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杯作戦と関連した読書&映画日記 【その5】日本編

セレスタイトの杯 - アマーリア

[読書][映画] 杯作戦と関連した読書&映画日記 【その5】日本編


 こちらの続きです。もやは杯作戦と完全に関係なくなってきました。第二次世界大戦時代を題材にした作品は日本でも幾つかあるので、最後に挙げて終わりにしたいと思います。

〜日本編〜

ローレライ

ローレライ [DVD]

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 かなり前ですがTVで再放送をやっていたので、何となく邦画も上げてみます。
 潜水艦ものというジャンルには傑作が並ぶそうです。上の『眼下の敵』や『Uボート』、『クリムゾン・タイド』、トム・クランシー原作の『レッド・オクトーバーを追え』もソ連艦長役のコネリーが渋かったです。
 さてこちらの舞台は終戦の1945年、ドイツ降伏の後の夏。痛ましい原爆が落とされて遂に日本も降伏する直前の話ですね。
 大戦の海には魔女の伝説があった。次々と連合軍の船を沈めていく海中の魔女、どこからか聞こえてくるローレライの悲しげな歌声。それが、瓦解した第三帝国より秘密裏に大日本帝国に接収された最後の切り札、高性能潜水艦伊五〇七号、通称“ローレライ”と特殊N式潜航艇。
 超高感度の索敵装置ローレライ・システムを搭載した伊五〇七は秘密裏に、海を離れて久しい絹見少佐と少ない乗組員と共に、敗戦前夜の日本を離れる。目指すは南西、アメリカ海軍太平洋艦隊の待ち構える南洋のテニアン島基地。そこには日本に最後の止めを刺す3発目の原爆、東京を目標に定めた原爆を載せたB-29が出撃を待っているのだ。
 戦局がもはや絶望的となった終戦前夜。日本の最後の希望を乗せ、日本の未来のために、日本海最後の切り札、たった一隻の潜水艦が孤独な戦いに挑む!


 ……とあらすじで書くと日本人なら絶対燃えてきそうなローレライ。フィクションなので史実と違うのは当たり前として、濃い方々から見ると考証もかなり突っ込み所が多いそうですし、お涙頂戴なクサすぎる台詞もありますし、いろいろともにょるのですが。
 役所公司の演ずる艦長もかなり熱いですし、日本人なら琴線に触れる場面もかなりあります。最後の戦いに希望者だけ残れと告げる艦長に、艦のあちこちから次々と返事が返ってくるあたりも泣けますね。真面目な戦争ものではなく最初から架空兵器や架空戦記、SFと思って見れば一見の価値はあるでしょう。
 やっぱり一番驚かされたのはアレでした。ええアレです。スタッフとかをよく見ればアニメ界のそうそうたる面子もいるし予想できて然るべきなのですが。
 ぽっくんも一番最初はアニメの実写化的作品ではなく、骨太の潜水艦映画なのかと思って観たのです。世界の海を変えるであろう第三帝国の最後の遺産、ローレライ・システムの正体がまさか(ピーーー)だなんて! コスチュームもまんま(ピー)的だし、今にして思えば謎の軍属技師さんもなんかラピュタムスカに似ているし。最初からアニメ世代直撃を相当狙っているに違いありません。びっくりたまげました。

 どれくらいびっくりかというと。映画と全然関係ないTRPGの話ですが、東西冷戦燃え萌え趣味全開浪漫全開のしなりおにPLの皆様の並外れた想像力からいきなり美○○AIが出てくるのと同じぐらいびっくりたまげますよこれは!w (ノ∀`)


 終戦60年ということで日本でも幾つか戦争を扱った映画は出ていますね。『男たちの大和/YAMATO』や。2007年公開作品だと特攻隊を描いた『俺は、君のためにこそ死ににいく』がありましたがそれほど話題にはならなかったようです。


父親たちの星条旗

父親たちの星条旗 (特別版) [DVD]

