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イベント向けシナリオ作成で注意したポイント【前編】

 ここは突然現れるTRPGテクニックのページです。トーキョーN◎VAの話題を扱っていますが他のシステムでも基本的には役に立つかもしれません。
 さて2010年7月に東京で開催され、参加者一般募集では最後となった『らららオフ』13th。先陣のA卓のRLを拝命した筆者の所では新作シナリオ『アステールの宝珠』の発進となり、今でもアクトの顛末が懐かしく思い出される、十分な大成功を収めることができました。


 この『アステールの宝珠』、最初の原案、設計時点からオフ会のようなイベントをターゲットと定め、いろいろと意識して作成しています。今回はオフ会のようなイベント向けの、ヘビー級でなく比較的ライト級のシナリオを創るにあたって注意した点を、具体例を交えて掲載しましょう。
 ちなみにシナリオ内の事も書いたりしていますが、未プレイで見ても大丈夫です。それどころか本作まだ3回しかRLしていないので誰か遊びませう。

 ちなみになぜ翌年の今になって掲載したかというと……前々からToDoには上げていたのですが、他にもやることがあったり忙しかったりいろいろあって遅くなってしまいました。てへへのへ。
2011年4月に東京で開催されたミニオフ会『東京新星市オフ』のトレーラーが続々上がってくるのを見て思い出した訳じゃないんだからねっ!

トレーラーを短くする

 N◎VA-Dでも他のFEAR系システムに習ってDetonation時代から登場したトレーラー。これの長さは明確な決まりはありませんが、オフィシャルシナリオにはだいたい「180〜200文字」前後というラインがあります。イベントやシナリオ同人誌等で見られるシナリオは計測すると「200〜250文字」が多いようです。このらららオフ13thに揃ったシナリオも多いのは200〜250文字ライン、長い作品で300文字でした。
 どんな文章を書くか、形容詞をどれだけ入れるか、どれだけ美しい日本語を目指して頑張るかなど要素は複数あるので単純に文字数だけでは測れませんが、今回は短くしました。


実例:『アステールの宝珠』は、Web上のサービスで実際に測りながら創りましたがトレーラーは152文字、最後のシナリオ名等を入れて200文字ちょっとに抑えています。これは筆者のシナリオ群では実は最短ですね。
既存作品ではトレーラーが魔道書の予言になっている『セレスタイトの杯』は540文字、トレーラーが手紙になっている『アストライアの涙』は922文字で最長でした。これはいきなり当日遊ぶ小品ではなく大作であること、参加者が全員ネットに接続できる環境にあり、アクト前にある程度準備をして気持ちを高めてから遊ぶのを想定しているから、という面もあります。


キャッチーなトレーラーにする

 タイトルに続いてシナリオの顔とも言えるトレーラー。どうやったら見る人を惹き付けられるか、どうやったらSNS的にイイネ!やLike!が付くか、どうやったらドヤ顔ができるか、皆さんいろいろ考えるでしょう。筆者もいつも悩みます。w
 何をもって「キャッチー」とするかは数字で定量化できないので極めて曖昧な表現ですが、色とりどり幾つものシナリオが並ぶオフ会なので、見る人をおおっ!と注意を惹かせるようなものを意識しました。


実例:筆者も凝り性なので、標準的なシナリオのトレーラーとは一味違うものを創ろうといつもあれこれ考えます。
星月夜作戦』は、作中で同時期に公開されている映画のトレーラーになっています。『13mmの死神 -revival-』は結城あやのこれまでをフラッシュバック風にちょっとギャグっぽく振り返りました。『月下残影』は和風テイストを保つ為に雅な言葉を多めにし講談調にしました。『セレスタイトの杯』は魔道書に記された夜の星杯の謎めいた予言になっています。『アストライアの涙』は行方を絶った旧友からの、未来の主人公たちへ宛てた手紙になっています。
アステールの宝珠』は……短めかつ独自性を出そうとうんうん考えた末に、もう今までの作品と被ってもいいやと思い直し、文章の調子を揃えたファンタジーの予言調にすることにしました。
 また、全てのシナリオについてですが、物語のバックグラウンドやシナリオ中に起こる事の予言を入れるようにしています。アステールもトレーラー前半部分、アクト中に初めて分かる事実も含めてヒントを出しています。


