Rのつく財団入り口

元はTRPG系のWebサイトの入り口だったブログです。最近のIT本の感想など。

回心卿の日記


【以下は、後に真教教会が発見したある首席司祭の日記である。】

 ハレルヤ! 神の国への入り口へようこそ。


 私の名はベネディクト・バッハマン。氷の元よりいでし天にまします我らが主、唯一にして永遠なる我らが主に仕えるもの。未だ修行が足りぬ身ながら教区首席司祭の位を賜り、主の命に応えるべく世界中に真教教会の愛と主の偉大さを説いて回っております。
 我ら真教はこのニューロエイジの中で最も寛容な宗教。私は何も、改宗などという大それた行いはいたしません。私はただ、異教徒の皆さんに説法を通じ、自ら神に立ち返る回心を促すだけ。
 これこそが我が聖務。偉大なる断罪卿ヨーゼフ猊下からは“回心卿”などという過ぎた名を頂きましたが、我が身に余る光栄であります。


 ああ……天にまします主よ、救世母様よ、そのお導きに感謝します。天の啓示により、ようやく私にも幻視が訪れました。
 世界中に流出した魔道書『天の幻視の書』の予言の正しき解は、いまこそ我が元にあります。ああ、“正しき同胞”をよもやこのように解釈するのが正しかったとは。この程度の謎が解けなかったとはこのベネディクト、自らの至らなさに再び回心する次第であります。かくも主は偉大なり、エイメン。
 四人の正しき同胞、正しき星の導き、予言に導かれた神の探索行の行く手にあるものこそ……かの邪悪な異端の聖遺物、この空に満ちる星の光を蓄えたという“セレスタイトの杯”。上古の昔に忌まわしきアヤカシの王たちが鍛えたという伝説の天星石の杯、星杯であります。

 このベネディクト、今こそ確信しました。私と兵藤中尉、可愛いドラッヘ、我らこそが正しき同胞、我らのみがが正当なる星杯探索者であると。夜の旅人の名を騙る残りの異教徒たちはいずれも誤りを犯している。彼らでは決して星杯の元にたどり着くことはできないでしょう。主よ、お導きに感謝します。エイメン。


 偽りの星杯探索者たちのことはもう分かっております。一組には随分と手ひどい目に遭いました。退魔局13課のラヴァーズストリート隊が負けたのは構いません。当然の天罰です。しかし、聖務に勤しむ我らが同胞まで退けるとは……言語道断。
 率いているのは紫のローブを着た赤い髪のドイツ女、なかなかに強力な魔術師。その正体は人の血をすする忌まわしい吸血鬼。そして調べてみれば、紫の女卿と名乗っているこのエルダーヴァンパイアは……災厄前に滅んだ帝国の生き残りというではありませんか。まさに過去より現れた亡霊、墓地の苔と塵の中から現れたる死人。ああ忌まわしきかな。もはや回心の余地すらありません。
 巨大な戦槌で我が同胞を吹き飛ばしてくれたあの毛むくじゃらの巨大な獣は邪悪なワーウルフ……ああ恐ろしい、太古の昔、人と獣が禁断の交わりを犯して生まれた汚らわしい混血の獣の子孫に違いありません。こちらも回心の余地なし。
 そして何より許しがたいのは、このような邪悪なアヤカシに手を貸しているあの盲目の棒術使いであります。かつては神の使徒でありながら、我らと同じ異端を討つ神の剣の本殿の者でありながら、このような所業に及ぶとは……。修行僧マテウス。必ずやこの私が、完膚なきまでに回心させて差し上げましょう。


 そして……もう一組の偽りの星杯探索者とは、イタリア行政圏のサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂で接触しました。
 ああ、神の真善美のまこと美しきかな! フィレンツェ特別文化保護区のこれらの遺産が、災厄の破壊を免れて残ったことはまこと神の僥倖と言うべきほかありません。この至高の美の価値の一千分の一ですら……きっと彼らには理解できぬのでしょう。
 かの邪悪な探索者たちに出会ったのは、私が大聖堂の来訪者ノートに感想をしたため、聖務に勤しむシスターの皆様と話している時でした。


 あのカウガールのような帽子を被った東洋人の女は天鵬院彩羽なる名を持つよう。剣の腕はそれなりに立つようですが、あれで正しき同胞の3人目、“剣の持ち手の座”を自認するつもりか。兵藤中尉に比べれば大したことはないでしょう。退魔局13課を退けたのもどうやらこの女剣士の模様。
 寛容たることこそ神に仕える者の勤め。私は聖職者の務めとしてあくまでやんわりと、真教への入信を勧めて回っておりましたが、あの女は神の道への誘いを自ら拒絶しました。
そして思い返してみれば、あのいたずらに肌を見せびらかした煽情的な衣装。まさに淫婦。まさに売女。まさに妖女。主への道を歩む修行者を惑わす魔物。
 主よ、その慧眼に感謝いたします。あの女は……異教徒です。


