最新デバイスを使ってTRPGの作内世界だけでなくプレイする現実世界でも「未来なう」なカンジに浸ってしまうエントリの続きです。なんとはてブをいくつも頂いてしまいました。(はは〜)
今度はiPadの期待される用途の基本、電子書籍の閲覧に関する話です。
電子書籍のフォーマット
2010年現在、日本でも動きが本格化しつつある電子書籍。フォーマットについては主なものは以下があります。
- お馴染みPDF
- Amazonの電子書籍専用端末Kindle独自の、AZW
- アメリカの電子書籍標準化推進団体IDPFが普及を促進しているオープンな電子書籍ファイルフォーマット、ePub
- シャープが2010年夏に発表した次世代電子書籍フォーマット、XMDF
- 作者: スティーブン・ウィンドウォーカー,日経BP社出版局,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 単行本
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将来的に見込みがあるのはやはりePubです。ホームページを表記しているHTMLに似たようなXHTMLのコード+画像で構成されたファイルを拡張子.epubで圧縮したもので、標準化団体が推し進めているオープンなフォーマット。特定のメーカー、特定の技術、特定のデバイスに依存しません。Apple、Google、SonyなどはこのePubを採用予定しています。
我らが日本からシャープが名乗りを上げた独自フォーマット、XMDFというフォーマット自体は前からあり、シャープのZaurusなどで使われていたそうで、その次世代型のようです。
2010年末〜にこれに対応した電子書籍端末がシャープから発表されるそうですが……これが世界で売れてシャープが有名になってデファクトスタンダードになれれば日本も万々歳ですが、そううまく行くかはまだ分かりません。
独自形式で失敗した例は世の中に色々あります。例えば、Sonyのウォークマンは世界的に有名ですが、独自形式に拘ったためにより簡単にmp3が再生できたiPodに首位争いで負け、携帯音楽プレイヤーの世界ではAppleが勝者となった経緯もあります。(これはまた最近だと話が違って、2010年8月はウォークマンの売り上げが遂にiPodを僅差で抜き返したそうですね。)
他にも探すと中国製の電子書籍フォーマットなどもあるそうです。フォーマット、デバイス共々、何がデファクトスタンダードになるかは、今後の動静を引き続き注視する必要があります。
という訳で現状、誰でも比較的簡単にファイル変換ができ、パソコンでも別デバイスでも閲覧できるフォーマットというとやはりPDF。本エントリではTRPG系でPDF形式のデータを取り上げていきましょう。
iPadでPDFファイルを閲覧してみよう
雑誌やiPad入門書の類を読むとだいたい載っていますが、GoodReader、i文庫HD、CloudReader、Apple純正のiBooksなどが定番アプリとして有名です。
iPadが母艦マシンと繋がった状態でiTunes上の[アプリ]タブをよく見ると、下の方に欄があって、パソコン側のPDFファイルなどをiPadにコピーすることが出来ます。この機能、同一アプリでもiPhoneをiTunesに繋げた時は出てこないので最初に気付きにくいんですね。w
PDFを閲覧できるPDFビューワーは各種あり、例えばi文庫HDだとページ移動時にページめくりのアクションまで再現されて綺麗です。
オフ会の2次会などでシナリオ作者さん本人を含む(笑)何人かに実演しましたが、ネットで公開されており、PDFのダウンロードが自由なもので試してみました。
ZZZシリーズの同人シナリオ集『壁の花 -Bloody Princess-』より。表紙絵を「写真」アプリで見たのが左。右が「i文庫HD」アプリで「カントリー・ロード」プレアクトテキストのPDFを閲覧したところ。どちらもiPad縦置きで丁度収まります。これを見ながらプレアクトも可能ですね。
