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元はTRPG系のWebサイトの入り口だったブログです。最近のIT本の感想など。

シャーンの群塔

D&Dノベル シャーンの群塔 上 [ドリーミングダーク第1部] (HJ文庫G キ 1-1-1 ダンジョンズ&ドラゴンズ)

D&Dノベル シャーンの群塔 上 [ドリーミングダーク第1部] (HJ文庫G キ 1-1-1 ダンジョンズ&ドラゴンズ)

 TRPG関係のリプレイや小説などは大抵目を通しているのですが、読了後に上げようと思っていた感想記事を忘れていたので掲載してみます。まずはD&D小説のドリーミング・ダーク3部作の1部目、『シャーンの群塔』(上)(下)から。


D&Dノベル シャーンの群塔 下 [ドリーミング・ダーク第1部] (HJ文庫G)

D&Dノベル シャーンの群塔 下 [ドリーミング・ダーク第1部] (HJ文庫G)


 今をときめく生まれ変わったダンジョンズ&ドラゴンズ、一般公募から選ばれたという背景世界エベロンの生みの親であるキース・ベイカー自身によって描かれた処女小説。日本で言うと、いくつかあるゲームデザイナー自らが書いたTRPG小説的な小説です。
 舞台は、『Lead & Read』誌のリプレイなどにも登場したエベロンの主要冒険ステージ、巨大な塔の街シャーン。様々な勢力や種族、陰謀渦巻くこの立体都市に足を踏み入れるのは、宿屋のお金にも困っている有様のこんな歴戦のパーティ……。

デイン

 元サイアリ軍大尉。先の大戦で祖国を失い、自分の腕を頼りにシャーンの街で冒険を続ける歴戦のファイター。D&Dの若獅子リプレイにあった言い方を真似ると歴戦のHuman Figter Otoko(HFO)です。アメリカの小説でもやっぱり主人公はHFOなんですねー。w
 日本の小説だとここでHFOはたいてい年は10代後半の主人公となるものですが、年はけっこう上に設定されているようです。

レイ

 共に冒険を続ける若い女性の魔法使い。婚約者ありのいいとこのお嬢さんで氏族の出なのですが、この氏族を追放されてしまいます。「デイン、あなたに私の気持ちなんて分かるわけないわ!」 ぶっちゃけ日本的にいうとツンデレっぽいです。ビジュアルで髪が赤いのも怪しい。w
 デインに比べると年も若いようです。やがて2人の絆が愛に……という展開をそこはかとなく期待しているのですが、まだパーティ仲間でしかないようです。2部目の展開に期待か?!

ジョー

 ジョラスコ氏族の口がよく回るハーフリング、ヒーラーにして交渉人。ゲーム的にも戦闘より交渉関係のスキルが高く設定されているのでしょう。作中でもよく喋り口先八丁で危機を脱していきます。
 序盤でデインの大事な先祖伝来の剣を質屋に入れてしまったり、余計なことをすることもしばしば。懐かしの『ドラゴンランス』のタッスルホッフもそうですが、こういう「主人公に余計なちょっかいばかりするよく喋る脇役」というのは、日本の小説だとあまり見ませんが洋モノだと割と見かける気がします。人物造形のひとつのパターンなんでしょうかね。

ピアース

 出ましたエベロンのオリジナル種族、強くて硬いウォーフォージドの兵士。忠実な戦士なのですが戦争の為に生まれた自分は、大戦終結後の混乱の現在、何をより所に生きていくべきなのかというアイデンティティに悩んでいます。その存在そのものの謎についていろいろ前振りもあったので今後に期待。女性型のウォーフォージドというのもいるんですね。


D&D エベロンワールドガイド (ダンジョンズ&ドラゴンズサプリメント)

D&D エベロンワールドガイド (ダンジョンズ&ドラゴンズサプリメント)


