Rのつく財団入り口

元はTRPG系のWebサイトの入り口だったブログです。最近のIT本の感想など。

シャドウラン4thリプレイ 『旅する天使たち』

 R&Rから展開中のSR4th、『ストリートの天使たち』の続編。今回はランをきっかけにほとぼりが冷めるまでエンジェルたちがシアトルを離れ、復活したアメリカ先住民たちの国NAN諸国を巡るワイルダネスと魔法の話になっています。

 いやー詰め込まれたネタの濃ゆいこと。のっけから謎めいた魔術結社IOND(イルミナティ・オブ・ザ・ニュー・ドーン)の幹部を演説中にストリートサムライの女の子が遠距離から弓で暗殺……と見せかけて依頼人が本人でさらに裏があるとかもうシャドウラン脳にビンビンきます。
 刊行中のサプリ『ストリート・マジック』に登場する追加ルールや設定、集団、クリーチャー、さらにシャドウランユニバース全体の固有名詞などをふんだんに詰め込んだ、混迷の第六世界らしいリプレイになっています。2nd時代の英文サプリを読み漁った頃に出てきた名詞が幾つも出てきて懐かしくなりました。かのアレスもサイバーマンシーに手を出しているんですねえ。
 恐らく詳しくない方にはさっぱり分からないような名詞も沢山出てくると思いますが、やはりこのへんの言葉の羅列も含めてサイバーパンクらしさというべきでしょう。


 科学と魔法が混在するシャドウランの第六世界は、お馴染みの大都市以外にもネイティブが住んでいたり魔法的生物が闊歩していたり冒険のネタが転がっているのは有名ですが、実際にセッションで扱った話は滅多に聞かないので、そういう意味でもとても珍しく、価値あるリプレイです。
 アメリカのだだっぴろい荒野を突っ走る変態の走り屋とか空を突っ走る魔女とかオークのロックコンサートにシアワセ・アトミックの開発と環境保護団体の衝突とかアツすぎます。
まさか産業廃棄物に汚染されて精霊たちすら汚れてしまったコア地帯にランナーたちが踏み込む話を日本の商業リプレイで見る日が来るとは、きっと偉大なるダンケルザーン様も予想だにしなかったでしょう。そして最終章はタイトルが「Never Deal with "a" Dragon」となんともニヤリとできる話になっています。
 イラストもチーム4人中3人の女性陣の人気狙いで釣ろうとパワーアップしているのがだいぶ見え見えですが(笑)、ランナーチームもカルマを詰んで強くなっていますね。かなり強力な敵や厳しい状況下での行動を迫られていますが、エッジ(アリアンロッドのフェイトみたいなもの)消費によるダイス増加や成功買いで押し切って状況を打破するパターンが全体的に多い印象ですね。ガンスリンガー・アデプトも極めると小火器レベルでここまで強くなれるのだなあ。
 小ネタとしてはミツハマから逃げ出したゴスロリ衣装の女ジレットのホリィが、2巻から突然ボクっ娘にチェンジしています。脚注にも「一人称の多い日本語では重要」と役に立つことが書いてあるのですが肝心の物語の中ではあまり自分を指した台詞がないので印象に残っていないような。w
 あと何となくこの人のイラスト衣装は流行りの某アニメの某ビッチ天使姉妹の妹のほうを意識したんだろうかと深読みしてしまったのですが、きっとテイラード・フェロモンの影響でしょう。w


 内容はかなり濃いものの展開や文章は割とあっさりしており、国産TRPGの商業リプレイに慣れた人だと若干違和感があるかもしれません。特にキャラクターの魅力や掛け合い、葛藤、PLにかなり裁量を与えるスタイルでの傍若無人なプレイを期待して読むような人には違和感があると思います。遊んでいるのは日本人ですが海外RPGは文化が違うし、このリプレイでもGMサイドは厳しめにジャッジしています。それにシャドウランの背景世界は、思い上がったPLを震え上がらせるに十分な脅威がわんさか存在していますからね。
 アメリカ先住民族の話、オリハルコンや魔法関係の小話やブルーローズ話、2070年代にあってもなお軌道エレベータはまだ計画中なのが分かったりと、本筋と関係ないところでも衒学的な小ネタがかなり散りばめられており、参考になります。


 なんと3巻も既に決定、今度は天使たちは北米を離れて東洋の魔都、香港へ行くそうです。
 現実世界のアジアの発展を反映してシャドウランの世界でも3rd、4thではアジア系企業が台頭したり東洋のパワーが高まっています。基本的に悪役の我らが新日本帝国を始めとする環太平洋ラインは、英語版の世界設定集では語られていますが実質未知に近い部分があります。同じく朱鷺田祐介氏作の伝説の『上海退魔行』的なテイストのナニか出てきたりするのかとついwktkしてしまいますが、こちらも楽しみ。
 作中の第六世界は4thの現在2070年代。タイムラインを辿っていけば、世界に魔法が復活する覚醒の時はなんと現実の今年2011年。Year of Awaken に相応しい新展開でした。

シャドウラン 4th Edition リプレイ ビギナーズ・バッドラック (Role&Roll Books)

シャドウラン 4th Edition リプレイ ビギナーズ・バッドラック (Role&Roll Books)

シャドウラン 4th Edition (Role&Roll RPGシリーズ)

シャドウラン 4th Edition (Role&Roll RPGシリーズ)

シャドウラン 4th Edition 上級ルールブック ストリート・マジック (Role&Roll RPGシリーズ)

シャドウラン 4th Edition 上級ルールブック ストリート・マジック (Role&Roll RPGシリーズ)


 なお、既に年末からTRPG系のあちこちで触れられていますが訃報が。現実で遡ること10数年前、グループSNE翻訳版のシャドウラン2nd時代から指揮を執っていたグループSNEの江川晃氏が、昨年11月末に急に亡くなられたとのこと。
 思えばこの方がいなかったら日本では『シャドウラン』と『バトルテック』は広がらなかったでしょう。昨年に新作『エンドブレイカー!』が話題になっただけに余計驚きました。謹んで哀悼の意を表します。