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 硫黄島プロジェクトとして2006年に連続公開されたクリント・イーストウッド監督の2作品。名作として数々の章に輝いた作品です。
 『父親たちの星条旗』の方はアメリカでは有名な硫黄島のすりばち山に掲げられた星条旗の写真を巡る真実のエピソードを映画化したもの。
 硫黄島での戦闘が主な分けではなく、それぞれ画面の色合いを変え、従軍時の回想シーン、その後の顛末、戦後になって老人たちが当時を振り返るシーンが交錯しながら物語は続きます。
 実際には2度あった星条旗掲揚、戦意高揚のためにアメリカ国民には嘘をつかざるを得なかった現実、英雄と讃えられ、本当のことを語れずに苦悩する元兵士たち……を、静かな感動を呼ぶ淡々としたタッチで描いています。日本人で名前のある登場人物は出てきませんが、アメリカ軍も日本軍も同じ人間であり、どちらもただ仲間たちの為に戦ったのだ、という真実を公平に描いているのもよいですね。
 偽りの英雄として祭り上げられた3人のうち、一人は平凡な一生を終え、一人は酒に溺れて死に、主役であるジョン・“ドク”・ブラッドリードだけが、最後に硫黄島の真実を子孫たちに明かし、家族に見守られながら最期を遂げる――この終わり方に静かに心を打たれます。


硫黄島からの手紙

硫黄島からの手紙 (特製BOX付 初回限定版) [DVD]

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 我々日本人にとっては大きな意味を持つ硫黄島。同じくイーストウッド監督の本作はアメリカでもアカデミー賞を初め数々の賞に輝き、非常に高い評価を得ました。国内でも日本に対する偏見・誤解がない作品としてかなり評価され、歴史の専門家等からも好印象を得ています。
 舞台は戦局が絶望化しつつある大戦末期。かの山本五十六長官も米海軍情報局の暗号解読によって搭乗機が撃墜、注意しながら硫黄島に降り立つのは渡辺謙演ずる栗林中将。太平洋艦隊はもはやなく、航空機の支援もない状態で課せられたのは、日本本土最終決戦の日を一日でも延ばすべく、二度と本土の土を踏むことなく果てるまでこの島を死守すること。
 部下に無意味な死を禁じ、合理的な思考に基づいて島を要塞化し守りを固める栗林中将率いる大日本帝国軍の元に、やがて圧倒的な数の合衆国艦隊が押し寄せます。苛烈な艦砲射撃、日本軍は全員死んだかと思い上陸を始める歩兵たち。反撃の時まで息を潜め、地下で待ち構えていたのは……。米軍の見込みでは数日で落ちると思われていた所を実に約1ヶ月間持ちこたえた、絶望的な硫黄島防衛戦が始まります……


父親たちの星条旗』とは同じCGやカットがあったり、場面も恐らく似た時点を描いていると思われるところもありますが、登場人物には共通はありません。(父親〜で日本軍に捕まって消えてしまう仲間の一人イギーが、硫黄〜で穴から落ちてきて惨殺されるアメリカ兵なのかと思いましたが違うようです) 主な視点は妻を残し戦場に来た、一般兵である西郷一等兵の目を通して語られています。
 実際の生存者の証言を聞くともっともっと悲惨だったそうですが、映画の中でも凄惨なシーンはあります。擂鉢山に米兵たちが星条旗を打ち立てて記念写真を撮っている同じ頃、地下トンネルの中では西郷一等兵の前で、天皇陛下万歳を叫んで手榴弾を抱き、日本兵たちがあまりに酷たらしい死に方で自決していきます。
 そして、部下に自決を禁じ、最後まで戦い抜こうとする渡辺謙の栗林中将ら日本軍将兵の凛々しいこと! 元オリンピックメダリストの西中佐が敵意むき出しの部下を制し、負傷した敵兵サムを陣地で手当てさせて一同が相手も同じ人間であることを悟る場面は、もう史実ではどうだったのかなんて関係なく熱くなってきます。両目を負傷して部下を先に行かせる西中佐、相手が自決するつもりなのを悟って最敬礼する副官。その副官も部下を逃がすため、弾幕の前に囮となって突撃し果ててしまいます。
 そして激しい攻撃の中を合流した残留兵はあまりに少なく、もはや後がないことを悟った栗林中将は脚の負傷をおして自らも抜刀、いつの日か我らの魂が慰められる日が来るだろうと一同に演説、最後の突撃を試みます。
 主人公の西郷一等兵は書類や手紙を全て焼却せよと命ぜられるのですが本土の家族に宛てた手紙がいたたまれず、土の中へ隠してしまいます。これが終幕、現代の硫黄島に戻って発見されるところで静かに物語は終わります。
 そしてこの作品では我慢できず投降した日本兵が安全を約束されるも、米兵の手で無造作に撃ち殺されてしまうシーンも出てきます。アメリカで作られた映画で、ここまで両軍を公平に扱った作品が出てきたのです。