ハンドアウトを短くする

 各キャスト向けのハンドアウト。これも緩やかなラインはあり、オフィシャルシナリオは大抵「180文字」以内に収まっています。きりのいいところで200文字で区切ることもできます。筆者の主に知り合い近辺などの同人シナリオ群でいろいろ計測すると、短くて130文字程度、大体が〜200文字台、長くて300文字でした。『らららオフ』13thに集まったシナリオも計測すると大体この範囲に収まっています。K卓『貴方の言葉が嘘だとしても』なんかが短いほう、長い部門はE卓『モンスターズ・レゾンデートル』でした。
今回はオフ会用ということもあり、200文字程度に収まるよう心がけました。


実例:『アステールの宝珠』のハンドアウトは、PC1が211文字、PC2が196文字、PC3がきっかり200文字、PC4が180文字と抑えています。測っては削って悩みながら創ったので、プレアクトページのHTMLコードに実はコメント行で書いてあります。w
 これは筆者のシナリオ群の中では一番短く、大作めのシナリオではいつもは350文字程度あります。これはアクト直前に初めて朗読することが前提ではなく、ネット上の文字情報として初見やプレプレアクト段階から閲覧し、盛り上がりの助けとする方を重要視しているからです。
 ハンドアウトの長さについては様々ですね。長い文章や丁寧な文章からこそ伝わる重厚さや臨場感というのもあります。一方手軽に遊ぶには短いハンドアウトも重宝するでしょう。では短ければいいかというと……筆者も今まで短めのシナリオのPC3〜4あたりのハンドアウトを見て「なんやありきたりの文章だなあ」と思ったことも正直言うとよくあります。(笑)
 やはりそのシナリオの規模、そして主な狙いによって想定文字数のラインは上下するのではないでしょうか。


PSを先に書く

 サプリ『マーダーインク』から採用されたPS、Purpose in Scenario。現実世界では手紙でPSというとほぼ万国共通でPost Scriptの「追伸」の意味、他にはプレイステーションや警察署や果てはパーフェクトソルジャーの意味があります。
 ハンドアウトは文章や手紙と結びつくのでそこから「追伸」と連想しやすく、ゲーム用語のネーミングとしてはイケてないのですが、このPSを利用したシナリオも多くなりました。ハンドアウトの要約の一文、そのキャストにやってほしいことを端的に表すことに使えます。
 このPSをどこに書くかのネット上の記事を筆者も興味深く見ていたのですが、ハンドアウト本文の先に書く方法、後に書く方法の2通りがあるんですね。一方シナリオコネよりも前に書くようなケースはほとんど見当たりません。
 最初にインパクトと要約を与えて結論を先に書いた方がいいだろう、ということで先に書くやり方を採用しました。


実例:『アステールの宝珠』はプレアクトページに書いている通り、ハンドアウト本文より先にPSを書いています。また、PSを「〜故郷へ返す」「〜秘密を解き明かす」「〜運ぶ」「〜決着をつける」と、なるべく短めの一文になるようにしました。ついでにレコードシート上ではPDFに書き込んで印刷済みのものを用意しています。
 ちなみにシナリオ作成の工程の中でハンドアウトをどこで書くかは、人によって様々です。一夜の思いつきでシナリオをふと思いついた時に最初に書く人もいれば、最後の方で書く人もいます。
 筆者は実は後半に書く派で、綿密に考えてシナリオが形になってきた頃にだいたい書きます。今回はオフ会で提出するということもあり、初期段階、シナリオのストーリーラインが決まった頃にハンドアウトも併せて書きました。