 そして淫婦の元にはロシアンブルーの毛並みの大きな猫がいました。あの美しいビリジアン色の瞳、まるで知恵持つ種族のよう。まるで人の言葉を喋りそうでしたが……私は嫌われてしまったのか、あの猫は毛を逆立ててあの淫婦の足元を逃げ惑っておりました。さようなら、可愛い可愛い猫ちゃん。
 ククク……私の目が誤魔化せるとでもお思いですか? 邪悪なるアヤカシの匂いがプンプンします。あの猫、私が去った後に人の言葉を喋り始めたに違いありません。
 調べは付いております。夜の猫の王ビリジアン、夜の生き物である猫たちを守る猫の王。人語を喋る忌まわしいアヤカシ。その泣き声で他の魔の者を従え、配下の黒猫たちはその爪で鋼の武器や鎧すら切裂くといいます。トーキョーN◎VAで悪名高い、あの何とか言う女大公のアヤカシとも裏で通じている模様。決定です……この猫は異教徒です。
 神の創り給うたこの完璧なる世界にアヤカシなど存在しません。このような恐ろしい猫のアヤカシなど……もはや回心の余地すらなし。断罪です。


 あの場にはおりませんでしたが、これらの淫婦、喋る猫から成る星杯探索者のリーダー、“魔術師の座”を自称する者のことも分かっております。
 星幽界に開く“指星堂”なる魔具店を開いているアネッサと言う娘。ロベールというまたしても邪悪な猫を連れております。聞けば母上は聖母殿教導部と縁があったようですが……そんなことは、我らが聖務とは関係ありません。
 ああ、思えば救世母様がおでましになる前、旧世界で主がまだキリストと呼ばれていた頃。悪魔と契約した邪悪な魔女は世にはこびっておりました。欧州であれほど魔女裁判を行ってもその種を根絶やしにすることは叶わず。その邪悪な血脈が連綿と続き、このニューロエイジにもまだ密やかに続いていたとは! このアネッサという娘、柔和な笑顔で人を騙し、白魔術を騙る邪悪な妖術を陰で用いているに違いありません。
 何よりの証拠はこのアネッサの所業。魂のない自動人形の娘を親友と呼び、狡猾な竜をも客として自らの店に招き入れるとは。これが何よりの証拠。もはや異端審問をするまでもありません。
 おめでとう、アネッサお嬢さん。君も……異教徒です。



 氷のうちより出でし、天にまします我らが主よ。偉大なる救世母様よ。我らに加護をお与えください。我らはこれより聖務として、星杯探索を完成させましょう。我らはこれより遠征いたします。かの星杯の秘密の隠し場所、大いなる忘却の魔法により隠された秘密の妖精郷へ。
 聖母に仕える我が同胞は数あれど、聖アンデレ十字のサルタイアーを、まことの聖務を指し示すこの斜め十字を紋章として頂くのは、我ら異端改宗局ただひとつ。どの組織にもこの大いなる遠征の邪魔はさせません。
 ヴラド・コロニーの不埒な異教徒共を一刀で滅ぼす兵藤中尉の百鬼剣と、神敵を討ち滅ぼす神の剣たる可愛いドラッヘの爪と牙、そして私のまことの信仰がここにあります。我らこそが正しき同胞、正しき星杯探索者なのです。星の導きではなく神の導きにより、この大遠征を成就させましょう。
 そして新聖母ミュー様、未だ若い御身の聖下には、分からぬことも多くありましょう。しかし聡明なる聖下ならばいつかきっと、私たちがこれから為さんとしている大遠征が正しいことを分かってくださるはずです。
 主よ、御照覧あれ。偽りの星杯探索者たちを、神敵たる異教徒たちを完全に回心せしめてあげましょう。存在を許されておらぬ忌まわしい化け物たちには断罪を実行しましょう。
 星杯探索が成就した暁には、かの“セレスタイトの杯”の伝説の力をもって、微力ながら主の御世創生のお手伝いを致しましょう。世界中の異教徒を一度に、完璧に、回心させてみせましょう。


 神の国への門は今こそ開かれました。さあ――回心!回心!回心!


【日記はそこで途絶えていた……】

夜警版リメイク『セレスタイトの杯 -夜の旅人たち-』第一夜 - 完全成功!