきましたよ。
 主人公の阿部寛がまったく違和感がないのは雑誌などでもかなり話題にされていますが、最初に日本の銭湯にタイムスリップするシーンなんかほんとそのままですね。まわりのおじいさんまで激似です。w
 平たい顔族も濃い人を集めると外人エキストラの間でローマ人を演じてもまったく違和感がないですねえ。同じ人間という生き物の中だと人種が違ってもけっこう何とかなるものなんだなと思いました。
ラテン語/日本語の字幕やバイリンガルのマークやタキシードでオペラ歌ってる人やワニさんもよい仕事をしています。上映中も観客席からはかなり笑いが上がっていました。安心して楽しめる娯楽映画になっています。本家イタリアでもかなり受けて賞を取ったそうでよかったですね。

 平たい顔族代表の上戸彩は映画だけのオリジナル、やっぱりつけたしヒロインの感がかなりありますが、映画作品だと華が必要だからしょうがないですね。
阿部ちゃんを見てまず連想するのがケンシロウ、漫画オタで自宅はポスターだらけ、夜は漫画家を目指すも才能がないと怒られ昼はダメ課長ダメ部長の下でルックスだけのイケてない派遣社員、結局夢を諦めてど田舎の実家の民宿にリターン、将来を心配する母が見合いを勧めてきて、写真の中の男性はお約束の金持ちだけどいまいちイケてないおぼっちゃん……というあたりはなかなか現実的でシビアですね。あの役柄のスペックだと図書館から借りた本の猛勉強だけで突然ラテン語ペラペ〜ラは難しそうですが、映画ひろいん効果のなせる業なのでしょう。w
 しかしあのお見合い相手の人は初回から動物園デートを敢行したり初回から結婚の話を持ち出したり、かと思えばワニに動じなかったりかなりの豪の者と見えます。ローマでも民宿面子は活躍しているのであの人どこいったんだろうと思ってしまいました。w

http://www.thermae-romae.jp/index.html