Rのつく財団入り口

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シナリオや人名のネーミングのはなし 【その2】

こちらのコラムの続きです。
 今度はちょっと手前味噌ですが、僕が今まで走らせたことのあるシナリオのタイトルやネーミング回りのうらばなしでもしようと思います。

『Gray World -revised mix-』『Gray World -colored mix-

 様々な意味で有名なかのタトゥーヤ印の“TSS”の中で一番まとも……あーいやいやいや、王道スタンダード路線な『Gray World』を大宇宙オフでRLを頼まれた時にチューンして使ったのが最初でした。『-revised mix-』には特に意味はなかったのですが、思えばシナリオに副題をつけたのはこの時が最初でしたね。
 一番最近のらららオフ6thの時は『-colored mix-』と副題を変えました。出典はと言ったらこれはもうアレですよ。ふと見たらそこにコー○ギアスの解読不能になる前のオープニングの歌のCDが目に入ったからですよ。はっはっは。
 同時に、元のシナリオでも色が意味を持っている(はず)なのと、チューンして加えたある要素との連想からもこの副題を入れています。いやー、原質解析は強かったな〜 (´▽`)y-~~~


フロントライン -ベスティア小隊戦記-

 ガリガリにチューンナップしていわしマジック全開でブイブイとアルカナムを駆けたアラシSSSミニキャンペーン。これは本当に盛り上がったので今でもよく覚えています。
 やはりチューンしたので別名を、キャンペーンなので“XX戦記”系の副題を何かつけようとしていたのですが。これは参加メンバーと相談して決めました。ガイア○ンダムの如く密林に四足で吼えるオルトロス、幽鬼のごとき炎をまとう無銘のヴァローナ、四つ足タチコマ風のたっくん、あとは搭乗機体がなくてロリっこ全身義体むs……いやいやいやケルビム特別捜査官はアイコンが青いハーピィと、獣系の要素が揃ったことから、英語ではビースト(Beast)にあたるスペイン語のベスティア(Bestia)を使いました。
 変にひねらずに日本語で発音する際にも言いやすいですし、アクト中に何度もこの名前は呼びかけ、演出にも利用できたのでよい小隊名、よい副題だったと思います。


 元のシナリオから肉付けして追加した人名は、一応南米なのでカタカナの西洋名、全体的に無国籍のロボアニメ調のキャンペーンだったので特定の国の言葉等にはこだわらずにつけています。
 例えば「ヴィクトル」はあちこちの国の人名で登場しますが、いかにもパワー系で男性的なイメージがあるので使っています。「コレット」は本当は Colette でフランス語の女性名です。
 また遊撃部隊の兵士にはエースのジンジャー以外にもいくつか個性なしで名前だけを用意し、アクト中に自由に使えることにしました。
 チョイ役の「ゾンバルト将軍」はどこかで聞いたなんとなく偉そうな名前だったのでつけたのですが。後でよく思い出したら、これは『アルシャード』の有名NPCの名でしたね。わっはっはっは。


宇宙の華 -ignited-

 大宇宙オフでRLを頼まれてしなりおをどうしようと困ったときに、勇者エム先生からもらって使ったしなりおですね。どんなシナリオでもRLする際にあちこち手を入れるのは常なんですが、ちとあちこち変えたり設定が増えたり全枠への見せ場の再分配やテーマなど、原作とは設計思想が違っているところもあるので、エム先生にも悪いので無印版との区別のためにも副題を入れて別名をつけることにしました。
 イグナイト(ignite)は「点火する」という意味の動詞です。デトネーションの「爆破」とも関連付けられますし、宇宙船のエンジンやウォーカーのバーニアや虚空に咲く華や、宇宙のちからや勇者のちからなどなど作中の様々な構成要素の“点火”と結びつけて連想できます。プレプレアクトのBBSでもよく「レッツ・イグナイテッド!」と枕詞にできたので、副題のネーミングとしてはよかったかなと思っています。
 出典は……もちろんアレですよ。アラシSSSを『フロントライン -ベスティア小隊戦記-』キャンペーンとしてRLした際、アクトのBGM用に種や種死の曲をかなり揃えたのですが。その時の名残でふと見たらT.M.Revolutionの『ignited -イグナイテッド-』のCDがそこにあったのでそのまま使っただけですよ。わはははは。宇宙の華は無印版の方からロボアニメ成分がギュンギュンに詰まっているので、このへんは開き直っています。

