Rのつく財団入り口

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ジュディ・ラニアーの回想記:『NNN』

 この記事は、キャラクター視点の日記の形を取った、セッションのプレイ記録です。未プレイでも見て大丈夫です。


西暦2XXX年5月2日

 皆さん、こんにちは。私はジュディ。ジュディ・ラニアー。ブリテン連合王国BBCに勤めている新人ジャーナリストです。
 まだトーキーと呼んでは駄目よ。この物語の舞台は作中では2123年となっていて、皆さんが生きているのであろうDetonation時代から約15年前。まだ電脳空間が今の形になる前、トーキーやニューロ、フェイトやクグツという言葉がなかった時代の話。

 私はマリオネット社の記者交換プログラムに応じて、トーキョーN◎VAに来ています。馴染みがない? N◎VAスポやCNN、ヘルメスが有名になるのはもっと後の時代よ。それに大事なのは、社名ではなくて個人個人だわ。

 当時N◎VAでは、電脳工学の世界的権威である藍崎聡博士の論文『マン・マシン・インターフェイスの生体デバイスとの適応性評価』が脚光を浴び、あちこちの巨大企業が密かに研究を進めていました。私たちは、この世界の一大革命を巡る陰謀に、巻き込まれてしまったのです。


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 天野純(あまの・じゅん)くんは前から取材がきっかけで知っていた17歳の男の子。赤い瞳に白い肌のアルビノではかなげな子よ。可哀想に小さい頃事故に遭ってから、ずっと両足が不自由で車椅子なの。何らかの障害を持つ人間は他の感覚が鋭くなると言われているけど、彼もそう。小さい頃からずっとウェブ上で活動していて、ハッカー能力は天才的なの。
 使っているタップはM-7、きっとあなたたちの時代では骨董品になっているでしょうね。真に一握りの優秀なカウボーイだけが為せた、AI創造に近いこともやってのけたわ。
 それに純くんはちょっと気弱で、脆くて壊れそうな子だけど、美男子なのよね。あれで五体満足できちんと学校に行って青春を謳歌することができていたら、きっとクラスの女の子たちが黙っていないわ。

 フェイトさんは――フェイト with Folklore Detective が正しい呼称だそうだけど――人名でフェイトって確かに言いにくいわよね。フェイトが誕生する以前のプライベート・アイ、つまり私立探偵。そしてもう一人、弱きものを守り闇に葬られた真実を暴く都市伝説のアヤカシが、トレンチコートの形をとってフェイトさんに憑依してるそうです。ややこしいわね。この方は早川綾香という女の子から、お父さんを探すように頼まれて……女の子本人も行方不明になってしまったところだった。違う国、違う都市でも、やっぱり邪悪の影は同じね。

 それから“指殺凶手”こと紅衣雪秀さんという人は――この人、顔と名前は取材で前から知ってたけど、胡散臭い人よねー。痩せた眼鏡マンで、G.C.I.社だって名乗ってたけど、絶対あれは非合法部門とかそういう怪しいところの人だわ。一度電話で協力を申し出てきたから、誘導尋問してこちらの知りたいところを聞いてから切ってやったわよ。
 Rのつく組織の記録を調べたのだけど、「北斗神拳 爆+15」というネタがプレイレポに書いてあったわ。なるほど、きっと紅衣さんはここの人とデータが同じ親戚か何かね。


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 こうして私たち4人は、世界最初のワイヤ&ワイヤ、世界最初のイントロンを巡る冒険の渦に巻き込まれるのでした。
 赤道直下という地理的条件もあって、あの頃からトーキョーN◎VAには後の繁栄の兆しはあったわね。でも、摩天楼の影の闇の深さも同じ。私が取材したいくつもの失踪事件には関連があって、今日のこの事件も同じだったの。高速道路の架橋下での事故……でも被害者が全員頭を損傷して身元が分からないなんて、できすぎてるわよね。あのエドガー・エイムズという男、業界で“SILENT”と呼ばれている男もやっぱり絡んでいたの。

 そしてアーコロジーの光が明滅する下で、天野純くんが倒れていたのを見つけた時は、本当にびっくりしたわ。あの子、ただでさえ儚げで脆そうに、車椅子もないまま血で汚れた実験衣ひとつで倒れていたのだもの。
 あとで聞いたら、実験施設から必死で這って逃げてきたのだって。あの千早系列の研究所でも生体デバイスの人体実験をしていた。純くんは助かったけど、断線した時に40人中の1/3は血を流してフラットラインしていたそうよ。やっぱりこの街でも、巨大企業の闇は深いわね。

 急いでタクシーを拾って、純くんの家に駆け込んで手当てをして人心地ついた頃、またあのエドガーという男がやってきたの。きっとタクシーから足がついたのね。
 ちょうどホロTVで白黒の無声映画――あれは偉大なる吸血鬼が初めて銀幕に登場した『ノスフェラトゥ』ね――をやっていたのだけど、あの男は言うのよ。声の出るうるさいトーキー映画みたいなやつは真っ先に消えていくから、リアルでは無声映画でいろって。
 私は言ってやったわ。銀幕の世界でも映画には音がつき、色がついていった。世界はいつも変わっていって、真実の光が必ず世界を照らすんだって。また、あの第3研究所で会うのだけど、その時はあの男は引き下がったわ。


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 その後、藍崎博士は残念なことに脳死しているのが判明したのだけど、天野純くんは試作品のヘッドセットをつけて戦いに挑みました。彼は言っていたわ。「これが僕の翼だ、僕は新しい世界を感じたいんだ」って。
 あの子のように、体が不自由で、ウェブの中でだけ本当に自由になれる人にとっては、自身のアイデンティティに関わることなのでしょう。そして私たちは、第3研究所で最後の戦いに挑むのでした。