決めの言葉を入れる

 「決め」とはこれも曖昧な言い方ですが、トレーラーやハンドアウトの主に最後の言葉をシャキーンと決めて「オレのシナリオ超カッコEEEE!」と浸ったり、人に「うぉぉこのシナリオ萌えるもとい燃える!」と思わせたり、最近の流行りだと一番いい装備でなくてもドヤ顔をするところです。ディスプレイの向こうでドヤ顔をしてる人を想像するとなんだか面白いですね。一番いいドヤ顔を頼む……!
 これも何をもってかっこいいとするかは定量化できず人の感性によるのですが……シンプルかつぐっと最後を決めるように心がけました。


実例:『アステールの宝珠』のトレーラーの最後は「運命の扉は、あの空の向こうにある。」と朗読しやすくびしっと最後を引き締める言葉にしました。
 この「運命」という言葉、タロットと結びついたトーキョーN◎VAシリーズにはとてもよく出てくるので製作者としてはこの最後の文は「けっこうありきたりだよなあ〜」と実は思っているのですが(笑)、今回とにかくスタンダード路線を心がけようということで採用しています。
 また、ハンドアウトの最後の一文もすべて「神秘の宝珠は、あなたを空へと導く。」と、タイトルロゴにも出てくる物語の最重要アイテムを示して収束するようにしました。
 同様の工夫は他の作品でも行ってきました。世界を変える秘密を宿した星の杯を求める『セレスタイトの杯』の最後の一文は「なんじ、夜の星杯を求むるべし。」。各ハンドアウトの最後の一文も「星々の定める刻は来た。なんじ、○○○として夜の星杯を求むるべし。」と、神秘的な探索の予兆を示しています。
 38万km彼方の軌道宇宙を目指す『アストライアの涙』の最後の一文は「いざ往かん、星々の世界へ。」。これは各ハンドアウトの最後の一文でもあり、星の海への航海たるシナリオ全体を表すキャッチフレーズでもあります。実際この言葉をアクト中の重要シーンで「キリッ」としながら言ってくれたキャストも何人かいたので、効果はあったかなと考えています。


重要ゲストの人数を抑える

 1シナリオの適正なゲスト数は一体何人か。これもシナリオ規模によって変動し、ゲストの役割によって変動します。ファンタジーRPGでダンジョンで待ち構えているモンスターは大抵カウントしなくてよいし、N◎VAでも戦闘だけに出てくるゲスト、暴走AIや知能がないヒルコ、喋らないロシア人の殺し屋などは1人以下のカウントでも構わない場合があります。
 主には、シナリオ中に行動理由があって戦闘以外のシーンにも登場し、個性があって喋るゲストについて数えるとよいでしょう。PC、N◎VAであればプレイヤーサイドのキャスト人数が3人なのか4人なのか5人なのかでも変動します。
 ヒロインの女の子が1人、敵ゲストが2〜3人で計3〜4人の小品めのシナリオもあれば、7〜8人のシナリオもあるでしょう。シナリオのボリュームにも直結し、ゲスト人数は重要であるため設計段階で確定した方がよいです。


実例:筆者は大抵、仕事の依頼人などのチョイ役や、笑いを取るギャグ担当はオフィシャルゲスト、重要ゲストはオリジナルゲストと分業してもらう場合が多いです。オフィシャルゲストをうっかり敵に出して殺したり悪い扱いをすると愛が強すぎるファンが悲しんで(以下略)だからというのもあります。(笑)
 『アステールの宝珠』はプレアクトページに書いてある通り、3Dモデルでイラストが付いているゲストが重要ゲスト、4人います。これは少なめに抑えました。

 手前味噌ですがオリジナルシナリオで例を挙げると『星月夜作戦』がゲストが5人、『アストライアの涙』が6人、『セレスタイトの杯』が計7人(匹含む)出てきます。
 それぞれに別個の個性があり喋るゲストであれば、ボリュームのある大作めのシナリオでも最大は6〜7人程度ではないかな?というのが筆者の感触です。

 以前にプレイヤーで遊んだシナリオで珍しい音楽ものの『F-L.S.』という作品があります。これ、シナリオはアーティスティックで面白いのですが、物語サイドの名前付き登場人物が10名出てくるんですね。ルール上の扱いはエキストラの人物も混じっていますが、やはり10人となると多いなという印象を受けました。