diceheadさんの2010年夏コミの最新作『Undercover』。左が「写真」アプリで表紙を見たところ。右が、iPadアプリの「GoodReader」でプレアクトテキストのPDFを開いたところ。
小さいですが、見出しの「シナリオ」が青い反転されているのに注目。i文庫HDはPDF内の検索ができませんが、GoodReaderはできます。日本語文字列「シナリオ」で検索した結果なのですが、文字認識が行われているのが確認できます。
GoodReaderはかなりの種類のファイルを開ける万能リーダーアプリで、ディレクトリ付きでファイルを管理できうるファイラーの機能、Webからのダウンロード、DropBoxやGoogle Docsなどへも接続できる、神アプリとして有名な定番アプリです。
Neuro/CD制作委員会さんの『Neuro/CD vo.2』にて、体験版としてPDF公開しているシナリオ4本中の1本目、暴露の光 -Shiny Expose-を、「i文庫HD」でブラウズしたところ。
本の見開き2ページ分がPDF上の1ページになっています。これをiPad横置きで1画面でそのまま見ると……この大きさでは細部まで判別できないのでRLするのは厳しいですね。2本指でピンチアウトして拡大すると、ちょっとの間を置いて文字もイラストも綺麗に拡大されます。
この大きさだと、1ページを左上/左下/右上/右下の4部分に移動しながら閲覧していく動作が必要になりそうです。本の上の1ページをPDFでも1ページにして、iPad縦置き1画面で見ると丁度よいぐらいの大きさかな。
続いてこちらは見ても大丈夫なように小さくしていますが、らららオフ13thA卓を飾った拙作シナリオ『アステールの宝珠』シナリオのPDF版を「i文庫HD」で見ているところ。これはファイルの一番先頭、シナリオに先駆けてバックグラウンドが書いてある部分です。
『アステールの宝珠』のシナリオ本体の実体は、140KB弱のテキストファイルです。僕が自分でRLする時向けに、これをWordでA4縦、横書き2段組、MSP明朝9ptでWordファイルにして印刷しています。このWordファイルを別ツールでそのままPDF化したものです。
iPad縦置きで見ると、拡大しなくてもなんとかふつうに読める大きさです。(もう少しフォントサイズは大きいほうがいいですね。10ptか11ptぐらいかな) 頑張ればこのファイルを閲覧しながらRLもできるでしょう。
このようにシナリオ類は、PDF上の1ページに配置する情報量を多少試行錯誤して使いやすい値を把握していく必要がありそうです。
最近のニュース系でのアプリ比較記事はこちらなどが詳しいです。
iPadでテキストファイルを閲覧してみよう
テキストももちろんできます。メールで送る、GoodReaderなどの個別アプリにiTunes経由で送る、DropboxやGoogle Docsなどのストレージ、Evernoteで送るなど方法は複数あります。
iPhoneでテキストエディタ系アプリで何が一番かは諸説あり、人それぞれで、解説本によっても違うアプリがお勧めされています。(筆者が今まで見た中では、Awesome NoteとRainbow Noteが最強かな……?)
実はiPadは電子書籍系や大きさを活かしたアプリは色々あるんですが、iPad独自のテキストエディタ系というのはあまり見ないんですね。筆者が調べた中では、先ほどPDF閲覧にも用いた定番アプリのGoodReaderで十分でした。
こちらも、見えても大丈夫なように小さくしたなように小さくしていますが、らららオフ13thA卓を飾った拙作シナリオ『アステールの宝珠』シナリオのテキスト版。PC4のオープニング『騒乱の魔狩人』の最初の描写。PC4役のキャストが、残念な美少女と運命の邂逅(ウソ)を果たす直前のダメアヤカシズの顛末が記述してある部分。これを見ながらRLもがんばればできるでしょう。
フォントサイズや色、背景色は設定で変えられます。このスクリーンショットは読みやすいようにフォントサイズを18ptにしてみたものです。10〜14ptなど小さめにすると1行の文字数が多くなり、文章としては読みにくくなります。2段組とか上下分割などの機能を備えたビューアーがあるとありがたいですね。