 現在まで計4回走らせましたが、機会があったらまた宇宙のちからに点火しようかと思っています。


Only Time

 むかーしRI財団のお客様専用に作ったしなりおですね。ブリテン連合王国に行ったり誰かさんの師匠が出てくる話です。英単語名のシナリオをいくつか作っていたのでその流れでした。Only も Time も間違えようのない簡単な単語ですし、レコードシートにも楽に書けるでしょう。
 タイトルはそのまま、本編のイメージソングでもある歌姫エンヤの曲名から取っています。曲の中の英語の歌詞を日本語に訳すると以下のようになります。

『夜が貴方の心を捕らえているなら 貴方の心が選んだ愛が育っていくのか
誰が知っているの? 時だけが知っているのよ
道がどこに向かっているのか 一日がどこに向かっていくのか
誰が知っているの? 時だけが知っているのよ』

 これはそのまま、シナリオ内の物語の暗示となりました。うまく出典の曲と結びつけることができたと思います。


星月夜作戦

 タイトルですが、「ほしつきよ」などではなく「せいげつや」と読みます。その前は英単語でシナリオ名を作ったので、今度は日本語にしようと考えました。
 シナリオ本編が空や宇宙と関係しているので、夜空を表す言葉の中から美しい言葉である「星月夜」を選び、また漢字5文字の単語はあまりないのでこれに決定しました。英語の副題を添えるならオペレーション:スターリィ・ナイト(Operation: Starry Night)となりますね。
 作中では、キャストたちが見に行く20世紀が舞台の映画『星月夜の祈り』の中に出てくる作戦名ということになっています。フレーバーとして映画の中の“女王”は暗号解読装置ということになっているのですが……これは知る人ぞ知る、第二次世界大戦時のドイツ第三帝国の誇るローター式暗号機エニグマのようなカンジをイメージしています。


「星月夜」をロシア語でズヴィオーズナヤ・ノーチ(звёздная ночь)というのは正しいはずですが、何から調べたかというと……普段から愛用している『ヒット商品を作るネーミング事典』を調べました。
 日本語の様々な名詞と英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ラテン語ギリシャ語、ロシア語、スペイン語などとの対応表を載せたこの本、本来はビジネスの世界で新商品の企画の人などがネーミングを考える際などに使うことを想定している事典ですが、TRPGにおいてもハンドルやシナリオ名や様々な名詞を考えるときに非常に便利です。眺めているだけで「ああ、あのカタカナ名詞はこんな意味だったのか!」と納得することしきり。


 歴史を調べると第二次世界大戦中の1943年、スターリングラード攻防戦に勝ったソ連赤軍のさらなるドイツ第三帝国への攻勢として『星作戦』という作戦が実際にあったそうです。
 では、『星月夜作戦』は現実にあってもおかしくないリアリティのあるネーミングなのか? というと、そうでもないでしょう。長く続いた冬の冷たい戦い、世界最高の秘密警察であった本物のKGBのような情報機関の絡んだ作戦名としては、いささか感傷的に過ぎるというものでありましょう。
 ではどうしてこの名前にしたかって? もちろん、そこに浪漫があるからですよ。 (*^ー゚)b ニヤリッ


 人名は今回は背景に合わせ主に英語名から取り、二つ名などにはアクト内で分かる意味を入れたり伏線を隠しています。日本語で特に言いづらくないもの、なんとなくイメージがあるものを選びました。
「ミルトン」は『失楽園』の作者のジョン・ミルトンから取っていますがなんとなく不吉で壮大ですし、「インディア」は作中で分かりますが、軍事や暗号通信で使われるフォネティック・コードから取っています。「レーネ」は実はドイツ系の名前なのですが、レーネ・ジーンと一息で言いやすいのでこれにしました。
「ニール」もごく普通の英語名。「アンジェリン」略して「アンジェ」も言いやすいし、なんとなく可愛い名前なのでカブト役の依頼人の若い女性の名前に使っています。
 アンジェリン (Angelin) の語源は天使のエンジェル (Angel) で、意味があるのは作中でも分かりますが、同じ語源の名前でメジャーなところというと「アンジェリカ」もあります。
 なぜアンジェリカにしなかったかというと……シナリオ作成当時、身近で聞いたシナリオのヒロインの名前がアンジェリカだったのでやめたような気がします。(確か、chihaya先生の細胞レベルなしなりをだったような気がする)
 また、あちらはイタリア語ですが漫画の『ガンスリンガー・ガール』にもアンジェリカが出てきたのでやめたのでした。w
 そして、「女王」「宮殿」「枢機卿」など、イメージが連想して繋がる単語を散りばめてあります。