 ゲスト人数や一度に与える情報項目数、固有名詞数など、1シナリオ内の要素数については、プレゼンテーションの入門などによく出てくる「マジカルナンバー」7±2の理論を覚えておくとよいでしょう。人間の頭脳で約20秒間保持される短期記憶は、7±2(5〜9)の情報のまとまりしか保持できない。従ってプレゼンで箇条書きにした情報など、一度に新しく伝える情報のかたまりの数は7±2に抑えるとよい……というものです。ちなみに「マジックナンバー」はソフトウェア工学のプログラミング技術の用語や野球の用語でこれはまた別なので注意。
 このマジカルナンバーの理屈、5〜9の数字をTRPGに当てはめると色々面白いことが見えてきます。

  • TRPGシステムの職業や種族の数
  • TRPGシステムの能力値の数
  • TRPGシステムの魔法などの系統の数
  • TRPGの1セッションに参加するプレイヤー/キャラクター人数
  • TRPGの1シナリオに登場するNPCの数
  • SRS系システムで1キャラクターが持てる加護の数
  • N◎VAの1キャラクターが持てるスタイルの数
  • N◎VAシナリオの想定キャスト数
  • N◎VAシナリオのゲスト数
  • N◎VAシナリオのイベント数
  • N◎VAのリサーチフェイズで一度に与える初期情報の数
  • 設定で組織などのメンバー数「三人組」「四天王」「五虎将軍」「六地蔵」「七賢人」「八将軍」....


 言われてみると何となく関連がありそうな気がしてきます。N◎VAに無理やり当てはめるならさらに抑えて5±2の方が合っている気がしてきましたが、人間が一度に覚えられる要素の数は限りがあるということです。
 かのカーライル円卓騎士団は不明卓も入れて13はあるはずなのでマジカルナンバーを超えていますね。一方、千早冴子課長が「その理由は3つあります」と機捜課面々への説明でポイントを3つに集約しているのは、ジツはマジカルナンバーに則った聡明な行動なのです。さすが冴子警部。ということにしておきましょう。w


ゲストの差別化を分かりやすくする

 これはイベント向け云々に関わらず、シナリオ作成時全てに共通することですね。ひとつのストーリー内に登場するキャラクターには幾つかの要素があり、それぞれが区別しやすい方が覚えやすいです。これについては2008年のエントリですが以下で述べました。これは今週末向けのシナリオではなく何回もプレイするような一式書いたきちんとしたシナリオで、登場人物たちで短編小説が書けるぐらいちゃんと決めた場合の話です。


実例:『アステールの宝珠』の重要ゲスト4人も上の原則におおむね則り、互いに区別しやすいようにデザインしています。
 3Dモデルでイラストや作中のイメージ画像もつけるので、服装や髪の色も全体のバランスを考えました。4人中3人が女性なのは、今回は作成に使ったお絵かきアバターSNSで創りやすい造形で作るという条件があったためです。
 聡明なる読者諸氏にはお分かりの通り、「おんなのこを増やしてモテ卓を目指すのだ」とやんごとなき「ひよこ」から指令があった訳では決して……おや、こんな夜中に誰か来たようでs


ゲストの人名を短くする、言いやすい名前にする

 (ふっかちゅ)次の項目。上に含まれますが、今回は特に、人名も短くて覚えやすく日本人でも発音しやすいものにするよう留意しました。
 ではヒロインの名前なんてもう全員「マリア」にしちゃえばいいじゃないか?というと、筆者はそうは考えていません。せっかく創った物語世界に参加させてもらうのに、プレイヤーサイドは得るばかりで自分からは何もしないというのは虫が良すぎます。幾らかの固有名詞や人名を押さえておくぐらいのことはゲームマスターサイドへの礼儀でしょう。