 後の世界のスラングで修羅というらしいけど、この戦いはかなり修羅だったわ。この時代のN◎VAルールではセットアップフェイズはまだないけど、セットアップからばんばん戦いが始まっていました。純くんが連れているAIトループがトーキーで達成値操作系、シャッターチャンスを持っていたのが幸いしたわ。連続する<■ブービートラップ>勝負やザ・フールからさらに<■ブービートラップ>、今はもう聞かないのでしょう“ツェノンの逆理”という言葉が飛び出してきたり。
 それから、中の人たちはこの日は変則的なテーブル構成にしていて、マイナス魔王の人が真ん中に座っていたの。RLサイドのプロット札を椅子の上に並べていたから私たちの中の人の席からは見えなくて、なかなかエキサイティングだったわ。
 私は……血なまぐさい争いは嫌だし、データを借りた方からして完全支援系だから、リアクションしたり純くんを援護したりしてたわね。私は天国にいるから、ブランチを<ミストレス:クイーン>から<ミストレス:ゴッデス>に変えたのだけど、思い切ってあそこで敵のブランチ打消しに使ってしまえばよかったわね。


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 最後は、概ね平和に終わりました。紅衣さんはナンバーズとかいう何かの組織に誘われ、フェイトさんはようやく依頼人の父子の消息を確かめることができました。
 純くんは……最後に《電脳神》を使って、遂に電脳世界へ飛び込みました。「博士、あなたの研究は無駄ではなかった。これからはニューロの時代が来るんだ」と言って。
 これが、初めて、人間の脳とコンピュータが直接繋がった日。2進数の光の海に革命が起こった日。私も《ファイト!》を使って、イントロン中の彼と通信しました。純くんが初めてイントロンした人物のなら、私は初めてマンデインから通信した人物ね。
 歴史に残る日でした。彼の脳内の思考が変換され、電脳空間上で仮想的に存在を得た声が、ちゃんと現実世界にいる私のところに伝わってきたんです。光の格子の煌きと、情報の粒子の風が、ちゃんと私のところまで伝わってきました。
 あの子ならその後、ハッカーが崇める十二聖人と同じように、カウボーイたちに伝わる伝説になったはずよ。Guruの一人。グールー。語源はヒンズー教だけど、導師級を指す言葉として災厄前から使われてる呼び方だわ。


 私はこの革命の日を、記事にしました。画像情報の背景に使ったのは……災厄前の無声映画の『ノスフェラトゥ』と、そして同じく災厄前のコッポラ監督の『ドラキュラ』。粒子の粗い無言の白黒映像から……銀幕の中は美しい色彩と音の響きの中へ。愛を叫ぶオールドマンと、初々しいウィノナ・ライダーキアヌ・リーブス
 銀幕の中が変わったように、世界は常に変わり、進んでゆきます。多くの困難を乗り越え、時には犠牲を払い、人類世界は進んできました。電脳空間と人の意識が繋がったこの日から、また光の世界も変わってゆくでしょう。その中にもきっと幾つもの障害があるでしょう。でも、きっと、人々は犠牲を払いながらも、前に進んでいくと私は信じています。この革命の日を、私たちトーキーが世界に伝えたのだから。


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 この時の記録は、今でもライブラリに残っています。あなたが生きているDetonationの時代でも見られるはずよ。街頭のスクリーンに流れたら、どこかの誰かが、見てくれるといいわね。
 あれから約15年、今の世の中はどうなっているのでしょう。さらに電脳空間が進化して、AIが自然発生するようになった時代。

 叶うならば見たいけれど――不可能な話ね。今回は大いなる力によって、生者の世界と繋がることができたけど、私はもうこの世界にはいないんです。
 あの事件の後ブリテンに帰ってから、私は企業間抗争に巻き込まれて事故で死んでしまうの。未来の花開く姿を、見ることはできなかったんです。
 でも、少しだけ、知っている人たちのその後を知ることができたから、よしとしましょう。


 私の魂が肉体から離れた時、あなたは本当に悲しそうな顔をしていたわ。思えばあなたがロンドンを離れたのも、世界の夜をさ迷ったのも、孤高の死神の使いを名乗るようになったのも、私の死がきっかけだったのよね……。
 あなたが流浪の果てに常夏の街にたどり着いたのが、このワイヤ&ワイヤが一般化するようになった1stの時代。今の時代の人から見たら、これも昔の話ね。

 不思議だわ。あなたが災厄の都に渡ってから知り合って、後に結婚することになった女性、やっぱりトーキーで、なんとなく私に似た感じだったのね。
 きっとあなたのことだから、奥さんに昔の話なんて少しもしてないんでしょう。私の写真を今でも家の奥に大事に取ってあっても、家族にそのことは話していないんでしょう。
 でも、女は勘で分かるものよ。きっと奥さんはみんな分かっていて、その上であなたを優しく迎えてくれたのよ。生まれた女の子も可愛い子ね。あなたと同じ青い目をしてるわ。
 あなたが今でも私のことを覚えていてくれるのは嬉しい。でも、私の影があなたの心に闇を作る必要はないわ。闇を彷徨っていたあなたの心が、この街でその人に救われたのなら、それでいいの。
 さようなら、アレックス。あなたはあなたの人生を生きて。


――ジュディ・ラニアー



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帝都星杯戦争 その1 『Neuron Network Navigator

  • シナリオ&RL:なっとろん魔王NATさん
  • PC1:“Guruの一人”天野 純 PL:あんじーわーるど闇司さん
  • PC2:フェイト PL:az3elさん
  • PC3:“指殺凶手”紅衣 雪秀 PL:YAMAGEさん
  • PC4:ジュディ・ラニアー 【データ流用