 なお作中では日本人は日本人が演じており、台詞もすべて日本語です。下に英語の字幕が出るので英語圏の方々はここを見て理解するのですが。
 DVD版でも英語の字幕が出せるので、吹き替えでない日本語音声と英語字幕の映画という非常に珍しい経験をすることができました。全編日本語で日本人が主人公のアメリカ映画というのは、本作が完全に初めてだそうです。
 イーストウッド監督の下で日本語監修をした女性のインタビューをラジオで聞いたことがあるのですが、作中で喋っている日本語は我々から見てもほぼ問題ないです。脇役になると何を言っているのか分からない台詞が下手な人もたまにいます。(主役級もやや早口が多い)
 また、日本人からしても聞き取り難いので邦画やドラマでは使わない言い回しのようなものが時々出てくるので、日本人がスクリーンで日本語を喋っているのに微妙な違和感を感じます。といっても英語圏の観客の皆さんには当然分からないわけですし、面白いですね。
 僕は英語字幕と両方同時に理解できましたが、大日本帝国軍はやはりImperial Army、作中の登場人物の一人に重要な意味を持つ憲兵隊は面白いことに Kempeitai でした。西郷昇陸軍一等兵が従軍前に営んでいたパン屋の話で出てくるアンパンは英語でしたがコッペパンはローマ字で Koppepan でした。
 細かいところまで見ると、作中の一兵卒としての主な視点である西郷一等兵は、若い役だからか「〜ったく」のような現代的な言葉遣いも見られます。あとは回想シーンの赤紙礼状に出てくる愛國婦人会の女の人がえらく言葉遣いがはっきりしていて一人だけ目立ってます。たすきは愛「国」婦人会」としょぼ目のペン字か何かで書いてあるので、漢字が書ける小道具の人がその場にいなかったんでしょうね。


 実は硫黄島は私的にも繋がりがありまして。小学生の頃に死にましたが、僕の母方の祖父は故郷では冠婚葬祭があれば人がたくさん集まり、町議会議員にも立候補したことのある郷里ではちょっとした名士のようなものでした。
 こっちが小さい子供なので直接話を聞いたことはほとんどありませんでしたが、やはり大戦中は従軍していました。満州戦線の凍れる中国の土を歩き、南方戦線へ向かい、最後はこの硫黄島へ行くも、最後の戦いの数週間前に撤退命令が出て友軍を後に残し本土へ帰ったと聞きます。
 硫黄島にあのまま残っていたらほぼ確実に玉砕し、お袋も生まれないので僕もこの世に生まれてこなかったでしょう。もし生きていてこの映画を観たとしたら、たとえ海の向こうで作られた映画だとしても、きっと頷いたと思います。
 『パール・ハーバー』のような国辱級映画もある中で、戦勝国が作った映画でここまで両者の視点で公平に描かれた作品が出たのは、大きな意義があることでしょう。




 かくして特集は終了です。今年も終戦記念日の季節がやってきました。戦争を賛美するつもりも声高に反対するつもりもないですが、この大きな時代の流れを扱った作品に名作が多いのも確かです。そして多くの犠牲の上に完全ではなくとも概ね平和な現在の世界が成り立ち、我々は架空世界のゲームの中で戦いに興じたりできるのは覚えておくべきでしょう。
世界各国の、戦争の痛ましい犠牲者には冥福を。そして信じるものの為に戦った戦士たちには敬礼……