TRPGシナリオをiPadから見る
小説や雑誌など、上から下、右から左(あるいは逆)に流れていく文章は、もう十分iPad上で閲覧可能です。有名アプリのi文庫HDなどで過去の文豪の作品は幾らでも読めます。
ただTRPGのシナリオについては……PDF閲覧はまだまだ今後の進歩を待つ必要ありかなと感じます。
物によります。例えばGM向けシナリオ情報が元から少なくマスターできるように工夫されたシステムも存在します。(最近だと『シノビガミ』など)
しかし多くのシナリオでは、読む場所があちこちに移動することが多いでしょう。例えばN◎VAのリサーチフェイズ中であれば、大抵のRLはリサーチイベントの記述と、情報項目を交互に見ているはずです。そこでうっかりマーダーインクのトループ軍団とリサーチ戦闘が発生したら、今度は別章のゲストデータもまた参照が始まり……と、視点はあちこちに移動します。
Microsoft Office系アプリにはページを分割して表示する機能がありますが、こうした同一ファイルの複数箇所を同時に表示する、複数ファイルを同時に表示する、などの閲覧アプリ側の進歩も必要でしょう。
筆者も今まで沢山いろんなシナリオをマスターしてきましたが、咄嗟に別紙を見たりアドリブを効かせたり、諸々の作業が発生するTRPGシーンを想定すると、シナリオ本体はやっぱり紙の束の方が応用も効くし速いかな……と思います。
ちなみにPDF内に注釈や線を引いたりすることのできるiPadアプリ、iAnnoate PDF が、画面分割表示や複数ファイル同時開きの機能を既に備えているようです。かなり高機能、\1200のちょっと高いアプリですね。
有名定番アプリなので筆者も持っているのですが、あまり使っていないのでどこを押すと分割してくれるのかよく分かりませんでした。w
そのうち誰かが卓ゲ者専用PDFビューアーなんてのを作ってくれたら楽しそうですね。
シナリオ以外の文書をiPadで見る
シナリオはまだ紙の方が……と述べましたが、じゃあiPadは使えないのかというとそんなこともありません。電子化に向いた文書もあります。上から下に順番に読んでいくのではなく、比較的似たようなフォーマットで内容が並び、必要なときに必要な場所を参照するリファレンス的な文書です。
辞書類についてはiPhone/Android系は電子書籍以前にアプリの形態で、もう優れた製品が多数あります。
TRPGで特技一覧や装備一覧など、必要なときに必要な箇所を参照する辞書的な使い方をする場合にはかなり威力を発揮しそうです。
ルールブックPDF化の夢を実現しようとしている人は筆者の近辺にも何人かいますが、既にやってみた方の記事がこちら。あの田中天さんもiPadを使っています。
- to-haruさんの【Re:+ Note】の素敵な将来を夢見るためにTRPGルールブックをiPadに突っ込んでみた/素敵な将来を夢見るためにiPadに突っ込んだルールブックでセッションしてきた
- 田中天さんの【天日録】の ルール・イン・ザ・パッド
田中天さんの記事に出てくるアプリ iRead は、上で取り上げたiAnnoate PDFの無料版ですね。
TRPGはサプリメント出版が繰り返されると、特技やら装備やらデータ系が複数サプリにあちこち分かれてずらずら並ぶというシーンはよく起こります。海外ゲーだとD&D系でも、大判のサプリ類が大量にありすぎてカートに入れてさえ持ち運びが大変だ……という話はよく聞きます。このへんをPDFにするとかなり楽になりそうです。
上のリンク先の記事から分かるように、ルールブック1冊を1つのPDFにするより、自分で抜き出して加工したPDFを使った方が便利なようですね。
ちなみにパソコン上ではPDFを見るのによく使うAdobe Readerは検索機能が当然ついていますが、iPadアプリだとついていないのもあるので要注意。
筆者は自分で本を裁断して電子書籍化するのは手間が掛かるので金より時間を優先し、業者にPDF化を依頼する方法で現在試しているところです。より具体的に言うと約1ヶ月待ちで順番がやっと回ってきたので先日宅急便で送りました。w
次回は【ダイス】編を取り上げたいと思います。