 デザイナー自ら執筆とはいえ、先んじてHG文庫でウォーハンマーの『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』シリーズが見事完結したジャック・ヨーヴィルのようなプロの小説家が書いた作品群に比べると、描写が足りなかったり文がこなれていないような感じを受けるところはあります。
 しかしそこはそれ。ここは広大なスケールのエベロン世界の息吹を堪能するところでしょう。巨大な街自体が魔法の力で動いているシャーン、様々な種族や勢力、空を飛ぶ飛空船やクリーチャー、マジックアイテムや呪文の使用シーンなども大挙して登場します。
 そしてその中で進むのは、まさにD&Dのキャンペーンを地で行くような展開の物語。主人公たちもみな胸に秘めているものはありますが単純な正義の味方の英雄ではなく、金に困って宿屋のまずい酒で我慢したり、仕方なく怪しい仕事を受けたり、まさにやることが冒険者なんですね。
 酒場で情報収集したり、チャーム・パーソン(らしき呪文)で相手を騙して情報をGetしたり、ゴブリンの女の子に財布をすられたりスフィンクスに謎掛けをされたり。
 近年のコンビニエントな国産TRPGを遊んでいるとあまりお目にかからないシーンもよく出てきます。信用ならない仕事斡旋人の街の重要NPCのノームの女が出てきて、ここは日本のライトノベルだと絶対美少女になるところだよなぁなんて文化の違いを考えたりできるのも面白い。
 また、よく読むとHFOのリーダーのデインは危険な場所に赴く時などに、何度もウォーフォージドの部下に手でサインを送ったり命令を下したり、隊列を気にしたりしながら行動しているんですね。まさに、ダンジョンマスターが含み笑いをしながらフロアタイルを準備し始めるところに踏み込むメタルフィギュアの主人公パーティの図を連想させます。
 戦闘シーンも幾つもあって、空から襲われたり足場の悪さに苦労したり様々なシチュエーションで主人公たちは戦うのですが、これもフロアタイルの上で様々なオプションやアイテムを駆使して戦う様子がありありと想像できます。
 上下巻の一番最後の場面なんかはまさに国産TRPGならGMシーンならぬDMシーン、キャンペーンの黒幕大物NPCが思わせぶりな伏線台詞を言って次回に続いて終わるにしか見えないのですが、引きを入れてから3部作の2部目に続いていきます。


シャーン:塔の街 (ダンジョンズ&ドラゴンズサプリメント)

シャーン:塔の街 (ダンジョンズ&ドラゴンズサプリメント)


 古強者世代のゲーマーなら誰もが懐かしい、かつてクラシックなファンタジーRPGの代表格だったD&Dも、今や様々な新種族や新クラス、多数の戦術オプションが取れる新世紀のRPGに生まれ変わりました。そして背景世界のエベロンは戦争で飛空艇が空を飛び、街が魔法で動き、遠くの町と通信もできて街には銀行なんかもあるガジェット満載の新世界。
 奇しくも日本でもSW2.0旋風を巻き起こし始めた『ソード・ワールド2.0』の新背景世界ラクシアも、今までのフォーセリアと違い過去に魔導文明の時代があったりする共通点が興味部会。やはりTRPGの背景に使われるファンタジーの定義も、時代と共に進化していくものなのでしょうか。

 また、本作の巻末にはエベロン世界の概説や歴史、神々や氏族一覧や独自モンスターなど世界設定が載っています。D&Dを遊んでいなくてもこのへんは読むだけで楽しいところですね。


D&Dノベル 砕かれた大地 上 [ドリーミング・ダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 上 [ドリーミング・ダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 下 [ドリーミングダーク第2部] (HJ文庫G)

D&Dノベル 砕かれた大地 下 [ドリーミングダーク第2部] (HJ文庫G)


 そんなことをしている間に3部作の2部目、『砕かれた大地』(上)(下)も出たので読んでいるところです。
 舞台は変わり危険なゼンドリック大陸。第一部ではリーダーの指示に忠実に従うロボットだったピアースが対等の立場の友人として発言をするように進化。レイもデインの周囲に出没する謎の女たちが気になるのかいちいち突っかかったりと、なにやら幼なじみヒロイン的マニューバー(笑)を取るようにパーティ内の関係も変わってきています。
 これは2人の愛に脈あり……じゃなかった、3部作のタイトルである Dreaming Darkの意味も明かされていよいよ冒険の旅が佳境に入るところです。