セレスタイトの杯FLASHトレーラー

 日本語で書きやすく言いやすくスタンダードに、「〜の〜」にしようとは最初から考えていたのですが。シナリオの内容同様、タイトルもかなり検討しました。
 萌えイラストのついた可愛いおんにゃのこを助けたり千早牙門のような強そうな敵を倒すという分かりやすい目的ではなく、形にならないものの探索というのは、キャストと中の人のモチベーションを確保するために強いイメージ付けが必要になります。
 謎めいた冬の“女王”と同程度のインパクトを。強力な魔術品に相応しい伝説を……と考えに考えた末、西洋史に名高い聖杯伝説のイメージの力を借りることにしました。昼の世界で騎士たちが求めた聖杯があるならば、対となる夜の世界で妖精騎士とアヤカシの英雄たちが求めた夜の聖杯があってもおかしくないでしょう。


 ありきたりなので最終的には別名のひとつにすることにした、『夜の聖杯』『闇の聖杯』も当初はタイトルとして検討しました。面白いことに「夜の聖杯」で検索するとFateのページが大量に出てくるんですね。Fate初心者のぽっくんは、思わずメッセンジャーでそこにいたホグ山さんに「ホロウアトラクシアの方に“夜の聖杯”ってなにかアイテム名で出てくるの?」と聞いてしまいましたよ。わっはっは。(ノ∀`)
 あれは「夜の聖杯戦争」というフレーズがGoogleの自動ボットに収集されているためのようですね。


 そして、ファンタジー小説やファンタジーRPGには、『黒曜石の中の不死鳥』といった具合に宝石類と絡めたアイテム名がよく出てきます。これを使って「〜の杯」にすることにしました。これはこれでありきたりなので、既存作品やメジャーな宝石と被りを避ける必要があります。
 宝石名も考えに考えました。それこそ「黒真珠の杯」「月長石の杯」「黒曜石の杯」から「銀星石の杯」「青金石の杯」まで……。なんか新しい薔薇乙女の名前でも考えてるみたいになってきましたよ!
 いろいろ探してメジャーすぎるものを避け、最終的に目をつけたのが天を示す天青石、セレスタイト(celestite)。
 ラテン語のコエレスティス (coelestis, caelestisも)を語源とするこの言葉は英語ではセレスタイトのほかにセレスティン(celestine)やセレスティアル(celestial)となります。N◎VAのアウトフィッツの“セレスチャル”も同じ言葉ですね。実はセレスタイトはダイヤなどに比べると硬度が低いそうで宝石ではなく鉱物の範疇なのですが、そこは魔法の力で何とでもできるので考えないことにしています。
 空の向こうのような柔らかな青、神聖なる天を表す石、聖なる愛を象徴する天使の石ならば、星々の金属で造られたというこの杯にも、シナリオのテーマにも相応しい浪漫のある名でありましょう。
 また、「せれすたいと」「てんせいせき」は日本語でふつうに発音しても、キャストやゲストの台詞で言っても、特に発音しづらいところはありません。シナリオ名の略称も「セレスタイト」にできます。
 かくして決定。伝説の夜の聖杯とシナリオのネーミングには、“セレスタイトの杯”をまことの名として採用することになりました。
 実際のシナリオ運用では、これで正解でした。セレスタイトの和名は「天青石」ですが、同音で「天聖石」「天星石」と書いてもこのシナリオにおいては設定上もまったくふさわしい名前なんですね。連休連戦で西方の皇子が「聖杯」を「星杯」と書いていたので、これも含めてセレスタイトの杯の別名のひとつと途中から設定に追加しています。かくして、杯は、星の光降り注ぐ王国にて探索者たちを待つこととなったのです。