実例:『アステールの宝珠』の物語の人物名の下の名前は「アステール」「ローザ」「ミミ」「レオ」それから「ヘリオス」などなどと、カタカナ2〜5文字で抑えています。実はこれ、人名事典から選ぶときに徹底的に短いものを選びました。実は今まで作ったシナリオの中で一番短いです。(笑)
 和名を選ぶ理由は特になかったので手でも書きやすいカタカナに統一、ギリシャ語、英語、フランス語で互いに響きの違う名前から選びました。
 また、名前やキャラクターから受けるイメージも「星」「薔薇」「時計」「獅子」と連想しやすいもので統一しました。このあたりから既にヒントもいくつか出しています。


ヒントを多めに出す

 TRPGにおいてゲームマスターからヒントをどれぐらい出すか。これは難しいですね。鉄則は、「プレイヤーはGMが期待するほど賢くない」。かといって、近年用語として定着してきた「ぶっちゃける」で何でもかんでもぶっちゃけるのも、笑いは取れますが異世界の物語に没入している雰囲気がぶち壊しになります。さじ加減が難しいところですね。
 今回はターゲットがオフ会、もしかしてもしかしたら空の宝珠を求める勇気ある人の子らには、TRPG初心者やN◎VA歴が浅い人がいるかもしれません。ということでTRPG歴ウン年の古強者(赤箱版D&Dの1Lvファイターの称号)の筆者も、今回特にヒントは多めを意識しました。


実例:『アステールの宝珠』は今までの他の作品よりヒントを多く出しています。トレーラーも直接的単語でヒントは出していますし、ファンタジー調のタイトルロゴのフォントも、フリー素材を活用した宝珠のマークもヒントです。ゲストイラストの飾り文字にもヒントを入れています。全体がジブリアニメっぽい雰囲気なのもヒントです。
 またプレプレアクトでもBBS上で打ち合わせをしましたが、ここでもヒントは多めに出すようにしました。具体的に言うと「携帯判定は必要ないよ」「このシナリオにリサーチ戦闘は発生しないよ」などなどですね。


情報項目数を抑える

 かつては自販機プレイだと揶揄されたり色々と議論された情報項目形式。今はFEAR系システムでは『ブレイド・オブ・アルカナ』等なかったり重要視されていないシステムもありますが、概ね一般的になってきました。N◎VAのファンサイドのシナリオでもDetonation時代、情報項目がないシナリオというのはほとんど見かけなくなりましたね。
 ランダムイベント制であったりシナリオ内特別ルールがあったりギミックがメインになっていたり、特殊な作りのシナリオでは情報項目の扱いも異なる場合があります。
 それらを除いた、所謂SSS形式に則ったおおむね一般的なシナリオでは幾つぐらいになるのか。これは複数作品を実際に計測するのが近道です。
 同人シナリオなどを多数調べました。本1冊に3〜4作入っているような短めのシナリオで9〜10項目。真ん中で13項目。多めで15項目。同人シナリオなどでは、この10〜15の範囲が一番多いようです。19〜20項目となると、1冊の本に1作だけ入っている気合の入った力作クラスになります。


実例:シナリオの内容に踏み込んでしまいますが言っちゃいましょうか。『アステールの宝珠』は3回使えるムニャムニャで分かる項目を含め、情報項目数は13項目、最初の設計時に標準的な同人誌シナリオと同じラインに揃えました。実は最初は12で後から+1しています。いつもはシナリオを解くには必須でないおまけ項目もお遊びで入れたりするのですが、今回削りました。
 例によってこれは、筆者が近年創ったオリジナルシナリオ群の中では一番少ないです。(笑)
 桜の舞う春が舞台の『月下残影』はおまけも入れると18。失われた理想郷を求めて軌道宇宙に旅立つ『アストライアの涙』で19。星の杯の秘密を求める『セレスタイトの杯』もリメイク後でも19。アクト稼動計16回の最高記録、関東では情報量の多いシナリオとしても有名になってしまった『星月夜作戦』は22あります。
 イベントをターゲットにしていないこれらのボリューム大きめの作品にも狙いはあります。RLに言われるがままの全自動ではなくて、PL陣にも自分の頭で考えて行動してほしいこと。得られる情報からその背後に組みあがった物語を感じてほしいこと。ひとつの映画のような物語の中で、礎となる要素を背景に持った上で説得力のある台詞や行動でキャストに動いてほしいこと。あとはRLサイドのこちらも素人ではないし、情報の多いシナリオでもハンドリングできる自信も実績もあるから、というのもありますね。
 やはり情報項目数をどれぐらいにするかは、そのシナリオのボリューム、そして主な狙いによって増減するのではないでしょうか。これも数だけでも、シナリオ作成前半の設計時に考えておくとよいです。