 ちなみに英語名は。「杯」を意味する言葉はいくつかありますが、カップ(cup)はありきたり、グレイル(grail)は聖杯のホーリーグレイルにのみ使うこと、Sangraalやgraalも同様であることからいろいろ考え……宗教的な儀式に使う杯の意味合いの濃い、チャリス(Chalice)を使うことにしました。(聖杯も Holy Grail の他に Holy Chalice と記すこともあるそうですね。)
 タイトルロゴでも飾り文字で使っている "Chalice of Celestite" です。CとCで頭で韻を踏み、デザイン的にも綺麗なのでよい名前にできたと満足しています。
 ちなみにこれを略すと CoC や CofC になりますが、TRPGの世界で CoC といえばかの名作『クトゥルフの呼び声』(Call of Cthulhu)の略を指すので、この略称は使えません。w


 人名の方は、今回は背景と大きく関わるドイツ語、イタリア語をメインに、実際にあってもおかしくない名前を人名事典から選んでいます。僕の知っている他の方のキャスト、知っているシナリオの登場人物、オフィシャル人名、他のTRPGの有名人名、有名な世の中の作品などとなるべく被らないように、あまりメジャーでない名前を選ぶべく苦心しました。(こういう同名ネタを探す時、検索エンジンは非常に有用ですね。まったく便利な時代になったものです。)
 その中で過度に発音しづらいものを避け、日本人から見て響きが綺麗でよさそうなものを探しました。


「ウホッ、ドイツ語のイイ名前発見!(;゚∀゚)=3」
→「ダメだぁ〜ブレカナの有名NPCに出てくる〜 (;´Д`)」
「ウホッ、ドイツ語のカコイイ名前発見!(;゚∀゚)=3」
→「ダメだぁ〜『銀英伝』のメジャーな提督名に出てくる〜 (;´Д`)」
「ウホッ、イタリア語のかわいい名前発見!(*´∀`)ノ」
→「ダメだぁ〜『ガンスリンガー・ガール』に出てくる〜 (;´Д`)」

とゆー流れを何回か繰り返したりしています。w


 名前の幾つかには今回も由来を入れています。「ゲッツ」はドイツ人名の「ゴットフリート(Gottfried)」の愛称で短くて言いやすいことから選び、「マテウス」は聖人の名前で宗教を背景としたキャラクターに似合いそうなところから選びました。
「アウグスタ」は男性名だと「アウグストゥス」で偉大、壮麗の意味があり、ローマ皇帝の名前です。「クレメンテ」は語源のラテン語では慈悲と優しさを意味します。
「ダンテ」はとある街出身の同名人物から拝借し、「アマーリア・ガブリエリ」の姓のガブリエリは、大天使ガブリエルから貰っていますが、星々が定めたアクト中でなければ詳細は語れませぬのでやんす。
「リーゼロッテ・リリエンタール」は L と L で頭で韻を踏み、メジャーでなく比較的珍しい、響きがかっこいい名前なので選んだのですが。Googleのイメージ検索で探すと、美少女キャラの別のリーゼロッテたんが世の中にはいたりして面白いですね。
 ちなみに「アマーリア」でぐぐっと探すと、松下電器製のエレガントなシャンデリアや『アマーリア姫とこうもり城』という童話が出てきました。w


 あ行か行さ行など、名前の最初の1文字が始まる子音もなるべくばらけ、互いに語感が似て間違いやすい名前を入れないように注意したのですが。
 実際のアクトでは。例えプレアクトテキストを完全に準備していても、人間は間違うものです。「アマーリア」→「アマーリエ」 「クレメンテ」→「クレメント」 「アウグスタ」→「アウグステ」などの細部の言い間違いはありました。この程度はセッションではよく起こるので許容範囲内でしょう。
(僕もPLで臨むとき、他のキャストの名前と重要ゲストの名前は事前に頭に入れてできれば暗記するようにしています。)

 それよりもさらに致命的な、複数のゲストの名前と人物像を互いに間違えて混乱したまま進む現象は起こっていません。
 本作は故あって登場ゲストの個性分けにはかなり留意しており、実際の星杯探索行でも「ゲストがみんな個性的だった」「かっこよかった」「可愛かった」の声はたくさん頂きました。星々の定める刻に始まる冒険の旅の準備としては、十分だったといえましょう。



 というわけでおまけのコラムは終了です。それではよい冒険を! ヾ(´ー`)ノ