初期情報を限定し、そこから繋がるようにする

 行動としての情報収集はリサーチフェイズ開始後に限定し、しかも調べられる項目はRLから自動的に指定、他の項目の調査や他の行動は一切取れないとするやり方。
 これについては、「何でもかんでもマスターの言うとおりかよ! そんなの小学生以下でもできるだろ!ヾ(`Д´)ノ」という意見も見られます。その気持ちは分かります。筆者もそう思っているからです。(笑)
 しかし時間内に終わることが必須なオフ会ではスムーズな展開も必要でしょう。ということで今回は従いました。


実例:ということで、『アステールの宝珠』でも最初に調査可能な項目は泣く泣く(?)、各PCごとに決め打ち1つの計4項目のみとしました。その代わり、全ての情報項目は情報項目関連図で設計し、線で他の項目と繋がりあい、初期項目から確実に繋がりあって展開していくように計らいました。
 各PCごとに1つ、に限定しない場合は、誰でも調査できる+αの情報項目をもう幾つか用意しておくと、PLサイドから見て自由に行動している感覚が増します。一般的なシナリオではキャスト4人専用で4つ、+αが2〜3項目とすると、リサーチフェイズ初期に与える項目数は合計6〜7個ぐらいでしょうか。
ここで、前述の「マジカルナンバー」7±2の理屈を思い出してみましょう。この範囲に綺麗に収まっていますね。一度に列挙されて人間が一度に記憶できる要素はこれぐらいだということです。


シーン数を抑える

 用意しているシーンを幾つぐらいにするか。これも、考えているシナリオのボリュームと共に、作成の前半の段階で設計しておくとよいです。
 まずキャスト4人としてオープニングが4シーン。予兆を示すマスターシーンも1つぐらいあるかもしれません。リサーチ展開中にも物語側の動きを見せるマスターシーンが1シーン。クライマックスが展開と戦闘を入れて2シーン。各キャストごとにエンディングがあるとして4シーン。とすると大体12シーン。+リサーチイベント数が全シーンとなります。
 リサーチイベント数をどれくらいにするかも、既存シナリオを調べるとよいでしょう。初心者をターゲットとしたような短いシナリオで3〜5。もう少し増えて6〜8、キャスト同士の出会いシーンなどがなくてもイベント満載な長めの作品で9〜10ぐらいでしょうか。


実例:例によって今までの長編作品に比べると数を抑え、『アステールの宝珠』はリサーチイベント数は7ぐらいとしました。短編でも長編でも、ポイントはシナリオ本文の細部を書き始める前に数と概要だけでも決めておくことです。


シリアスすぎるシーン、悲しいシーンを入れない

 TRPGセッションは時として、映像作品や文字作品と同じぐらいの感動や溢れるパッションを生み出すことがあります。予定外のところでこういうことが起きたりするのが面白いのですが、問題は周囲の状況。せっかくシリアスなシーンをやっているのに隣の卓が吹き出したり奇声が聞こえてきたりしてもう雰囲気が台無し……ということは、1会場複数セッションでは十分にありえます。
 コンピューターゲームの世界ではいわゆる鬱ゲーが好きな人も世の中にはいる訳ですが、TRPGの世界では抑えめにしておいたほうが安全でしょう。


実例:『アステールの宝珠』は能天気なギャグシナリオなのかというと勿論そんなことはないのですが、全員が沈黙して

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となるような場面はなしにして、全体的に笑いと共に進められるように構築していきました。色々ネタを入れたりしてコミカルなシーンも多めにしています。登場するゲストも面白い人を入れるようにしています。(いつもそうだって?w)